表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

第28話:新国家『アイアン・ワークス』建国宣言。

「……ふふ。ようやく、本番環境(デプロイ)の準備が整いましたわね」


アイアンの最上層、新しく増設された中央管制室(センター・サーバー)

 私は、磨き上げられたクリスタルの窓から、眼下に広がる真っ白な大地を見渡した。

 そこには、かつて「無能な王宮」が鎮座していた場所はない。

 代わりに、アイアンが物理的に解体(スクラップ)し、再構築した強固な石畳と、夜空を貫くような魔導の街灯が、幾何学的な模様を描いて輝いている。


「店長、全セクター(全居住区)への給電確認。……電圧、安定。……温水供給、正常。……全住民の幸福度(ステータス)、計測限界を突破。」


リタが無機質な声で、建国の成功ログ(ステータス)を読み上げる。

 アイアンの背中と、その周囲に広がる新市街(プラットフォーム)には、いまや数万人の移住者がひしめき、誰もが「温かさ」と「清潔さ」という麻薬(インフラ)に酔いしれていたわ。


私は、アイアンの全拡声システムを起動し、マイクを手に取った。

 (……あら。女王なんて古臭いロール(役職)、私には似合いませんわ。

 私が欲しいのは、誰からも邪魔されず、最高の効率で世界を保守点検(メンテナンス)し続ける権利だけ。

 この国の名前は、血筋や領土ではなく、一つの機能(ワークス)として定義させていただきますわ)


「――親愛なる、私の共同作業者(市民)たちよ」


私の声が、アイアンの咆哮を思わせる重厚な音圧で、荒野の果てまで響き渡った。

 作業の手を止め、祈るようにアイアンを見上げる元職人たち。

 そして、瓦礫の陰で震えながら、自分たちの居場所がどこにもないことを悟ったエドワードたち。


「本日、この場所をもって、旧王国『エストラード』の全プロセス(歴史)を終了させますわ。

 これより立ち上がるのは、感情や伝統というバグ(脆弱性)を排除した、論理と技術の結晶。

 新国家――『アイアン・ワークス』。私はその最高執行責任者として、ここに建国を宣言いたします」


ドォォォォォンッ!! と、アイアンの肩部から色鮮やかな魔導火花(花火)が打ち上げられた。

 それは祝祭の合図であると同時に、旧時代の強制終了(シャットダウン)を告げる音。


「この国において、貴賎や血統という隠しパラメータ(特権)は存在しません。

 評価基準はただ一つ。この世界をより美しく、より効率的に最適化(アップデート)できる能力があるかどうか。

 有能な者には、最高の設備(インフラ)と、温かい食事(報酬)を約束しましょう」


「「「リゼ様! アイアン・ワークス万歳!!」」」


民衆の地鳴りのような歓声が、アイアンを揺らす。

 (……ふふ。見てくださいな、エドワード。

 貴方が『専門用語が多すぎる』と捨てた私の言葉が、いまや新しい国の憲法(ソースコード)になりましたわ。

 貴方の愛した『聖女の奇跡』は、私の作った『全自動洗濯機(ランドリー)』の便利さにさえ勝てなかった……。それが現実ですのよ)


ふと視線を落とせば、街の外周で、ボロ布を纏ったエドワードと聖女が、門番のヴィンセントに追い払われているのが見えたわ。


「……頼む、中に入れてくれ! 私は王太子だぞ! パンを、一切れでいいから……!」


「……ああ、私の愛……。私の愛で、お腹が膨れないのはなぜなのぉぉっ!」


ヴィンセントは、鼻を鳴らして巨大な盾で道を塞いだ。


「悪いな、元王太子さん。ここは実力主義(プロフェッショナル)の国だ。

 『祈り』しか能がない無能な居候(フリーライダー)を入れる枠なんて、うちのデータベース(住民台帳)には存在しねぇんだよ。

 ……あっちのゴミ捨て場なら、まだ前の王宮の瓦礫が残ってるぜ? せいぜいそれを磨いて凌ぎな」


冷たく閉ざされる重厚な鉄門。

 エドワードは、自分がかつて「ゴミ山」へ追放したリゼ様が、いまや自分を「ゴミ」として物理的に除外(フィルタリング)した現実を、絶望と共に噛み締めていた。


「……さあ、リタ。フランカ。お祝い(打ち上げ)の準備をなさい。

 カツサンドは一万食。アイアンの排熱をフルに使って、最高の品質(クオリティ)で提供するのよ」


「了解。……今夜はサーバー(胃袋)、パンクさせちゃうわよ。」


「ふふ。……不衛生な過去とは、これでお別れですわね」


アイアンが「ゴゴッ」と、新しい時代の起動(ブート)を祝うように、力強く重低音を響かせた。

 吹雪はやみ、朝陽がアイアンのテフロン装甲(輝く鋼)を黄金色に染め上げていく。


工作令嬢による、物理的な新世界構築(リノベーション)

 バグのない、完璧にメンテナンスされた未来が、今まさに稼働(ランタイム)を開始したのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ