第6話 見知らぬ森で迎える夜
森の中で、どれくらい時間が過ぎたのか。
木々の隙間から見える空は、少しずつ暗くなり始めていた。
「まずいな……」
夜になれば、周囲は今よりも見えにくくなる。
あの大きな狼のような魔物が、夜にも活動するのかどうかは分からない。ほかにも危険な生き物がいる可能性だってある。
少なくとも、暗くなってから森の中を歩き回るのは避けたかった。
俺は、先ほど見つけた太い木の根元へ戻った。
周囲を確認してから、集めておいた枝や葉を地面に置く。
屋根を作るほどの材料はない。火もない。まともな寝具もない。
現実を突きつけられると、どうしてもため息が出た。
「ゲームなら、最初から最低限の道具くらいあるんだけどな」
愚痴を言っても状況は変わらない。
俺は大きな葉を何枚か重ね、地面の上に敷いた。土や枯れ葉に直接触れるよりはましだろう。
背中を預けられそうな木を選び、なるべく周囲を見渡せる向きに座る。
これで安全というわけではない。
それでも、今夜をやり過ごすためには、できることから始めるしかなかった。
水も食料も、まだ十分に確保できていない。
明日は、まず水場を探そう。
そう考えながら、俺は暗くなっていく森を見つめていた。
遠くから、何かの鳴き声が聞こえた。
鳥なのか、獣なのか。それすら分からない。
俺は体を固くし、しばらく耳を澄ませた。
やがて音が途切れる。
静けさが戻ってきたが、安心はできなかった。
この世界での最初の夜は、長くなりそうだった。




