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7 HR

「……と、いうわけだ。これを図解すると…」


朝のHRから数時間後、

先生はささっと出席者の確認を終え、

1時限めの授業に移った。

カッカッとチョークが黒板に走る音と、

先生の声が響くなか、

ほとんどの生徒は、背筋をピンッと伸ばして真面目に授業を受けていた。

彼らがエリート校の生徒達であることに

加えて、先生の授業は面白い上に

わかりやすいと評判だからである。


…まぁ、アイツみたいに寝ているやつもいるけど。


ちらりと隣の席の銀色を見る。

須賀は授業のチャイムがなるやいなや、

机に伏せ、堂々と居眠りをし始めた。


久しぶりに登校したと思ったら、

これだもんな。


朝の騒動に加えてのこの態度に対して、

教壇に立った先生の背後に

般若の面が見えたのは、

俺の気のせいじゃないだろう。


その時の先生の冷気を思い出して、

ぶるりと身が震える。

ホスト顔負けの風体にプラスされた

凄み顔で、威圧感が増し増しだった。

有里先生が、実は元ヤンか

ホストだったと言われても納得する。


「あだっ!!?」

「花草、俺の授業で呆けるとはいい度胸だなぁ?」


突如、後頭部に走った痛みに、

現実に引き戻される。

頭を押さえながら、顔をあげると、

口端をひくつかせた有里先生が

丸めた教科書を片手に立っていた。


「っ~!いくらなんでも、殴ることないじゃないですか!体罰ですよ!」

「あ?正当な教育的指導だっつーの。文句がいえるってことは、言えるだけの頭があるんだよな?じゃあ、花草には、課題を増やして、黒板の問題を…」

「すみませんでしたぁ!!全く分からないので、勘弁して下さい!でも、俺の隣の須賀くんも寝てましたよ!」

「……あ?」


国語苦手な俺には、あまりな提案に

手のひらをグルっと返して、

須賀を道連れにしてやった。

すると、ムクッと起きた須賀が

寝ぼけまなこで睨んできた。


(須賀…!お前も道連れにしてやる!てか、有里先生と二人きりの補習は嫌!助けて、すがえもん!!)

(……よく分かんねぇけど、アイツ、またなんかやらかしたな…)


アイコンタクトで、必死に助けを請うたが、須賀は憐れみの目を向けてきた。

俺の思いが分からねえのか、須賀…!


愕然としていると、頭上からため息が落ちてきた。…すげぇ!なんかいい匂いしたわ!


「お前、本当に、ボーッとしてたんだな。

授業なら、もう終わったぞ」

「はえ?」


呆れた顔で言われ、慌てて時計をみると、

たしかに1時間目の授業は、終了時刻を過ぎている。

だ、だまされたのか!


「ひどいですよ、先生!鎌かけましたね!」

「ひどくねぇよ。

真面目に授業聞いてなかったのが悪りぃ」

「そんなことないです!

ちゃんと前半は、聞いてましたよ!」

「後半は、聞いてねぇじゃねぇか」


もっともな正論に、うぐっと言葉が詰まる。


「ぐぬぬぬ…!」

「ま、それは今回だけ見逃してやる。

昨日、色々あって、お前が大変だったのは

知ってるしな」

「先生!」


やった!

なんて優しいんだ、有里先生は!

いや、有里様!

俺、先生に一生ついていきます!


心からの感謝を込めて、キラキラした目で

先生を見つめる俺に対して、先生は


「ただし、

朝の件はきちんと説教するからな。

放課後になり次第、須賀と一緒に

俺の準備室に来るように」


しっかりと、教師としての職務を全うしていた。チッ!免除にはならんか!


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