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第18話:王都の魔導インフラが完全停止

「――ひっ、ひいいいっ! 止まった! 主導魔導炉が完全に沈黙(ダウン)しましたぁぁっ!」


王宮の地下、魔導管制室。

 かつて私が、数ミリの狂いもなく調整し続けていた心臓部。

 そこでは今、王太子のエドワードが、青ざめた顔で火花を散らす制御盤を叩きつけていた。


「何を言っている! 聖女を呼べ! 彼女の祈りで、魔力を再注入(リロード)すれば動くはずだろう!」


「無理です! 祈りで魔力は増えても、焼き付いた回路は繋がりません!」


整備士が絶望の叫びを上げるのと同時に、王都を照らしていた最後の魔導灯がフッと消えた。

 物理的な破損は、奇跡じゃ治らないのよ。


一方、その頃。

 アイアンの観測デッキで、私はリタが映し出す映像を眺めながら、ゆったりと椅子に身を委ねていた。


「……店長、王都、落ちた。真っ暗。衛星写真で見ると、ただの燃えカスの山(ジャンク品)。」


リタがいつにも増して低いトーンで、けれど愉快そうに報告した。

 モニターの中では、闇に沈んだ王都が、阿鼻叫喚のエラーログを吐き出し続けている。


私は、揚げたてでジューシーな「スノーバイソンカツ」を、最高級のパンに挟み込んだ。

 アイアンの排熱によって最適に保たれた室温。昼間のような明るさ。

 この空間こそが、世界で最も堅牢(ロバスト)な楽園だわ。


――サクッ、ジュワッ。


「……美味しい。一度この味を知った舌は、もう元のパサついたパンには戻れないわね」


「店長! これ、最高っすよ! 外が地獄だってのに、こんなにうまいカツサンドが食えるなんて!」


ヴィンセントが口の周りをソースだらけにして、幸せそうに頬張っている。

 (ふふ。味覚による支配は、どんな法律よりも強固な利用規約(ルール)になるのよ)


モニターの隅に、王宮のバルコニーに立つエドワードが映し出された。

 彼は暗闇の中で、わずかに輝く北の空――アイアンの放つ光を、呪わしげに見つめていた。


「――ひっ、ひいいいっ! 止まった! 主導魔導炉が完全に沈黙(ダウン)しましたぁぁっ!」


王宮の地下、魔導管制室。

 かつて私が、数ミリの狂いもなく調整し続けていた心臓部。

 そこでは今、王太子のエドワードが、青ざめた顔で火花を散らす制御盤を叩きつけていた。


「何を言っている! 聖女を呼べ! 彼女の祈りで、魔力を再注入(リロード)すれば動くはずだろう!」


「無理です! 祈りで魔力は増えても、焼き付いた回路は繋がりません!」


整備士が絶望の叫びを上げるのと同時に、王都を照らしていた最後の魔導灯がフッと消えた。

 物理的な破損は、奇跡じゃ治らないのよ。


一方、その頃。

 アイアンの観測デッキで、私はリタが映し出す映像を眺めながら、ゆったりと椅子に身を委ねていた。

 モニターの中では、闇に沈んだ王都が、阿鼻叫喚のエラーログを吐き出し続けている。


「……店長、王都、落ちたわ。真っ暗。衛星写真で見ると、ただの燃えカスの山(ジャンク品)。」


私は、揚げたてでジューシーな「スノーバイソンカツ」を、最高級のパンに挟み込んだ。

 アイアンの排熱によって最適に保たれた室温。昼間のような明るさ。

 この空間こそが、世界で最も堅牢(ロバスト)な楽園だわ。


――サクッ、ジュワッ。


「……美味しい。一度この味を知った舌は、もう元のパサついたパンには戻れないわね」


(ふふ。味覚による支配は、どんな法律よりも強固な利用規約(ルール)になるのよ)


再びモニターに目を戻すと、暗闇に包まれた王宮のバルコニーで、エドワードが北の空を指差して喚き散らしていたわ。

 そこには、吹雪を透かしてアイアンの放つ真昼の光(ビーコン)が、不気味なほど鮮やかに輝いている。


「あ、ありえない……! 何だ、あの不吉な光は!? 観測不能な異常現象(バグ)か!? 聖女の祈りよりも輝いているなど、認めんぞ!」


「エドワード様、落ち着いてください! あれは北の魔の森方面から……」


「ええい、黙れ! そもそも、王宮の魔導炉がこんな機能不全(クラッシュ)を起こしたのは、全部あの女のせいだ! あの、ガラクタ磨きしか能がないリゼが、去り際に余計な細工をしたに違いない!」


エドワードは、暗闇の恐怖を打ち消すように、顔を真っ赤にして怒鳴り続けた。


「今すぐあのガラクタ磨きを、ゴミ山から捕らえてこい! 引きずってでもここへ連れてくるんだ! 私の王宮をこんなゴミ溜め(ジャンク)にした責任を取らせ、タダ働きで修理させろ! 全てはあいつが悪いんだ……あいつが、諸悪の根源なんだよぉっ!!」


(――あら。私に会いたいの? 残念だけれど、私のポリシー(設定)はもう書き換えられたわ。ゴミ山から拾い上げたガラクタが、貴方の国を飲み込む怪物(アイアン)に化けたとも知らずにね)


私はハーブティーで喉を潤し、漆黒に沈む王都を見下ろして言い放った。


「奇跡は、たまたま起きた一度きりの成功例でしかない。でも、私の技術は再現性(だれでもつかえるもの)よ。人は祈りじゃなく、便利さに従うの」


アイアンが「ゴゴッ」と、同意するように重低音を響かせた。

 王都の全権(マスターキー)を握っているのは、もはや王宮ではない。

 

 「リタ、ハンスに伝えて。カツサンドの端切れを闇市で配りなさい。彼らに『本物の豊かさ』という戻れない毒(ウィルス)を完全に感染させるのよ」


「了解。……王都の胃袋、完全陥落までカウントダウン(一分前)。」


王宮が、自分たちの選んだ暗闇の中で凍えている頃。

 私たちはアイアンという名の無敵の移動要塞で、次の構造改革(ざまぁ)への準備を着々と進めていた。

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