第4話 だから美人は結婚が遅れる
林 : 同窓会の案内来た?
松野 : 来た
宮島 : 行く?
松野 : 行けたら
林 : 俺は多分行ける。ミヤジは?
宮島 : 自分は行かないかもです
林 : デートか
宮島 : 週末はわりと
林 : 松野はまだ分かんないの?
松野 : 子どもの用事次第。でも多分行ける
林 : どういう感じなんだろな? 女子とか
松野 : だいたい結婚してんじゃね?
宮島 : でも吉村さんってまだ独身なんでしょ? あと田畑さんも。
林 : 西高神ファイブ全員独身だからな
松野 : そうなの?
林 : そりゃそうだよ。美人だから。
宮島 : 出た。林説
松野 : どゆこと
林 : 分からんかな。彼女たちはみんな美人だから独身なんだよ。
松野 : 美人なら結婚してんじゃねえの
林 : だめですねえ。パパは
宮島 : 結論、はよ
林 : 美人ってことは、黙ってても男から寄ってきてくれるわけよ。その中から選べばいい。
松野 : まあな
宮島 : (静聴)
林 : 付き合ってるときも、男がなんでもやってくれるわけだ。電車で椅子が空けば座らせてくれるし、車の運転もしてくれるし、お金も出してくれる。で、なにか気に入らないことあれば、変えちゃえばいいんだから。
松野 : でも結婚はできるだろ?
林 : 出来ませんね
松野 : なんでよ
林 : 結婚と恋愛は違うんでしょ? 男が本気で結婚を考えたとき、常にこっちがしてあげなきゃいけない相手と未来は見れないでしょうよ
松野 : 向こうも、なにもしないってことはないだろ
林 : なにもしないっていうか、やってもらって当たり前の人生を生きてきちゃってるから、今さら男の機嫌の取り方なんか知らないんだよ。
宮島 : 体質
林 : そう、慣れてない。だから悪気はないんだよ、彼女らに。松野の嫁の知り合いにもいたじゃん。大金持ちの娘さん。
松野 : あー
林 : 裕福が当たり前の環境で育てば、そりゃ金のありがたみは分かりませんよ。
松野 : でも美人とか関係あるかね
林 : 男がやって当たり前って感覚の奴と生きていけないでしょ。こっちだって疲れてるときあるし、病気もするし怪我もするし、仕事だってなくなるかもしれないのに。
松野 : そらそうだけど。
林 : 一方、黙ってたら誰も寄ってきてくれない女は自分から行かなきゃいけないから、男のことをよく分かってるわけよ。選んでもらえないなら、自分から行くしかない
宮島 : なんかかっこいい
林 : 普通はそういう積極性がどこかにあるわけよ。男の人に楽しんでもらおうとか、労おうとか、そういう精神性が養われていくわけですな。
松野 : 健気っちゃ健気か
宮島 : 昔は日本も景気良かったから男がグイグイ引っ張っていけたけど、今はそうも言ってられないからね。
林 : そう! 疲れて帰ってきて、嫁のご機嫌伺って、しんどいでしょ。お疲れ様ってビールの一本でも出してほしいじゃない。
松野 : 美人はそれしてくれないの?
林 : いや、根っこのメンタリティの部分よ。私のような美人が結婚してやったんだぞマインドと、私なんかと一緒になってくれてありがとうマインドと、後者の方が癒やされるでしょう。
宮島 : 確かに前者はしんどそう。
松野 : うーん……
林 : 極端に言えばよ? 極端に
宮島 : でも確かに、綺麗な子たちがみんな独身って聞くと、林説も説得力があるね
林 : そうでしょう!
松野 : まあなあ……選びすぎてるのはあるのかなあ
林 : ほらほらほら!
松野 : でも、ブスで気が利かないのもいるでしょ?
林 : そんなストレートな
宮島 : ひどい
松野 : でもそういう話だろ!
林 : いや、そうよ、そうだけど、俺が言いたいのは、温室で育っちゃうと、他の環境では生きていきにくいよねって話よ
宮島 : 現代人にアレルギーが多いのは、無菌で育ってるからって話と似てるね
林 : そう! ミヤジくん、ご立派になられて
松野 : 教授か
林 : これが俺の「美人は結婚遅れる説」。
松野 : そういうのもあるかもしんないけど、さすがにもう結婚してんじゃね? だってその情報、結構前でしょ?
林 : どれくらい前かなあ。二、三年前か?
松野 : じゃあ行って検証しようや。
林 : 俺はまだ独身だと思うね。
松野 : 独身だったら付き合っちゃえばいいじゃん。
宮島 : 婚活同窓会
林 : くっそ……今独り身俺だけか
松野 : アシストしたろか?
林 : こいつ……
松野 : アシストしたろか?
林 : 二回言うな。でも三十四歳とか正直ちょっと怖いわ
宮島 : 圧
林 : じゃあ今度デートでも、って軽い気持ちで言えないじゃない。
宮島 : 合コンも、三十歳過ぎると男に警戒されるそうです。
林 : 彼女情報?
宮島 : うす
松野 : 向こうは軽い気持ちでいいって思ってる可能性もあるだろうけどね。そんな重たく見られても嫌だろうし
林 : そう。だから真面目な男ほど萎縮するわけよ。結果、なんにも気にしないチャラ男しかいなくなって、変なのに遊ばれて泣く。これが「ヤンキーの彼女は美人説」。知ってるね?
宮島 : 詳しく
松野 : 始まったよ
林 : 軽さって不誠実とされるけど、軽さがないと恋なんて始まらないでしょ。全部結婚前提で向き合うわけにはいかないんだから。でも女はその軽さを「ヤリモク」って言葉で括っちゃうのよ。
松野 : ヤリモク?
宮島 : ヤリ目的。体目当て
林 : すぐ体目当てとか言うんだけど、一晩一緒に過ごして、合わないって男が感じた可能性は排除されるんだよ。風呂入って寝て起きて、日頃の生活が見えるわけで、それでちょっと嫌になる可能性もあるのにさ。
宮島 : 経験者は語る。
林 : 朝めちゃくちゃ雑に起こされて、最悪だったことあるもん。これが毎日だったら絶対無理だなって。
松野 : なるほどな
林 : かと思えばさ、洋服とかちゃんとキレイに畳む子もいたりさ。ああ、いい子だなあって思うじゃん。
松野 : ホテルのお風呂一回軽く水で流したりとかな
林 : そうそう! 誰が使ったか分からないからって軽くゆすいだりさ。ちゃんとしてるなあって思うじゃん。松野くん、分かってきましたね。Bプラス上げましょう。
松野 : 生徒じゃねえから。しかもBかよ。
宮島 : でもそういう男の本音って、今言ったら終わりですよね。
林 : 終わりですね。だから誰も言わないでしょう。でもこれが現実ですよ
松野 : なんかさっきから恋愛マスターみたいな顔してますけど、独身彼女なしですよね
林 : 松野くん、落第です。




