表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と少女と原子炉と宙と  作者: ぽんた7
第三部 決戦
19/32

第三節 配管を守れ

 戦闘開始から約4時間経った。しかし、キャストの数は減らない。あまりに多すぎる。最初の見積もり1,000体なんてもうとっくに倒している。これって代行者がキャストを生成し続けているという事なんだろうか。もし無限に作れるのなら私たちに勝機はない。そうではない事に賭けるしかない。


 ラオフーとライムの力は圧倒的ではあったが、それでも疲労は蓄積する。次第に攻撃の力と頻度が落ちてきた。それは撃ち漏らしの増加に繋がり、イエネコ部隊の負担も増加しはじめた。


 詩織さんだけは全く疲れていないようだ。水を射出するのは効率が良いらしい。ただ射程距離が短いのがバレ始めてるようで、キャストは彼女を迂回するようになっていた。詩織さんの更に東は灯台のある山なので、もっぱらキャストは西に回り込もうとしている。これはこれで侵入経路が減る事になるので都合はいい。


 そしてついに、外壁を突破して敷地に入り込むキャストが出始めた。


 敷地内に入り込んだキャストもイエネコ部隊によって排除されているが、次第に数が増えてきた。


 私は因子経由で詩織さんに話しかける。


「詩織さん、敷地の防御が手薄になってきました。そこにはもうキャスト来ないみたいなので敷地に戻ってください」


「りょうかいー」


 返ってきた詩織さんの気が抜けるような念話に、少しだけ緊張が緩む。もしかしたらこの人って大物なんじゃないかな。


---


 キャストは迷う事なく建屋の出入り口に向かう。それぞれは大して賢いとは思えないキャストだが、代行者が指示しているのか、放射線を感知しているのか正しい方向に進んでいる。やっかいだ。


 イエネコ部隊が撃退していたが、やがて一体のタービン建屋内への侵入を許してしまった。淡水貯水槽に陣取っていた詩織さんが後を追う。

 状況を構内電話で源三さんと共有する。


「一体、アタッカーがタービン建屋に侵入。詩織さんが後を追っています」


「たのむからタービンの配管の水だけは使ってくれるなよ、って伝えておいてくれ。あの嬢ちゃんちょっと心配だ」


 しかし詩織さんは消火用貯水槽の水を使って危なげなくそいつをしとめた。配管や壁面には傷を与えていない、精緻な射撃。


「やれば出来るじゃねえか」


 源三さん、そんなに心配だったんだ...オリエンテーションでどんなやり取りがあったのか気になる。


そんな時、また念話が入る。


「二体目、突破されました!」


 今度は原子炉建屋に二体目のキャスト・ディフェンダー。タービン側にいる詩織さんは間に合わない。建屋内のイエネコ小隊が迎撃に向かうが、キャストと小隊の間に1次冷却系の第一ポンプ室があった。

 ポンプ室には、所員の武田が機器監視のため待機していた。そんな彼女が通路の向こうからキャストが突進してくるのに気づく。パニックになりそうになる自分を押さえて、隔壁の操作盤を叩く。通路とポンプ室を隔てる隔壁が降りてきたが安全を考慮していてゆっくり落ちてくる。そこにディフェンダーが挟まった。動けなくなるが腕をぶんぶん振り回して逃れようとしている。少しずつ隔壁が持ち上がり始めた!


「武田さん!」


 イエネコ小隊が反対側から到着、ディフェンダーに衝撃波を叩き込む。何発目かで沈黙するキャスト。


 武田は返事する事ができなかった。始めて間近で見た化け物。死を感じた。あれは生身でどうこうできるものじゃない。顎がガタガタ震えて声が出せない。涙が止まらない。


 小隊がキャストの残骸を撤去して隔壁を完全に閉じる。キャストが侵入しにくくなるがこちらの逃走路も減る。痛し痒しだった。

 武田は恐怖に震えるばかりだったが、しかしここに残る事を決意する。誰かがポンプを監視していなければならない。それは彼女しかいなかった。


---


 そこにタマの提案。原子炉建屋のほうが優先するから、詩織さんをタービン建屋から移動してもらって原子炉建屋の消火用水槽と使用済み燃料棒プールの水を使ってもらおう、と。源三さんと詩織さんに伝達する。


「いや、それは...確かにタービン建屋は炉よりは耐久性に余裕はあるが、うーん」


 でも、イエネコ以外に割ける火力は詩織さんのマリンだけだ。シェンは最後の砦だから格納容器前から動かせないし、タマは攻撃や防御に関してはみそっかす。他の戦力は海岸の防衛で手一杯だ。


「仕方ねえ、消火用水槽は好きに使え。配管とか壊すなよ?」


「がってん」


 ...源三さんが不安に頭を抱えてるのが見えるようだ。


---


 私の援護で残っている祥子さん。かなりいらいらしてらっしゃる。


「イーシャさん、ごめん。タマユキの援護任せてもええ?」


「え、祥子さん!?」


「契約者なしで職員がキャストとやり合うなんて無茶すぎるわ。屋内の戦力が足りん。私も建屋内部防衛に加わる」


 確かに祥子さんの言う事はよく分かる。このままでは建屋の契約者が足りず一般職員が蹂躙される。


『Don't worry. I'll protect her.(任せて。彼女は守るわ。)』


 イーシャさんが短く念話で答えてくる。


「ユキちゃん、イーシャの所に行って」


「うん分かった。祥子さん、気をつけてね」


「まっかせなさい。隠れアタッカーの意地を見せつけて来るわ」


 あ、自分で言っちゃうんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ