第17話 近づきすぎない距離
翌日、俺は昨日の場所をもう一度訪れた。
あの灰色の生き物が、また現れるとは限らない。
それでも、どんな行動をするのか、もう少し観察してみたいと思ったのだ。
森の中を歩きながら、俺は周囲に注意を向けた。
やがて、昨日と似た茂みの近くで、小さな灰色の姿を見つけた。
「いたのか」
俺が声をかけると、生き物はこちらを向いた。
長い耳がわずかに動く。
その様子を見て、俺はゆっくりと腰を下ろした。
立ったまま近づけば、相手を怖がらせるかもしれない。
まずは、こちらが危害を加えるつもりのない存在だと伝えたい。
もちろん、人間のように言葉で説明できるわけではない。
俺は手を伸ばさず、距離を保ったまま待った。
灰色の生き物は、少しだけこちらに近づいた。
しかし、すぐに立ち止まる。
俺が動くと、また距離を取った。
「まあ、そんなものだよな」
野生動物なら、当然の反応かもしれない。
こちらの都合で距離を縮めようとしても、相手が受け入れるとは限らない。
しばらく観察していると、生き物は地面に落ちていた何かを口にした。
植物の一部なのか、種なのか。
遠くからでは、はっきり分からなかった。
食べているものが分かれば、食性を知る手がかりになるかもしれない。
だが、それを見たからといって、俺が同じものを食べられるとは限らない。
俺は、見たことだけを覚えておくことにした。
灰色の生き物は、やがて茂みの向こうへ姿を消した。
無理に追いかけることはしなかった。
今は、相手の行動を少しずつ知っていけばいい。




