13話「小さな灯りの実験」
13話「小さな灯りの実験」
数週間後。
地域支援センターの一室。
蛍光灯の白い光。
整然と並んだ机と椅子。
少しだけ固い空気。
その一角に、
“仮のスペース”が作られていた。
小さなランタン。
柔らかい布。
観葉植物。
そして、静かな音。
——灯台荘を参考にした、“小さな灯りの場所”。
ジュンたちも、その場に来ていた。
宙が小声で言う。
「風がね、“ここちょっと緊張してる〜”って言ってるよ」
雫
「……うん、ちょっと硬いね」
透が耳を澄ます。
「音が反響しています。少し落ち着かないかもしれません」
真昼(手話)
「光、強い」
みかが少し光を調整する。
文子さん
「お茶、持ってきたわよ〜」
支援センターの職員が言う。
「まずは試験的に、ここで“安心できる場所”を作れないかと……」
絵凛が静かに周りを見る。
「……うん、いいと思う」
「でもね」
少しだけ間を置く。
「“形”だけじゃ、うまくいかないかもしれない」
職員が少し驚く。
「……と、言いますと?」
ジュンが言葉を継ぐ。
「灯台荘は、“整っている場所”じゃなくて」
「“整え続けている場所”なんです」
その言葉に、空気が少し変わる。
そのとき、
一人の利用者が入ってくる。
若い女性。
少し疲れた表情。
「……ここ、入っていいですか」
職員
「どうぞ」
彼女は椅子に座るけれど、
すぐに落ち着かない様子を見せる。
足が小さく揺れる。
視線が定まらない。
宙がそっと言う。
「風がね、“まだ居場所じゃない”って言ってる」
雫が静かに近づく。
「……ここ、無理しなくていいよ」
女性は少し驚く。
「……え?」
透がやさしく続ける。
「ここは、“ちゃんとしなくていい場所”にしようとしているんです」
真昼(手話)
「大丈夫」
みかの光が少し落ちる。
文子さんがお茶を置く。
「飲めるときでいいからねぇ」
女性はカップを見つめて、
少しだけ肩の力を抜く。
「……こういうの、初めてです」
ジュンは静かに記録している。
——場所は、すぐには“場所”にならない
——でも、人がいることで変わり始める
絵凛が小さく頷く。
「……うん、ここからだね」




