e.13 蟹と霊峰と・・?
お久しぶりの更新です。
蟹おいしいですよね。蟹。
先ほどから、巨大蟹に5人PTの人が挑んでいる。
守り人一人、槍士一人、銃士一人、水魔術師一人、治療者一人のPTだ。連携はまあまあうまくやっている。
銃士の人が指揮をしているから、あの人がおそらくリーダーだろう。
しかし、やはりダメージはそれなりに受けている。とくに治療者の人は、体力がもう3割ほどしかない。
…そろそろかな。
「【シェード】」
治療者の人に振り下ろされた鋏に、ハルバードの柄の部分をうまく当てて弾く。これは受け流しのスキルだ。
「っ?」
「私も参加させてもらうよ。暇だからね」
引き続き、ハルバードを使って攻撃を裁く。
こいつの攻撃方法は見た限りでは六つ。鋏を突き出して相手を吹き飛ばす攻撃、腕を振るう薙ぎ払い吹き飛ばす攻撃、鋏で挟んで投げる攻撃。この三つは、それぞれ結構な距離を飛ばす。
そして、その巨体を用いてこちらを押しつぶしてくることがある。これは当たったらほぼ即死だ。動きが遅いので避けるのは難しくない。
あとは口から水をレーザーのように放つ攻撃がある。当たると水属性のダメージに加えてノックバックが発生する。これに合わせて連携で他の技を使うこともあるから注意だ。
一番厄介なのは、脚を伸ばして身体の場所を上げて、砂を落としてくることがあることだ。視界が悪くなるし範囲攻撃だから盾も役に立たない。
「私たちで攻撃は全部流すから、攻撃をお願い」
「あ、ああ」
「キャンサー、左の鋏をお願い。私は右を抑える」
「了解!」
キャンサーと連携し、鋏の攻撃を裁く。
攻撃対象はいつまでも治療者の人のままだ。まあ回復役を倒すのは鉄則だから普通はそうだろう。
それにしても、蟹に対して水魔法を使う人とは…水棲の生き物だから、水耐性は高いんだけど。
「キャンサー、チェンジするよ」
「ん、わかった」
適度にキャンサーと相手する場所を変える。
この変更は、前衛の二人が回復などに下がるための時間を埋めるのが目的だ。ちなみに動きながらハルバードで腹部を切っていく。
蟹の残り体力は、まだ3割ほどある。これなら押し通せる。
と思ったのだけど、蟹のハサミが怪しい動きをしている。
まずいかな…とは言っても、多分防げないものじゃないはずだ。ボスとは言え最初のエリアのボス…さすがにそこまで強いとは思えない。
「キャンサー、鋏からの攻撃に注意。何かやってくるよ」
「ん」
蟹が、私とキャンサーに向けて鋏を構える。
鋏が開かれ…中から水が発射される。レーザーではなく、これは弾丸だ。
ハルバードで突いて四散させる。結構強い衝撃が腕に伝わる。見た目以上に威力があるな…。
しかも結構な数を撃ってくるらしい。連射速度はセミオートのハンドガンを間髪いれずに撃つ程度だと思っていい。毎秒4発は撃ってくる。
それを合計15発撃ってきた。全て迎撃したから問題はない。
…拍子抜けだけど、当たったらかなり痛いだろうな。ハルバードを持っていた腕がまだ痺れてる。
「攻め落とします!」
槍士の女性が、そう言って構える。戦技を使うのだろう。
合わせて銃士と水魔術師もそれぞれ構える。
「下がってください!」
と、聞こえたのでキャンサーと合わせて下がる。
「【サンダースピア】」
「【サンダーショット】」
「【ウェーブ】」
三者三様の攻撃が炸裂し、蟹を大きくのけぞらせる。
残っていた体力は…5%ほどまで削れた。
そして状態異常である麻痺1(神経麻痺)が発生している。やはり水棲の生物だから雷に弱いのだろう。
追加で瀕死の状態になっているため、もうまともに動くことはできない。
…と思っていたのだけど…。
「!?」
蟹が頭上に巨大な水球を作り出した。明らかに大きいぞ。
直径はおよそ10m、しかも内部に何か入っている。
止めなければ…と思っていたけれど
「いい加減、おとなしくしなさいっての!」
凄い速度でキャンサーが接近し、蟹の顎を蹴りあげる。
それだけで体力は0になり、蟹は戦闘不能となる。そして水は、水蒸気となって消えていった。
「…終わりかな?」
「終わったのか…」
「…勝ったのね…」
「疲れた…」
「やりましたの…」
五人がそれぞれ、地面に座り込む。
…確かに、始まってすぐだし、まだこのレベルを相手するのは疲れるだろう。
「キャンサー、貴女から見てこの蟹…ラグナクラブはどうよ」
「それは私がキャンサーだから聞いてるの?それとも普通に?」
「両方の意味でね」
「まあ、確かにかに座を冠してはいるけどね。ボスの中では底辺、まあよくて下の中ぐらいね。ある程度レベルがあって、雷属性を使えるのなら一人でも倒せる相手よ」
流石はキャンサー。
十二星座はそれぞれ、自分の星座に属する生物をよく知っている。辰ならば竜や龍に詳しいし、虎なら猫族に詳しい。
キャンサーは蟹だから水棲の生物に詳しいらしい。
「ドロップアイテムは…さすがボスね。かなりいいものが出てるわ」
鋏とか甲羅とか、あと脚…これは食品だけど。
ドロップの大半は食料品だな。ただ、いくつか専用ドロップの装備品がある。
ラグナクラブリング…これは指輪だ。水属性の攻撃力が上昇する。
ラグナクラブギア…こちらは付加アイテム。効果は水属性上昇。
ラグナクラブグラス…これは近接武器だ。これを、刃物の刃の代わりに使うと特殊効果がつけられる。
それと初回限定ドロップ、巨大蟹の鈴というものが出ている。
「あの、ありがとうございました」
「ん、別にお礼を言われるほどのことはしてないよ」
ドロップアイテムんの確認を終えたころ、槍士の女性が話しかけてきた。
「それでも助かったよ。俺はこのPTのリーダー、銃士の巫だ」
「私はミレニア。炎魔術師だよ」
「私、治療者のエリアスと言います」
「僕はコーラル。守り人です」
「私はかりす。槍士をやってます」
「私はレク。水魔術師です」
キャンサーは…今は私の背中にくっついてる。
重くはないんだけど…ちょっとくすぐったい。
「その子は…?」
「私のパートナーでキャンサー。人見知りなんだ、ごめんね」
「いや、構わないさ。それで…」
「ドロップアイテムの配分ですね」
ドロップアイテムは、鋏2・甲羅1・脚8であとは一つずつ。
甲羅はいらないな。鋏もいらない。脚だけもらえればいいかな。
「私は脚が二本で十分だよ。あとはそっちで分けて」
「あんたがいなければ俺達は負けていた。それじゃこっちの気が済まない」
「私は乱入者だよ。それに、経験値もかなりもらえたし十分だよ」
「だが、俺達のPTにはこれは役に立たん…あんたが持ってくれたほうが役に立つ」
そして渡されるのは、巨大蟹の鈴。
これの効果は、特殊スキルの【ラグナバースト】を修得する。
ラグナバーストは、物理攻撃時に一定確率で水属性の魔法ダメージを追加で与えるものだ。MAGが高くなければ殆ど意味は成さないし、かといって魔法職の殆どは武器を使わない。
…確かに、これは私の方が使えるかもしれない。
「いいの?これ、もう二度と手に入らないわよ」
「構わない。使えない人よりも、使える人が持った方がいいだろ」
「そう言うことなら、ありがたく貰っておくよ」
アイテムストレージに巨大蟹の鈴が追加される。
脚を二本と鈴を貰って、あとは全て巫さんたち五人で分けてもらう。
「私はこれから街に戻るわ。貴方たちはどうする?」
「俺達も戻るよ。一回ログアウトする予定だ」
というわけで、巫さんたちと一緒に街へと一度戻る。
道中、少しだけ足りなかったクエストアイテムを集めただけで何もなかった。
【フィールド:人間都市 商業都市ファラン】
「クエストアイテムの納品に来たよ」
所変わってここは冒険者ギルド。
「もう何も言うまい。報酬だ」
これで、大体2000Fほど余裕ができた。
「死神の様子はどう?」
「変わったところはない。死神とは思えないほど大人しくしてるがな」
「そりゃ、あいつはただの人だから。まあ、それならいいや。私は失礼するよ」
今日はここまでにして、今から森に向かう。
オーブの解放条件は既に満たしているけど、まだ使わないでおく。
ちょっと試してみたいことがあるからね。
「緊急事態だー!」
「わっ!?」
突然、扉を開けて入ってきた人影にぶつかる。
…何?一体なんだ?
「わ、悪い!急いでるんだ!」
「レイク!一体何があった?」
「ジン!東の森のウィスプが凶暴化している!」
…ウィスプが凶暴化…?
何かのイベントかな?
「何人か襲われてる!それに見たことねぇ奴を見たって奴もいる!」
ウィスプの活性化と新しいエネミーの出現…?
そういえば、ライナーフォレストのライナーは、この世界の用語で『霊峰』という意味があるらしい。これは実在する言語ではないけれど、このゲーム専用の用語だ。
バンダーベアのバンダーも『格闘』という意味がある。ウェアウルフのウェアには『敏捷』、ファイラビットのファイには『脆弱』という意味がある。
まあそれは置いといて…ライナーフォレストは、『霊峰の森』という意味を持つ。私があそこから開始したのもそれに由来している。
実はただの森ではなく、要所要所に様々なギミックが設置されている。私のいた『熾天使の寝台』というのもその一つだ。今は機能してないけど。
その中には、レベルの高い魔物が封じられたものや、武器防具が入っているものもある。まあ大半は大したものではないけれど、中にはイベントが発生したりするものも…。
ちなみに本来の『霊峰』の意味は、神様を祀っていたり、信仰されている山々のことを表しています。この森にも、森の奥へ行ったら小規模な山岳がある。
おそらく、どこかのプレイヤーがギミックを発動させたのだろうと私は思う。誰がやったのか知らないけどいい迷惑だろうね、他の人にとっては。
「非戦闘員は村から出ないようにと伝令してくれ!俺は戦闘員を集める!」
…大変そうだなぁ。
じゃなくて、厄介事に巻き込まれる前に逃げよう。
昔は色々なものを崇めたり祀ったりしている風習がありましたね。
その崇めたり祀ったりした物の中で、山を対象としたものを霊峰と言います。
例えば富士山なんかは典型的なものですね。




