僕で大丈夫ですか?
イリスの縁談の件が落ち着いて、異世界に着てやっと穏やかな日々がやって来た。
仕事をしてお金を稼いで、休日にはトトやイリスと楽しく遊んでいる。
異世界の暮らしも大分慣れてきた。
元の世界の友達や家族に会えないのは寂しいけど、こっちでも知り合いは増えたし、もう帰れないことは気にしてない。
でも、もし元の世界に帰ることができるようになったらそのときは・・・。
まあ、トトがそんな方法は無いって言ってたしこのことはもう忘れよう。
最近は時間を見つけて剣術を鍛えたり、魔法を勉強している。
また戦わないといけなくなるかも知れないし、少しでも鍛えていた方がいいからね。
たまにイリスと遊び半分で剣術の試合をしてみるけど、こてんぱんにやられる。
イリスの実力を知って驚いたけど、スティリアの王国騎士の中でも突出してて、八つある騎士団の内の一つの副長なんだそうだ。
そのうち勝てるようになりたいな。
さて、今日も仕事だ。
今日の仕事は火薬の生成だ。
なんでもバリアルの水害対策でダムを作るのに火薬が大量にいるそうだ。
それなら頑張って作らないとね。
よく分からない材料を磨り潰して、樽に入れていく。
作業をしているとカレットさんがやって来た。
「二人とも火薬の生成ご苦労。ちょっと悪いんだが頼みごとをしてもいいかな?」
「なんですか?」
「実はな、ここスティリアより少し南にある湖でユニコーンを見たという噂があってな、それを確めたい。そこで私と一緒に調査に出てくれないか?」
「いいですよ。」
「私も大丈夫です。」
カレットさんと一緒の仕事って始めてだし、ちょっと楽しみかも。
「よし、では明日朝から出発するとしよう。湖で何泊かするかも知れないからしっかりと準備をしてくれ。」
カレットさんが部屋を出た後、切りのいいところで作業を終えて、今日は仕事を早めに切り上げた。
帰り道の途中、道具屋で寝袋を購入した。
地面に直よりはいいよね。
食料はお城の食品庫から分けてもらえばいいし、あと買っとかないといけないものはないかな。
「ヤマト、今日は何が食べたいですか?」
「う~ん、ピーマン肉詰めかな。」
「わかりました。ピーマンはあったからお肉買わないといけないですね。」
なんだろう、なんだか夫婦みたいって思っちゃう。
トトが僕の奥さんかぁ、なんかいいな。
ってトトが僕のこと男って見てくれてる感じしないしダメかな、はぁ。
そう言えばトトって彼氏とか好きな人っていないのかな?
こっちの世界に来てからトトとずっと一緒にいるけど、全然そういう話を聞かないな。
だったら僕にもチャンスはあるかも・・・でももしダメだったとしたらリスクが大きいよ。
一緒に暮らしてるし、同じ職場だし・・・ダメだったら、ブルークの所に行こうかな、なんて、言わない方がいいかな。
ー翌日ー
城の門の前に僕達は集合した。
背中のリュックは道具をかなり詰め込んでいるのでちょっと重い。
「では行くとしよう。トト、身体強化魔法を頼む。」
全員に身体強化魔法がかかったところで出発する。
馬車とか使わないのかなと思ったけど、ユニコーンは警戒心が強いから馬車は目立っていけないらしい。
それなら仕方ないよね。
目指す湖はスティリアから十キロくらい南にある森の奥にあるらしい。
思ったより近くで、一時間半くらいでその湖についた。
湖があるところはキレイなところでピクニックにはいい感じだ。
僕達は湖から少し森に入ったところに隠れてユニコーンが現れるのを待った。
「なんだかワクワクしますね。」
「うん、ユニコーンってどんなのかな?」
「フフ、ユニコーンはとても美しい生き物だ。それと今回は観察だけだぞ、間違っても傷付ける様な真似はするなよ。」
「「わかりました。」」
三時間、六時間、九時間、待っても待ってもユニコーンは出てこない。
やっぱりなかなか見れないものなのかな。
辺りはすっかり暗くなり空には月と星が光っている。
カサカサ、カサカサ。
茂みを掻き分ける音がする方を見るとぼんやりと光が見えた。
「来たぞ、二人ともあれがユニコーンだ。」
全身が光に包まれ白く、キレイな毛並みと神々しい角を生やしたユニコーンが現れた。
ホントキレイだ。
ユニコーンは湖に近付くと顔を下ろし、水を飲む。
すると、湖面が光った。
「浄化だ。」
「浄化ですか?」
「ああ、ユニコーンには水を浄化する力がある。今この湖の水は全て聖水になったんだ。後で採取しよう。」
茂みの中からじっと観察する。
ホント神秘的だ。
!
ユニコーン目掛けて大きな網が投げられる。
ユニコーンが網に捕らわれると、茂みから男が四人出てきた。
「盗賊だ!二人ともユニコーンを守るぞ!」
「「はい!」」
魔法で水の球を飛ばし、盗賊を攻撃する。
四人の内、二人に直撃し、気絶させられたようだ。
しかし、残りの二人がこっちに気がついて向かってきている。
「私に任せろ。ロック!」
光の輪が盗賊達を捕らえた。
盗賊全員を押さえたところで、ユニコーンの助けに向かう。
網から解放するとこちらにすり寄ってきた。
ふふ、くすぐったいや。
「ほお、ユニコーンにしては珍しいな。」
〝礼を言う人間。〟
「えっ、今のって?このユニコーンが?」
〝そうだ。〟
「ユニコーンは念話を使うと聞いたが本当の様だな。」
なんかすごいや。
「君は前からここに住んでいたのかい?」
〝いや、ここより遠く東の方から旅をしている。つい最近ここに来たばかりなのだが先程の輩の様な者にまた襲われても敵わん。またすぐ旅立とうと思う。〟
「そうか、旅の無事を祈らせてもらうよ。」
〝人間、礼の品を授ける。手を出せ。〟
カレットさんは言われた通り、ユニコーンの前に手を出した。
するとユニコーンは角を光らせ、カレットさんの手を光が覆った。
光が収まるとカレットさんの手の中に指輪が二つあった。
〝では、私は行く。さらばだ。〟
そう言うとユニコーンは去って行った。
「トト、ウサミくん、この指輪を二人にあげよう。」
「えっいいんですか?」
「ああ、私は夫からもらった指輪があるし、二人の方が必要だろ?」
「ど、どういうことですか?」
「何を言ってるんだ、ユニコーンの指輪と言えば愛し合うものが付ける物だろ?」
「えっええーー!」
「何?違ったのか?私はてっきり二人が結婚するものだと思っていたのだがな。」
「トトが奥さんだなんて僕は嬉しいですけど、トトがどう思ってるか・・・トト?」
横を見るとトトが顔を真っ赤にしている。
「私もヤマトが旦那さんっていいなって思ってたんです。」
「なら何もないじゃないか。ほら、ウサミくん。」
「トト、僕で大丈夫ですか?」
「はい、だから自信持ってください。チュッ。」
はわわわわ、トトが僕にキ、キスを!!!
思考停止。
「幸せにしてくださいねヤマト。」
「うん。」




