15話「続いてしまった灯り」
15話「続いてしまった灯り」
数日後。
地域支援センターの一室。
あの“仮のスペース”は、まだそこにあった。
片づけられていない、というより——
残されていた。
ランタンも、布も、椅子の配置も、
ほんの少し整えられている。
宙が小さく言う。
「風がね、“これ、続いてるよ〜”って」
雫
「……ほんとだ」
透が耳を澄ます。
「前より音がやわらかいです。
人の動きが落ち着いていますね」
真昼(手話)
「変わった」
職員が近づいてくる。
少し照れたように言う。
「……実は、正式な形じゃないんですけど」
「“なんとなく残しておこう”って話になって」
ジュンが聞く。
「……使われてますか?」
職員は頷く。
「はい。毎日じゃないですけど」
「誰かが、ふらっと来て、少し座って、帰るんです」
その言葉に、空気が静かにあたたまる。
そのとき——
あの女性が、また現れる。
今日は、迷わず中に入ってきた。
椅子に座る。
深呼吸をひとつ。
「……今日は、いけそう」
文子さんが、そっとお茶を置く。
「どうぞ〜」
女性は小さく笑う。
「ありがとうございます」
宙が嬉しそうに言う。
「風がね、“戻ってきた〜!”って言ってる!」
雫は、少し離れた場所から見ている。
「……いいね」
透が静かに続ける。
「場所が“記憶”になり始めていますね」
ジュンは、その光景を見ながら記録する。
——場所は、続くことで“意味”を持つ
——人は、戻れる場所に安心する
絵凛がランタンを揺らす。
「jun さん、これ……もう“実験”じゃないね」
ジュンは頷く。
「うん。“始まってる”」




