第四話 素材を求め洞窟へ
「親分、この兄ちゃん見た目よりかなりつええよ! 幾ら若いからって冒険者相手はやっぱりマズい!」
「うっせえ!! てかこいつしつけえぞ!」
俺は今、三人で町の路地裏にいる。
「おらおら、どうしたどうした!」
何故こんなところにいるのか。
「ひっ、くそがっ!」
カキーンカキーンと剣を弾く音が辺りに鳴り響く。
「―――甘いな。 『ファイア』!!」
叫ぶと同時、俺の人差し指の先から野球玉ぐらいの火の玉が出て、目の前の相手の足元を焦がす。
何故こんなことをしているのか。
「おわっ!? あ、あぶねえ!」
相手は焦って大きく態勢を崩す。
「隙だらけだぜ?おらよっと」
俺は相手のズボンの真ん中部分に、器用に切れ目をいれる。
すると相手は大慌てで、
「ひ、ひいっ!今日のところは勘弁してやらあっ!」
そう言い残し薄い財布を捨てて、相手は子分を連れて逃げて行った。
何故こんなことをしていたか。
俺が町を見回っている際に、路地裏に入ったのだが、そこで柄の悪い二人組にここを通りたいのなら金を払えと脅された。
俺は当然払いたくはないので無視して通ろうとするが、普通そこは払うか立ち去るかがお約束だろ、とつっこまれて通せんぼされたので、俺は剣を抜いて、お前らに払うお金なんて用意してない、勝負して勝ったら通っていいってことにしてくれないかと尋ねた。
すると親分の方が舐めんなよと言いながら、剣を抜いてきたので戦っていたのだが、不利だと感じた親分が逃げだそうとしたので、最初に理不尽にも俺に金払えと要求しておいて、そっちが負けたら払わないなんてないよな、と追いかけ回していたのだ。
決してカツアゲではない。俺は勝負で勝った時の、得るべき対価を求めただけなのである。
しかしこの世界にもしっかりこんな奴らがいるんだな。
「たった2000ノールか。 しけてんなあ・・・・・・」
今の俺の姿も言えたものではないが。
あのクエストから3日が経ち、それからそれなりにクエストもこなし、俺のレベルは4へと上がっていた。
スキルポイントもある程度貰えたので、火属性の魔法と回復魔法に振り分けた。
振れば振るほど威力が上昇し、ある程度まで振ると上位の呪文も覚えられるようになるらしい。
やはり戦闘をするにあたって、魔法を混ぜていけたら戦略の幅は広まりそうだし、回復も微量でも序盤は重宝するはずなので、念の為に振っておいた。
一儲けし、今日もクエストを受けに行こうかと、ギルドへ向かう途中。
「あらこんにちは、トウヤさん」
「あ、どうも」
パロマとシルクの母親、ピスカと出会った。
手にバッグをぶら下げているのを見るところ、買い物にでも行く途中なのだろうか。
「先日、パロマとシルクと一緒にクエストに行ったそうね」
俺はビクッとして、顔を引きつらせる。
ピスカと初めて会った時も、二人が外に出ていたところを叱っていたのを思い出した。
もしかしなくても、怒っているのだろうか。
「あ、怒っているわけじゃないから、そんな顔しなくていいのよ。 帰ってきたら二人ともかなり疲れていたから心配はしたけど、とても嬉しそうだったというのを伝えたくてね」
なんだ、それならよかった。
てっきりこのかーちゃんに、街中で公開処刑をされるのかと思った。
「それで・・・・・・急ぎでなければ、一つ聞いてもいいかしら?」
その質問に俺はどうぞと言い頷くと、
「パロマから聞いたのですが、トウヤさんはしばらくしたら町を出るそうではないですか。 目指している場所とかはあるのかしら?」
なんだろう、お使いでも頼まれるのだろうか。
「いや、特にないですよ。 それどころか世界中を見て回りたいと思っています」
地球で世界中と言うと、広すぎるしお金はかかるしで、とてもする気にはなれないのだが、この異世界の地図を見たところ、不可能ってわけでもなさそうな広さだった。
色んなモンスターと戦ってみたいし、この世界で一生を暮らすならやっておいて損はないだろう。
俺のぶっ飛んだ考えを聞いて、ピスカはしばらく悩んだ後、意外な答えが返ってきた。
「そうですか、その旅にもしもお邪魔にならなければ、その、・・・・・・パロマとシルクも一緒に連れていってもらえないかしら」
「えっ・・・・・・?」
いきなり何言い出すんだこのかーちゃん。
あいつらはまだまだ子供なのに危険すぎやしないか。
確かに最近のクエストも、一人でやっているより、あいつらがいた方が楽だったなと思いはするけど。
そもそも旅となれば、行って帰ってくるだけの、比較的安定した作業のクエストとは全く別物だし、何かあった時も責任が取れるかと言われたら・・・・・・。
俺が断ろうとした瞬間―――。
「あっ 母さんとトウヤじゃん! やっほー!」
遠くから駆け寄ってくるパロマに声をかけられた。
勿論、シルクも一緒だ。
「こんにちは、またクエストですか?」
「ああ、そうだよ」
すると二人は興味深々に、
「一緒に連れて行ってくれよ!」
「私もお願いします」
二人とも目を輝かせて言ってきた。
くっ、こんな純粋そうで可愛らしい目をされたら、一緒に連れて行ってやらざるを得ない!
「あの日から二人とも、トウヤさんとクエストへ行けないかとずっとソワソワしてたのよ。 余程気に入っちゃったのね」
ピスカも出会った時前と打って変わって、外に出ることを別に止めようとしないようだ。
「その、話を戻すんですけど、何故二人を俺の旅へ同行させようと思ったんですか?」
ピスカはちょっと待っててねと言うと、財布から小銭を取り出し、パロマとシルクに手渡しジュースを買いに行くように促した。
二人が離れていくと、ピスカは再び話を始める。
「実は、パロマとシルクにはね、いつか二人でとある国まで行ってもらわなくちゃならないのだけれど、どうしても私は不安で二人を町の外に出したくなかったのよ。 それでトウヤさんとのクエストの話を聞いてね、あの子達は私が思っているよりもずっと強いのだとわかったの。 それにトウヤさんは世界を回るって言うじゃない? だからこれから大人になるあの子達に、世の中の様々な勉強を兼ねてお願いしたいと思ったのよ」
なるほど、ちゃんと明確な理由があるわけか。
でも一つ引っかかるところがある。
「・・・・・・ピスカさんは、一緒に行かないのですか? ピスカさんが同行すれば安全だと思うのですが。」
「私はこの町でやらなければいけないことがあるから、一緒に行くことはできないの。 きっとあの二人ならトウヤさんに劣らず強くなるはずよ。 お願いできないかしら?」
自信有り気にあいつらが強くなる、と言うのが気になるが、シルクの話によるとピスカはかなり高レベルの上級魔法使いらしいし、この人の目は信用してもいいのだろう。
俺も元々一人で旅に行こうとなんて思っていなかったし、一人っ子だった俺には弟と妹ができたように感じて落ち着くんだよな。
「わかりました、いいですよ。 それと、その国って普通に旅をしながら行くと、どれくらいかかりますか?」
「ざっと、3年くらい・・・・・・かしらね」
おい、結構あるじゃないか・・・・・・。
翌日、俺は剣を鍛えるべく、町から一番近いダンジョンへと向かっていた。
鍛冶屋のおっちゃんが言うには、装備に素材を埋め込ませて、強度を上げられるとのこと。
手始めにダンジョンの浅い層で生成されているという、素材の中ではお手軽な鉄鉱石を取りに向かっていた。
「どんな敵に出会えるか楽しみだね、トウヤ!」
「・・・・・・ああ、そうだな」
そう、パロマを連れて。
シルクは昨日のクエストで出てきた、人並みに大きいミミズの影響で、今日はとてもモンスターを見る気分になれないらしい。
俺も流石にゾッとしたのだが、パロマは気持ち悪い系は平気なようで、俺の回復魔法を受けながらスパスパっと切り裂いていた。
こういう勇敢(?)な面は作戦で何かと使えるかもしれないな。
「よし、じゃ潜入するか」
「おおー!」
ダンジョンの前までついて一服した俺たちは、ダンジョンへと潜入していった。
懐中電灯なんて物は無いので、カンテラを掲げながら前に進んで行く。
中々味のあるシチュエーションだ。
目指すべき層は地下2階なので、素早く行って目的の鉄鉱石を拾い、素早く戻ってくればいい。
「いてっ、痛い痛い! ビッグバットか!」
前方に蝙蝠の様なモンスターが飛んでいる。
ビッグバットとは、洞窟の上層に生息するメジャーなモンスターの一種で、一般の蝙蝠より5倍ほどの大きさがあり、その大きな翼で積極的に攻撃を仕掛けてくる攻撃的な生物である。
翼の攻撃の威力は、浮気中なのを彼女に気付かれて、思いっきりビンタされた程度の威力らしい。
鍛冶屋のおっちゃんがモンスターの本を開いて教えてくれたのだが、最後のはもっといい感じの例えはなかったのだろうか。
「くそっ! お返しだ、くらえ『サンダー』!!」
俺の手の平から放たれた電気魔法が、ビッグバット達に襲い掛かり、連中はバタバタと宙から落ちる。
それをサクサクとパロマが斬りつけて退治していく。
「いい調子だパロマ」
「こんなのチョロいもんだぜ! というかトウヤ、いつの間に雷属性魔法も覚えたんだな!」
「まあな。 昨日レベルが上がったから、属性が多いと有利だろうし振ってみたよ」
俺達は順調に地下2階へと進んで行く。
「お、あれはケーブマイマイか」
洞窟の上層に生息する、ジメジメしたところが大好きな蝸牛型モンスターである。
動きは遅いが、甲羅による防御力は並みの剣では傷一つ付けられない。
その硬さ故、下手な剣の当て方をすると、逆に剣を折られるらしい。
のだが、
「・・・・・・おっちゃんの本に載ってた通りだ。 素通りできるね」
「・・・・・・みたいだな」
防御が高い反面、攻撃性はそこまで高くなく、刺激しなければ大丈夫らしい。
通りかかるケーブマイマイを素通りしながら、俺たちは進んで行く。
「トウヤは、モンスターと戦ってて楽しい?」
辺りを警戒しながら歩く中、パロマからそんな質問が投げかけられる。
「うん、まあ楽しいよ。 昨日のでかいミミズみたいのとか、こいつらとかの気持ち悪いのとは、戦闘はなるべく避けたいけど」
「そっか、俺もトウヤと一緒に、色んな敵と戦えて楽しいよ!」
パロマは笑顔でそんなことを言ってくる。
初めてのクエストで、一人でゴブリンに突っ込んだこともあって少し不安に思っていたが、昨日といい今日といい、普通の戦闘ともなればかなりいい動きをしてくれる。
ピスカの言っていた通り、俺なんかよりも強くなっちゃうかもしれないな。
「パロマは・・・・・・」
頼もしくて助かるよ、と言おうとしてパロマの方を振り向くが、姿が見えない。
「えいっ!」
パロマの声と共にゴンッ、と鈍い音が響き渡る。
振り返って見てみると、パロマがケーブマイマイの甲羅を蹴っていた。
蹴られたケーブマイマイはビクともせず、こちらに襲い掛かってくる―――!
「おいっ! 何怒らせてんだよ!!!」
「まん丸いから、蹴ったら転がったりしないかなーって」
「馬鹿野郎! 逃げるぞ!!」
俺たちは洞窟の奥へと走りだした!
見返してみると、かなり誤字が多くてへこみます。




