第20話 灰色の相棒
その日、灰色の生き物は、いつもより近くにいた。
俺が座って休んでいると、少し離れた場所からこちらを見ている。
しばらくすると、地面を探るように動き、またこちらを向いた。
俺は刺激しないように、ゆっくりと手を下ろした。
無理に触れようとはしない。
相手が近づいてきても、こちらから急に動かない。
そうして様子を見ていると、灰色の生き物は少しずつ距離を縮めた。
長い耳が動き、鼻先が地面を探る。
やがて、俺の手の近くまでやってきた。
「……お前、俺のことが気になるのか?」
もちろん、返事はない。
それでも、逃げずに近くにいるという事実は変わらなかった。
俺はしばらく、その小さな姿を見つめていた。
この世界で、俺はまだ誰とも出会っていない。
言葉を交わす相手もいなければ、助けを求められる相手もいない。
そんな中で、目の前の生き物が近くにいることは、思っていた以上に心強かった。
ただし、相手の性質も、食べ物も、危険性も分からない。
完全に信用するのではなく、互いに無理のない距離を保つことにした。
そのとき、頭の中に、不思議な感覚が生じた。
何かが成立したような、曖昧な手応え。
俺は思わず顔を上げた。
「今のは……?」
周囲を見回す。
だが、目に見える変化はない。
灰色の生き物も、特に変わった様子はなかった。
何が起きたのかは分からない。
ただ、俺はこの小さな生き物と、これからも一緒に過ごせたらいいと思った。
名前は、まだ決めていなかった。




