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第10話 水の気配を追って
水の音らしきものは、歩くたびに聞こえたり、聞こえなくなったりした。
はっきりした流れの音ではない。
それでも、立ち止まって耳を澄ますと、葉擦れとは違う響きがあるように感じられた。
俺は慎重に進んだ。
不用意に走ることはしない。
足元には木の根や石があり、見えない場所に穴が開いているかもしれない。
それに、ここは魔物がいる世界だ。
周囲への注意を怠るわけにはいかなかった。
しばらくすると、地面が緩やかに下っていることに気づいた。
草が少し増え、土も湿り気を帯びている。
水が近いのかもしれない。
俺は木々の隙間を覗き込みながら、さらに進んだ。
しかし、すぐに水場が見つかったわけではなかった。
音の正体が分からなくなり、同じような木々が続く。
焦りが出てきたが、俺は一度立ち止まった。
「落ち着け。戻れるようにしておかないとな」
目印になる木を確認し、来た方向を覚える。
もし水場が見つからなくても、ここまでの道を見失わないようにするためだ。
やがて、少し開けた場所が見えてきた。
まだ水そのものは確認できない。
俺は足を止め、周囲の音に耳を澄ませた。
今度は、さっきよりもはっきりとした音が聞こえた気がした。
水が流れている。
そう確信するには、まだ早い。
だが、手がかりは確かに近づいていた。




