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はげない仮面

 男の子メーユに転生(てんせい)したこんしまちゃんと魔女のもとに、化け物の「面食(めんく)い」が現れた。


 面食いの手をよけると同時に宇宙使いの魔女(まじょ)の左ほおに傷が走る。


 それでも魔女はひるまず(つえ)()る。

 魔女の傷口(きずぐち)からは血ではなく、星空をちりばめた宇宙が()れ出ていた。


 少量の宇宙が傷口から()き出し、(やり)となって面食いの左脇腹(わきばら)に命中する。

 面食いがひるんだところで魔女はこんしまちゃんの手を引き、家の(そと)に移動。


「こんしまポイントの使い手さん――略してコンポテさん! 反応から(さっ)するに、あなたはあの化け物と会ったことがあるようですね」

「は、はい……っ!」


 走りながら答えるこんしまちゃん。


「あれは『面食い』です……こことは(ちが)う世界に生息していた、人の仮面を引きはがして食べる(おそ)ろしい(けもの)……!」

「なぜ仮面」


「面食いのいる世界の人たちは素顔(すがお)を見られたら死んじゃうんです……だからみんな仮面をかぶっていました。そんな世界にとって面食いほど(こわ)い生き物はいません……っ」

「話し合いもできないようですね。でも面食いの仮面を外せば面食い自身も死ぬのでは」


「いいえ……素顔を見られて死ぬのは人だけです。面食いは人ではないので仮面をはがされても生きたまま……サルのような顔をわたしは前に見たことがありますけど、その(くち)で仮面をボリボリ食べる習性があるようです……」

「情報ありがとうございました。なんにせよナビゲーターとやらの世界合体がまた(ひと)つ進行したということですね」


 いったん停止し、魔女がきびすを返す。

 家から出てくる面食いと再度対面し、こんしまちゃんから手を(はな)した。


「とまってください。さもないと宇宙(うちゅう)()めですよ。水責(みずぜ)めの宇宙バージョンです」


 しかし面食いは答えず、つけていた仮面を外す。

 仮面を左手に持ったまま魔女へと突進(とっしん)した。


「そもそも、わたしは仮面をかぶっていないのですが」


 会話を(こころ)みつつ魔女は、宇宙使いとしての本領を発揮(はっき)する。

 そばにあるダムにたまった宇宙が(へび)のように鎌首(かまくび)をもたげ、魔女を取り囲むようにとぐろを巻いた。


 宇宙の体を持つ蛇が、面食いの突進を受けとめる。

 さらに蛇のしっぽが面食いに巻きつき、完全にその動きを(ふう)じた。


拘束(こうそく)はしました。さてどうするか」


 面食いはしばらく暴れていたけれど、脱出(だっしゅつ)不可能であることに気づいたあとはおとなしくなった。


「コンポテさん」

「……」

「コンポテさんっ! 略さずに言うと今週のしまったポイントの使い手さん!」

「しまった……なんでしょう……!」


 ゆっくりとこんしまちゃんは面食いの近くに寄った。

 魔女は宇宙蛇をなでながら質問する。


「面食いは仮面以外のものは食べるんですか」

「食べないはずです……」

「つまり仮面は(かれ)らにとっての完全栄養食というわけですか。代替品(だいたいひん)を作ってみましょう」


 拘束された面食いの左手の仮面をじっと見て、それと同じ形状の仮面を作成する。

 素材はすべて宇宙でできている。すなわち宇宙仮面を作り上げたのだ。


 この宇宙仮面をかぶり、魔女は面食いに接近した。

 ついで蛇が拘束をゆるめると、面食いは嬉々(きき)として宇宙仮面を(うば)い取った。


 面食いが宇宙仮面に歯を当てる。

 刹那(せつな)、食感の違いを察したようだ。


 少なくともボリボリ食感じゃない。

 おそらく、こんしまちゃんが以前へその()から宇宙を摂取(せっしゅ)したときのようなヤバい解放感があるはずだ。


 当の面食いは最初だけ警戒(けいかい)の色を見せたものの、以降は宇宙仮面を夢中でもぐもぐ食べ始めた。


 しかも仮面を完食したあとは、ふくれたおなかを満足そうにさすった。

 こんしまちゃんは(おどろ)き、気づいたことを魔女に伝える。


「満腹のようですね……でも以前遭遇(そうぐう)した面食いは仮面1つを食べてもそれだけで満足できる生き物ではありませんでした……もしかしたら宇宙仮面を(あた)えることができれば、面食いも人を(おそ)わなくなるかもしれません……」

「断定するのは早計では。単なる個体差が原因の可能性もあります」

「……しまった」

「面食いは、ほかにもいるんですよね。世界が合体した今、とにかく検証のためにも別個体を探しに()かないと」


 続いて魔女は宇宙蛇を変形させ、宇宙で(おり)を作り上げた。

 宇宙檻のなかに満腹状態の面食いを()れる。


 仮面(エサ)を与えないでくださいという()り紙をしてから魔女がうなずく。


「これでよしっと。さあ出発しますよコンポテさん」

「まずは近くの村に行くんですね……」

「いえ、そちらのほうにはすでに宇宙式神(しきがみ)を飛ばしているので安全です」

「宇宙、万能……!」

「だからもっと遠くに向かいましょう、天空の海を使って」


 見上げると、(そら)に広がる海に逆さまの大きな客船が()かんでいるのが分かった。

 その客船から、するするとハシゴが()りてくる。


 ハシゴに取りつき、こんしまちゃんと魔女は船へと急ぐ。

 途中(とちゅう)で重力の向きが逆転し、逆さまだったはずの船の甲板(かんぱん)に2人は着地した。


 代わりに天上には、さっきまでこんしまちゃんたちがいた宇宙ダムや緑の山などが広がっている。

 動きだす船の甲板で、魔女は今後の予定を打ち明けた。


「ここからはほかの宇宙使いの魔女たちとも連携(れんけい)をとります。世界が合体したことによる影響(えいきょう)を明らかにし、向こうの世界の人たちと仲よくするために。そして面食いへの対処法(たいしょほう)検討(けんとう)しなければなりません」

「この世界の人たちは仮面をつけていないので面食いも無理に(おそ)うことはなさそうですが……こうなったからには、もともと面食いの世界にいた人たちもなんとか助けたいですね……」

「素顔を見られたらそのかたがたは死ぬんでしたっけ。だったら」


 なにか思い付いたのか、魔女がパチンと手をたたく。


「絶対はげない仮面を作ろうじゃありませんか」


* *


☆今週のしまったポイント:2ポイント(合計104ポイント)

次回「なんか外せない」に続く!?

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