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『花咲く旅路のごとく』タクヤとゆかいな仲間たち ―道なきぞこの道だけど でもこんなに上手に歩いてるー  作者: もとき未明


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4.9 私が私になるまで

monogatary.com 2026年4月9日のお題『地元エッセイ』について投稿したものです。



 各務原かがみはらリン、二十二歳。

 今春から新社会人。朝はめっぽう弱いが、フレックス制の職場に配属されたおかげで、なんとか社会にログインできている。


 社内での私の評判は知っている。


 ――感性が独特。

 ――他人に興味がない。

 ――モノに人格を求める。

 ……などなど。


 勝手に言わせておけばいい。


 私は、ワタシだ。


 けれど、昔からこうだったわけじゃない。

 子どもの頃の私は、他人の顔色を伺ってばかりだった。

 苗字は岐阜に多いらしい「各務原」で、名前はキラキラした「リン」。

 なのに、自分は全然キラキラしてない。

 中途半端な自分が嫌で、いつも愛想笑いの仮面を被っていた。

 名古屋で生まれ育った私は、自分に自信を持てず、ずっと日陰を選んで歩いてきた。


 そんな私を変えたのは、高校で出会った“リンちゃん”――志摩リンだ。


「シマリンと呼んでくれれば嬉しいです」

 自己紹介でそう笑った彼女の眩しさを、今でも覚えている。

 揶揄われるのが怖くて、自分の名前をボソボソとしか言えなかった私に、彼女はまっすぐ手を差し出してきた。


「あなたも“リンちゃん”ね。よろしく!」

 その瞬間、コンプレックスだった名前が、特別なものに変わった気がした。


 彼女に誘われて入った『野外活動サークル』。

 総勢六名のゆるい集まりだった。

 名古屋の森で落ち葉を集め、二人で焚き火を囲んだ。

 志摩リンは、キャンプに行ったことがないと言っていたのに、なぜか野外活動に詳しかった。

 紐の結び方や木の実を集めるのが得意で、私は彼女からテントの張り方や食べられる野草の見分け方を教わった。

 火を見つめながら過ごす時間は、私に「自分を信じる力」を少しずつ灯してくれた。


 彼女と同じ大学を選び、共に大阪へやってきた。

 アパートは別々だけど、時々会ってエネルギーをもらう。

 かつては縁もゆかりもなかったこの大阪が、今は私の“地元”になりつつある。


 名前も、性格も、今はもう嫌いじゃない。

 これからこの地で、どんな物語を紡いでいくのか。


 それを、少しだけ楽しみだと思いながら、私は今日もキーボードに向かう。



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