4.10 境界線の色彩
monogatary.com 2026年4月10日のお題『現世で非モテだった私が異世界でモテまくっている話』について投稿したものです。
私は、自分を“普通”だと思っている。
――少なくとも、私の中では。
そう言うと、たいてい否定される。
けれど、私の基準ではそうなのだから仕方ない。
できることを、順序立ててやっているだけだ。
昔のことは、あまり思い出さない。
あの世界は、あまりにも窮屈だった。
魔物がいて、魔法があって、力がすべてを支配する場所。
私はそこで貴族に生まれながら魔力を持たない“欠陥品”だった。
――使えない。
それが、私の名前代わりだった。
両親も、教師も、同年代の子どもたちも、いないものとして私を扱った。
私の居場所は、どこにもなかった。
ある日、家族と出かけた森で置き去りにされた。
気がついたときには、ひとり。
空気の匂いも、音の種類も違う。
魔物の気配もない。
ただの森だった。
――ああ、これで終わりだ。
そう思ったとき、私はこの“地球”にいた。
幸い、ひとりで生きるための知識はあった。
誰も構ってくれなかったから、勝手に覚えた野営の術。
火の起こし方、食べられるものの見分け方。
そして、この世界でもひとつだけ、残っているものがあった。
人の“気配”のようなものが見える。
色というほどではない、輪郭のようなもの。
それが、動く前にわずかに揺れる。
その揺れ方で、何をしようとしているのか、なんとなくわかる。
怒るのか、笑うのか、何かを隠すのか。
全部ではないけれど、だいたい外れない。
理由はわからない。
昔から、そうだった気がする。
だから私は、少しだけ先に動く。
相手が欲しがる前に、必要なものを出し、困る前に手を貸し、怒らせる前に距離を置く。
それだけのことなのに、この世界では、学校でも職場でも、アルバイト先ですら重宝された。
「気が利くね」とか、「よく見てるね」とか。
そう言われるたびに、少し不思議に思う。
私はただ、流れに逆らわないように、少しだけ先に避けているだけだ。
それが、この世界では“優秀”というラベルになるらしい。
最近は、役割ではなく名前を呼ばれることが増えた。
――シマリン。
その響きは、嫌いじゃない。
以前、同じ名前の子に出会った。
あの子は、自分の名前に自信を持っていなかったようだったけど、今は明るくなっていて、少しだけ安心している。
ここでは、名前を持っていていいのだと思えた。
この世界のほうが、ずっと生きやすい。
ここでは、“できないこと”よりも、“できること”を見てもらえる。
それだけで、人はこんなに楽になれる。
私は今日も、できることをやる。
少しだけ先を見て、静かに動く。
それが誰かの役に立つなら、それでいい。
この世界での、私の生き方だ。
記念の100話目が、まさかの異世界転生?!
お題がお題だけに……(汗)。
もしかしたら、志摩リンの中二病かもしれないということでm(__)m




