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僕で大丈夫ですか?  作者: 誠也
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やるだけやってみよう

う、う~ん。

目が覚めてゆっくりと体を起こす。

ベッドを買ったおかげで寝ても体が痛くない。

ベッドから降りて庭の井戸に向かう。

井戸の水を汲み上げその水で顔を洗う。

はぁ~、スッキリしたところだが憂鬱過ぎる、なんせ今日はイリスの縁談の相手のユージーンさん達がやってくる日だ。

何でこう面倒ごとばっかりなんだろう。

台所に行くとトトが朝食を作っていた。


「トトおはよ。」

「おはようございます、ヤマト。」


そう、トトとヤマト。

この前イリスと一緒に居たときに、イリスが、「知り合ってけっこう経つのにまだその呼び方なの?」と言われたのでそれをきっかけに呼び捨てにし合うことになったんだ。


「いよいよ今日ですね。」

「う~ん、行きたくないな~。」


行きたくない、行きたくない、行きたくない、そう思いながら朝食を食べてるとイリスが迎えに来た。


「二人ともおはよー、今日はよろしくねヤマトくん。」


ニッコリと笑ってこっちを見る。

逃げないでねと圧をかけられているように感じるのは気のせいじゃない。

仕方ないと行くかとは思えないけど、騎士となって鍛えてるイリスから逃げられる気がしない、観念しよう。


「じゃあ行ってくるね。」

「行ってらっしゃい、後で結果を教えて下さいね。」


トトに見送られてイリスの家へ。


「そう言えばイリスのお父さんってどんな人?礼儀とか厳しい?」

「礼儀にはあんまりうるさくないよ、基本的には優しいからヤマトくんも普段通りでいいよ。」


イリスの家に着くと年配の執事さんに出迎えられた。


「ようこそウサミ様、私はフォルクス家に使える執事のダーティと申します。どうぞよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」


ダーティさんに案内されて家の中へ。

中は中央に階段があり、左右には対象に部屋が並んでいる。

その階段の前をうろうろとしてる高そうな服を着た男性がいた。


「もうお父さん、何してるの。」

「ああイリス、いやもうイリスの彼氏が来ると思うとお父さん落ち着かなくて。」


どうやらその男性がイリスのお父さんのようだ。

背が高くダンディーでカッコいいおじさんって感じだ。


「初めまして宇佐美大和と言います。」

「カイル・フォルクスだ。娘が世話になってるようだな。」


キリッとして見せてるけど、さっきのそわそわしてるのを見たらカッコよさが半減だ。


「いえいえ世話だなんて、僕の方がイリスにいつも楽しませてもらってますよ。」


イリスと初めて会ってからほぼ毎日トトと三人で仕事の休憩時間とか休日とか一緒にいて、遊んでいる。

まあ正確には僕は二人にいじられて遊ばれてるだけだけど。

それでも楽しいのは確かだ。


「そうか、だがイリスを泣かすようなことをしたら私は許さんから覚えていなさい。」

「もうお父さん、ヤマトくんはそんな人じゃないよ。」

「まあまあイリス、こういうのはお父さんとしてもちゃんと言っておきたいんだ。」


カイルさんはイリスに弱いようだ。

やっぱり娘というのはかわいいんだろうな。


「わかりました、イリスは泣かせません。」

「うむ。」


イリスを泣かすようなことはするつもりはないし、それよりも僕の方がイリスに泣かされそうな気がするな。

部屋へと移動しソファーに腰掛ける。


「そうだヤマトくん聞いているとは思うが今日はイリスと縁談の話をしていた相手がやって来る。元々は私が年頃のイリスにそういう話を全く聞かないのでいい相手がいないか探したのがきっかけだ。そこでシシリアのユージーン殿を見つけたのだ。ユージーン殿はシシリアでも位の高い貴族でよくできた方だったので、こちらとしてもフォルクス家をより大きくすることができ、イリスに対しても悪くない相手だと思っていたんだが、いや私の早とちりであった。縁談を申し込んだのは私からだが、イリスとヤマトくんのためだ、しっかりと断るつもりだ。」

「よろしくねお父さん。」


イリスはちょっと上機嫌だ。

ダーティさんが紅茶とお菓子を運んできて、それを頂きながら歓談を楽しむ。

話すとカイルさんはイリスのことばかりでホント親バカって感じだった。

しばらくくつろいでいるとコンコンと部屋をノックする音がした、ダーティさんだ。


「旦那様、マクレガー家の方々がお見えになりました。」


マクレガーというのはユージーンさんのお家の名前だ。


「通してくれ。」

「かしこまりました。」


ダーティさんが部屋にマクレガー家の人達を招き入れた。

ユージーンさんのお父さんと見られる少し年を取り、長い髭を生やしたケットシーとユージーンさん本人と見られる背の高い細マッチョのイケメンケットシー、それと護衛の兵士が二人だ。

ケットシーって始めてみるけど、やっぱり猫の顔をしていて尻尾もある。


「これはどうぞいらっしゃいましたバルトロ殿。」

「ふん、挨拶などどうでもよい。それよりもどういうことかカイル殿、貴殿から申し込まれた縁談ではないか、それを無かったことにしてくれなど我らをバカにしておるのか!」


バルトロさんは大変お怒りのご様子だ。

ムリもないか。


「落ち着いて下さい父上。私はもうよいと言ったではないですか。」

「ユージーンよ、お前は黙っていなさい。」


ユージーンさんはふぅっとため息をついた。


「バルトロ殿、縁談は私が早とちりをしたのが間違いでした。どうか無かったことにしていただけないか。」

「わしは納得いきませんぞ、それよりも我が自慢の息子であるユージーンとの縁談を断るほどの相手だ、余程の者であろうな!」


カイルさんは困っている。

これってやっぱり僕ですって言わなきゃいけないかな。


「ヤマトくん、堂々としてて。」


イリスが耳打ちする。


「初めましてバルトロ様、私が縁談の相手だったイリス・フォルクスです。そしてこちらが私と今恋仲のウサミ・ヤマトくんです。」

「こやつか!貧相な体つきのこんなやつがユージーンよりもよいと申すのか!」

「バルトロ様、あまりヤマトくんのことを悪く言うのは止めてください。ヤマトくんはこのスティリアの英雄なんですよ。」

「ふん、何を言い出すのか、こやつが何をしたと言うのだ!」

「ヤマトくんは先のバリアルとの戦争においてあのグラード王を討ち取り、スティリアを勝利に導いたのです。」


イリス、そのままだとバルトロのペースだよ、うまく発明の話に持っていって。


「嘘を申すな、グラード王ほどの豪傑をこやつが討ち取れるものか!」

「嘘ではございません。それにヤマトくんは頭もいいんですよ。戦争を起こしたバリアルの理由を知り、それを解決する策も考え、今はバリアルをも救おうとしているのです。」


よし、発明の話になりそうだ。

手作りの電池を出そうとしたときだった。


「・・・よかろう、その話を信じよう。ただし、そのヤマトとやらとユージーンが剣術の試合をして勝てばな。どうだ?」

「もちろんお受けします。」


イリスがどやぁという顔でこちらを振り返る。

イヤイヤイヤイヤ、何をするんだいイリスさん?

発明の話に持っていくんじゃなかったの?

僕とユージーンさんが剣術の試合?

勝てる見込みZEROじゃないか。

ボコられてものすごい反感買っちゃうよ、はぁ。

みんな揃ってイリスの家の庭に出る。

ダーティさんが訓練用の木の剣を持ってきたので仕方なく受け取る。

ユージーンさんもやれやれという感じで剣を受け取る。

そして少し距離をおいて向かい合った。


「ヤマト殿申し訳ない、私の父上が勝手なことをした。」

「いえ、もういいです。」

「しかし、あのグラード王を倒した腕、私も体験したい。本気でいかせてもらう。」


ユージーンさんやる気だ~どうしよう。

イリスの為にもやるだけやってみよう。

ダーティさんが審判を行う。


「始め!」


ダーティさんの合図とともにユージーンさんが視界から消えた。

どこだ?

マンガとかだとこういうときふっと横から出てくるんだよな。

一か八か、自分の左側面に向かって思いっきり剣を振る。

すると確かな手応えがあった。

ユージーンさんが僕の攻撃を剣で受け止めていたのだ。

当たった!


「私の動きを捉える者などそうそういないのだが、やるなヤマト殿。しかし、その剣ではもう試合はムリだな。」


持ってる剣をよく見ると大きく罅が入っていた。


「武器破壊により勝者ユージーン様!」


ダーティさんが宣言する。


「イリスごめん負けちゃった。」

「ううん、仕方ないよ。」

「ヤマト殿、お互い一撃しか見せていないがあなたの実力は確かだ。またいつか手合わせしよう。」


ユージーンさんと握手を交わす。

へへ、たまたま当たってよかったー。


「父上もヤマト殿の実力はわかったでしょう、この件は引きましょう。」

「うぬぬ、しかしだなユージーン。」

「イリス殿の心には私は無いようですし、私もできれば私を好んでくれる女性と結婚したいのです。わかって下さい父上。」

「・・・ああ、ああ、もうよいわ。ふぅ、カイル殿、此度の話は無かったことにしよう。ただし、一つ貸しにするぞ。」

「ありがとう、バルトロ殿。」


なんとか収まったようだ。

落ち着いたところで部屋に戻り、歓談が始まる。

先程とは違って空気がよくなった分話が弾む。

それからバルトロさんの相手はカイルさんに任せて、僕はイリスとユージーンさんと町を歩くことになった。

話をするとユージーンさんは本当に穏やかで真面目で、ホントなんでイリスは縁談断るんだろってくらいな人だ。

イリス今ならまだ間に合うかもよ。


「ヤマト殿はいつから剣術を始めたのですか?」

「始めたというか、この前の戦争で仕方なく剣を取ったって感じですね。ホントは戦いたくなかったんですけど、やらないとこっちがやられるってので必死だったから。」

「そうなんですね。ということは、まだ始めて間もないのにあの動きだったのですか?」

「あの動きっていってもたまたま当たっただけですよ、僕一か八かで剣を振っただけですもん。」

「なんと、そうでありましたか、ハハッ騙されましたな。」

「ユージーンさん、バルトロさんには黙ってて下さいね。」

「わかりました。また話が面倒になるのも避けたいですしね。」

「ありがとう。」


取り敢えず一件落着ってとこかな。

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