第19話 従魔という言葉が頭をよぎる
灰色の生き物を観察していると、俺はふと、これまで読んできたラノベの内容を思い出した。
異世界の物語では、主人公が魔物を仲間にする展開がよくある。
従魔。
テイム。
契約。
作品によって仕組みは違うが、魔物と協力しながら旅をする話は珍しくない。
「この世界にも、そういう仕組みがあるんだろうか……」
考えてみたものの、今の俺には何の証拠もなかった。
目の前の生き物が魔物なのか、普通の動物に近い存在なのかも分からない。
まして、仲間にする方法など見当もつかない。
ゲームの知識は参考になる。
だが、目の前の世界がゲームや小説と同じ仕組みで動いているとは限らない。
俺はそのことを忘れないようにした。
灰色の生き物は、少し離れた場所で地面を嗅いでいた。
俺は、手に持っていた枝を地面へ置いた。
何かを与えて反応を確かめる方法も考えたが、食べ物の安全性も、相手にとって適切なものも分からない。
不用意に何かを与えるのはやめておく。
今は、相手が自分から近づいてくるかどうかを見守るだけでいい。
やがて、生き物は俺の近くを通り、少し離れた場所へ移動した。
逃げるような動きではなかった。
しかし、信頼されていると判断するには、まだ早い。
「まあ、焦る必要はないか」
俺は小さく笑った。
仲間にできるかどうかは、まだ分からない。
それでも、森での生活に、ひとつ新しい関心が生まれたのは確かだった。




