表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/40

計画的に迎え撃つ

 今週のしまったポイントを消費してナビゲーターが合体させたのは、勇者(ゆうしゃ)魔王(まおう)の世界と背中にコブのある世界だった。


 背中にコブのある世界は、(やみ)のマンガ()のいた世界とすでに合体している。

 今回、新しい世界を加えて都合3つの異世界が融合(ゆうごう)することになったわけだ。


 そのままナビゲーターと勇者魔王は軍勢を侵攻(しんこう)させ、その世界を掌握(しょうあく)するつもりだった。

 悠長(ゆうちょう)異世界(いせかい)(かん)同盟(どうめい)を結んでナビゲーターに対抗(たいこう)しようとしているこんしまちゃんたちがいかに(おろ)かであるのか、分からせるためにも……。


 でも難なく成功すると思われていた制圧作戦は失敗した。


 いったいなにが起こっているのか?


 うわごとをくり返し、取り乱す勇者魔王。

 状況(じょうきょう)を確かめようとナビゲーターが玉座の()から出ようとしたとき、大きな(おと)を立てて部屋の(とびら)(くず)れ落ちた。


 銀色の十字(じゅうじ)墓石(はかいし)帽子(ぼうし)をかぶり、破れた灰色の布をまとったこんしまちゃんが右のはだしで扉を()り飛ばしたのだ。


 コウモリのぬいぐるみでできた全身を(ふる)わせ、ナビゲーターが窓のそばで停止する。


「あなたは、こんしまちゃん……っ! また、この世界に転生(てんせい)した――というわけでもなさそうですね」


 こんしまちゃんのいただく墓石(はかいし)を見つめ、ナビゲーターが顔をゆがめた。


「今のあなたは墓かぶりの世界のつよつよ主人公。でも勇者魔王さまの世界にも背中にコブのある世界にも闇のマンガ家の世界にも、墓をかぶったつよつよ主人公は存在しません。つまり、あなたは転生したのではなく――」

「そう、世界ごとやってきた……」


 (こわ)れた扉の残骸(ざんがい)をまたいで、こんしまちゃんが玉座に近づく。


「こちらが異世界間同盟の情報を()らせばそれに対応するためにあなたが世界の合体を急ぐのは分かっていたよ……。そして次の合体先に選ぶのは……ほかの異世界に比べて戦力(せんりょく)の低い、背中にコブのある世界。同盟を進めさせないためにも勇者魔王の世界と合体させていち早く制圧し、自分たちの戦力強化を(はか)るねらいだったんだよね……?」

「読みきられたというわけですか。というか、こんしまちゃん……」


 ナビゲーターが(つばさ)をばたつかせながら続ける。


「あなたは進んでこんしまポイントを10消費し、墓かぶりの世界とこの世界を合体させましたね? キャラ崩壊(ほうかい)はやめてくださいよー、()えるなー。もとの世界に再転生する方法をワタシが教えてあげたとき、こんしまちゃんは『世界を合体させない』って明言してたじゃないですか。それぞれの世界に住む人の生活をめちゃくちゃにしたくないんでしょ? 部外者のあなたが世界の根幹(こんかん)()るがしちゃダメなんでしょ? にもかかわらずアルベスにそそのかされるまま世界合体をやっちゃうなんてブレッブレですね。あのときの気持ちはどこに()ったんですか~」


「もちろん世界合体はやらないつもりだったよ……。でもわたしがやらなくてもナビゲーターさんが合体させるわけだよね……? 責任を負うのが(いや)だからといってわたしが()げてばかりじゃ、(おそ)かれ早かれ結局あなたは世界をすべて合体させて消滅(しょうめつ)させる……だからあなたの計画を阻止(そし)するためにも、あなたの(いや)がるかたちで世界合体をおこなう必要があったの」


「合体させられた(がわ)迷惑(めいわく)でしょうよ。ワタシのほうは最初から迷惑かけるつもりだから問題ないですけど」

「安心して……すでに許可はとっているよ」


 こんしまちゃんが後ろを見ると、扉の残骸の向こうから2人が姿を現した。

 1人はハチマキを巻いた闇のマンガ家である。


「話はすべて聞かせてもらいました。って、1回()ってみたかったんですよねー」


 どうやら闇のマンガ家は玉座の間の手前に待機し、こんしまちゃんとナビゲーターの会話に耳をかたむけていたらしい。


「アルベスさまに世界合体の許可を求められたとき、(わたし)連絡(れんらく)したんです。コブのある世界のなかでもっとも(えら)い人にね。それで、『いいよ』って返事をもらいました」

「軽すぎませんか!」

「いやいや、その人は私のマンガの大ファンなんです。作者の私の言うことくらい聞いてくれますよ」


 ついこのあいだ闇のマンガ家はコブの世界に来たはずなのに、そのレベルのファンがすでにいるとは(おどろ)きである。

 偉い人もノリが軽いような気がするけれど、ゆるっゆるの裁判を見ていたこんしまちゃんは「これがあの世界の常識なのかも」と勝手(かって)納得(なっとく)していた。


「そんなことより、こんしまちゃんが教えてくれましたよ。コウモリの格好(かっこう)をしたあなたこそが、私のマンガに(はい)ってくれた町娘(まちむすめ)さんなんですよね。よければ、また(はい)りません?」

「……そんなことをしているヒマはないんですわあっ!」


 ナビゲーターのさけびと共に、窓から魔王軍が(はい)ってきた。

 先ほど翼をばたつかせたときに呼んだのだろう。


 (つばさ)やツノを持つ者が次から次へと姿を見せ、いつの()にかその(かず)は百を()した。(かれ)らにナビゲーターが指示を出す。


「やってしまいなさい!」

「――王を前にして(おそ)れ知らずな者どもだな」


 闇のマンガ家と共に姿を現したもう1人が鼻で笑った。


 墓かぶりの王・アルベスである。

 直方体の立派な墓石をかぶったアルベスが両手をパーにしてそれらをゆかに向かって()り下ろすと、どこからともなく球体状の墓石の雨が()ってきて100以上の(てき)一瞬(いっしゅん)()しつぶした。


「グレイブ・ハットでもグレイブ・キャップでもない新たな墓石の帽子を贈呈(ぞうてい)してやった」

「アルベスッ!」


 ナビゲーターが空中でじだんだを()む。


「敵とはいえ容赦(ようしゃ)なくつぶすとは、あなた本当に人の上に立つ王ですかッ」

「もちろんあとでよみがえらせるさ。オレにはそれができるからな、ははははッ!」


「コブのある世界に攻撃(こうげき)仕掛(しか)けた魔王軍は、ことごとくお墓の(した)にうまっているよ……」


 墓石のあいだを()い、ナビゲーターと勇者魔王にさらに近づくこんしまちゃん。


「首都を()めた精鋭(せいえい)部隊もわたしが1人で返り()ちにした……しかもアルベスさまの(ちから)によって、墓かぶりになったみんなはいつでも復活できる……」

「ま、待ったこんしまちゃん。いくらあなたがつよつよ主人公だからって、マイナスレベル1000万の勇者魔王さまに勝てるとでも……っ?」


「前に墓かぶりの世界に転生したとき、ナビゲーターさん言ってたよね……? みんなを(ちから)屈服(くっぷく)させて王として君臨(くんりん)するという手もあったって……。アルベスさまたちがいるからわたしは王にはならないけれど……みんなを傷つけようとするあなたたちをとめるためなら、強キャラ主人公という立場を()かさない理由はないよ……」

「なにをっ! こっちは最強の(つえ)とマントを持った最強魔王ですよっ!」


「でもわたしが最初に転生した魔王よりは弱いよね……? そして、今のつよつよ主人公に転生したわたしはどのくらいのレベルなの……?」

「しょせん100万ですっ!」

「なら確かめてみる……」


 こんしまちゃんは力強(ちからづよ)()み込み、玉座の勇者魔王の(ふところ)に飛び込んだ。


 勇者魔王はハッとして応戦する。


()らうがいいッ、魔王アタック!」


 どこか(なつ)かしいセリフ。(かれ)のネーミングセンスは成長していないようだ。

 杖が(なな)めに振り上げられたものの、こんしまちゃんは少し身を揺らしてよけた。


 体勢を崩さずにカウンターを()ち込む。


 十字のグレイブ・キャップをツノのようにぶん回したのち、正面からこんしまちゃんは勇者魔王に()きを()れた。


 刹那(せつな)、玉座も後ろの(かべ)(おと)を立てて崩れ去った。

 墓に突かれた勇者魔王は目を()ひらいたまま(そら)の向こうに飛んでいき、小さくなって消えた。


「しまった……飛ばしちゃった」


 とはいえ勇者魔王のレベルは1000万だし、最強の防御力(ぼうぎょりょく)(ほこ)るマントを身につけているので絶命してはいないだろう。


 ガタガタ震えているナビゲーターに視線を移すこんしまちゃん。


「どうやらつよつよ主人公のレベルは1000万を(ゆう)()えていたみたいだね……」

「他人の(ちから)でイキるなんてダサいですよ、こんしまちゃん……っ」


「そのとおりだよ……でもこれは転移でも憑依(ひょうい)でもない……。ほかならないこの人として転生しているからこそ、もともとの(たましい)一緒(いっしょ)に『この世界を守りたい』ってさけぶことができるんだ……」

「ぐ……ッ! こんしまポイントのおこぼれにあずかるのに最適な人間かと思いきや、ワタシの思いどおりには動きませんかシマッタ」


「……今のであなたのポイントはどのくらいになったの? さっきわたしがうっかり口走(くちばし)ったぶんと合わせて10に届いた……? だけどわたしは、今からあなたを取り押さえるよ……たとえ世界を合体させたとしてもナビゲーターさんは()げられない」

「やむを()ませんね……っ!」


 ナビゲーターがコウモリの身をひるがえしてこんしまちゃんに突進してくる。

 それからこんしまちゃんのかぶる十字の墓石に激突(げきとつ)したのち、(けむり)となって消えた。


 その際、(むらさき)の小さな火の玉5つが煙のなかに出現し、同時に消滅(しょうめつ)した。

 瞬間(しゅんかん)、こんしまちゃんはナビゲーターを逃がしてしまったことに気づいた。


「しまった……! 自分から転生するなんて」


 しかもナビゲーターはこんしまポイントを5消費して次の転生先を指定した可能性が高い。


(次に逃げるとしたらどこ……? いや、転生しなくてもナビゲーターさんは姿を変えながら(ちが)う世界を()()できるはず……。じゃないとずっとわたしの転生先にナビゲーターとして現れていたことに説明がつかない……だから闇雲(やみくも)に追ってもダメ……。とにかく今のナビゲーターさんはこんしまポイントを回復させたいって思ってるだろうから……これから向かうとしたら、()()()しかない……!)


* *


☆今週のしまったポイント:-8ポイント(合計35ポイント)

次回「巷のチマッタ」に続く!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ