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『花咲く旅路のごとく』タクヤとゆかいな仲間たち ―道なきぞこの道だけど でもこんなに上手に歩いてるー  作者: もとき未明


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4.3 定時という初期設定

monogatary.com 2026年4月3日のお題『新社会人は辛いよ2026』について投稿したものです。



 朝が、つらい。


 これはもう、どうしようもない。


 アラームは三つかけている。

 一つ目は無視する前提。

 二つ目で現実を認識して、三つ目でようやく起きる。


 ――はずだった。


「……七時半」

 今は、二つ目で起きている。

 研修が、九時開始やから。


「バグやろ……」

 つぶやいてから、起き上がる。

 定時出社という仕様が、自分に合っていない。

 これはもう明らかだ。

 システム的に、非効率すぎる。


 それでも。


 会社はそれを“正しい挙動”として扱っている。

 だから従うしかない。

 ――暫定的に。

 配属が決まるまでの、我慢。

 第一希望は、システム開発部。

 第二希望と第三希望は――書いていない。

 必要ないと思ったから。

 希望は、ひとつで十分だ。


 もし通らなかったら?

 そのときは、そのときに考える。

 分岐は、実行時に決めればいい。

 そんなふうに思っている。



 ――研修室。


 前の席の人が、眠そうにしている。

 気持ちは分かる。

 この時間に頭を使えというほうが無理だ。

 講師の説明は、分かりやすい。


 でも。

「……長い」

 小さくつぶやく。

 内容は正しい。

 構造も整理されている。

 なのに、頭に入ってこない。

 流れが、よくない。


(この説明、もう少し幸せにできると思うんやけどな)

 ノートに、矢印を書き足す。

 順番を変える。

 まとめ直す。

 少しだけ、すっきりした。

 こういうのは、嫌いじゃない。

 むしろ、好きだ。

 プログラムも同じ。

 無駄な分岐を減らして、流れを整える。

 そうすると、コードが機嫌よく動く。


 ――そういう感じが、好きだ。

 人に対しては、あまり思わないけど。

 人は、複雑すぎる。

 簡単には整理できない。

 だから、無理に触らない。

 そのほうが、平和だ。


 ふと、思い出す。


 インターンのときのこと。

 担当だった人。

 若杉主任。

 ……いい人、ではあったと思う。

 ちゃんと話を聞いてくれるし、否定もしない。

 でも。

(ちょっと、困ってたな)

 思い出すと、少しだけ申し訳なくなる。

 変数に人格がないと言ったときも。

 処理が悲しいと言ったときも。

 一瞬、止まっていた。

 それでも。

 最終的には、ちゃんと受け止めてくれた。

 だから。

(悪い人ではない)

 印象としては、それくらい。


 研修が終わる。

 まだ配属は決まっていない。

 発表は、一週間後。

 長い。長すぎる。


「……待つしかないか」

 つぶやく。

 今は、どこにも属していない。

 まだ、クラス未定義。

 それはそれで、悪くない。

 変に固定されるより、自由だ。


 ただ。

 ひとつだけ、確実に言えることがある。


「フレックス……」

 小さくつぶやく。


 あれは、必要だ。

 あれがないと、生活が成立しない。

 これは、願望ではなく仕様だ。

 譲れない。

 たとえ、どこに配属されたとしても。

 そこだけは、絶対に。

 そう決めて、そっと目を閉じる。


 ほんの数分だけ。

 次の講義が始まるまでの、仮眠。


 ――これもまた、最適化の一種や。



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