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異世界行きはこちらです  作者: 神に選ばれし村人
第二ノ三章 恐怖と勇気
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第三十七話 数字上の強さ

 夜も本番を迎える頃、俺達は四人で食堂の一つの机を囲いパンを撮んでいる。

 次の日にはこの町を出ることになる。

 今後についての話し合いを行っていたのだ。




 あの昼の後、俺達は目標のシルバーベアを討伐し無事に訓練を終えることができた。

 聞いていた通りで動きが鈍く、今の俺達の相手では無かった。

 結局苦労した事といえば荷物持ちと狼の解体。

 ・・・・・・苦労したの俺だけじゃないかこれ。


 ただ今回の作業は練習の内になるとは実は思っていない。

 大自然の中で生活する上で、食よりも重要な位置付けになるであろう事がもう一つある。

 平和な世界とは違い、この世界においてはとても危険だが、食と同じく必ず行わなければいけない事。 


 ・・・・・・言うまでもなく睡眠である。


 人間誰しもが睡眠という物は取らざるを得ない事である。

 モンスター側は昼行性タイプ、夜行性タイプ共に存在しているので、安全な時間帯という隙が見当たらない。

 加えて人間は活動できる時間に限界があるので、いつかは必ず休む、寝なければならない。 

 その寝るという行為を行っている瞬間が無防備になり、大変危険なのである。 

 これも訓練として含みたかったのだが、雪原の真ん中で一晩過ごすとか冗談抜きで凍死の危険があるのでやめておいた。


 考えた結果の対処法としては、こちらへの見通しの悪い場所から探し、夜は見張りを付けてしっかりと安全を確保するということになる。

 生憎あいにく俺達は数十分で建物を建てられるほどの、どこかのゲームの様な技術は勿論持ち合わせていない。

 運悪く場所が悪くても、その場で何とかするしかないだろう。

 一見場所確保だけでいいのかと思いがちなのだが、これについてはミナキが一つ提案をしてくれた。


「我の持つ聖水を己の体に振り撒けば解決だ。偉大なる暗黒の加護により、下等な魔物共は近づくことを許されない」


 だそうな。

 流石はプリーストスタイルを通しているだけはある。

 場所さえ確保できれば何とかなりそうだ。

 見張りは一日ごとに一人ずつのローテーションで行うことに決まった。 

 言うまでもなく見張り担当はその日の体力低下が予測されるので、戦闘をなるべく控えさせるような形になるだろう。

 大変だろうがこればかりは仕方がない。




 荷物持ちについても話し合った。

 これは俺とミナキ、パロマとシルクで一日ごとに交互に持つことにした。

 余計な物ばかり持ってきているミナキに一つは毎日持たせたいところなのだが、聖水の様に使いそうな物も含まれているだろうと仕方なく我慢する。

 イレギュラーと名ばかりの力ステータスが多少はあるミナキはともかく、シルクは俺でも重たかった物を持たせても大丈夫なのかと聞いてみた。

 

「い、いくら魔法使いだからと甘く見てはいけません。こう見えて私もしっかりとステータスは上がっていますから・・・・・・」


 と苦笑しながらオドオドと言ってきた。

 夜の疲れている時間で言い合うのも何なのでそういうことにしておいた。

 持てなかったら三人で何とかするということで。





 ついでに今後の事というわけではないが、それぞれのカードを拝見させてもらった。

 パーティーのまとめ役である以上、メンバーのレベルやステータスを把握しておくのは重要である。

 

 パロマはトゥロリテの町を出た時と比べ十二は上がっており、レベル二十二へとなっていた。

 クラスは変わらずナイトのままだ。

 ナイトの文字に触れると、四角いオレンジ色に囲まれたナイトの文字がカードの前に浮き上がり、その右隣に上下二つの四角い灰色に囲まれた文字が浮かび上がった。

 上はソードナイト、下はバーサーカー。

 恐らく中位と呼ばれるクラスの職名だろう。

 バーサーカーが攻撃主体と見て、ソードナイトがバランスってところだろうか。

 好きな職を選べるとは羨ましい物だな。

 カードの方のナイトの文字にもう一度触れ、浮かび上がっていた文字を戻す。


 次にステータスの方を見てみた。

 力は俺のおおよそ五割増しくらいだろうか。

 この世界だからまだわかるものの、一般人としてこいつに力が負けていたら泣くところだろう。

 

 カードを裏返し、スキル振りを見てみる。

 ポイントは剣の熟練度向上や攻撃上昇等の初期に存在していた選択肢は消え、ナイトというスキル名のみになっており、それのみにポイントが振られていた。

 特技となる剣技も、見たことのない技名が並んでいた。

  

 最後にカードを再び表に戻し、表面の下の方を見る。

 ここには空欄があり、何かを自由に書ける場所がある。

 よくある一言コメントの様な奴だ。

 俺はそういうのをあまり拘る方では無いので自分の物には何も書いていない。

 パロマも今まで見せられた時は何も書かれていなかったのだが、今回見せてもらった時はぎっしり埋まっていた。

 ゲームで言うならこういう物は名刺の様な物であり、コメントもむしろ公開する為に書くものだという感覚で軽々と見てみた。

 肝心の内容は・・・・・・。


『トウヤにもっとレベルを上げて成長してほしい。いつも俺ばかり頑張っている気がするから強くなってほしい。リーダーが弱いとか知られたら恥ずかしいと思う。だから頑張ってほ』


 ・・・・・・少し俺の心に来るような事が書かれていた。

 楽しそうに戦っていると思ったらこいつ結構裏があるじゃないか。

 弱いって言うな!

 言いたいことがあるなら直接言え!

 文字入りきらなくて途中で終わってるし。

 最後の一言で頭が一杯になってしまったのだが、それについて何も言うことができないので無言でパロマへとカードを返した。



 次にシルクの物を借り、見させてもらう。

 シルクのレベルは十九、前と比べ十は上がっていた。

 クラスは下位クラスのマジシャンだ。

 同じくその文字に触れてみると、今度は水色で囲まれた文字が浮かび上がる。

 マジシャンの先には灰色で五つの文字が出てきた。

 一番上がメイジ、二番目がウィザード、三番目がプリースト、四番目はテレポーター、最後はダークマジシャンとなっている。

 魔法使い系は詳しくないのだがメイジとウィザードが純粋な攻魔、プリーストが回復補助魔、ダークマジシャンが暗黒系統の魔法を扱う職だろう。

 テレポーターは戦闘能力を捨て、主に移動専門や転送屋みたいに稼ぎに使う場合にこれへとなる人が多いと聞く。

 剣士と比べてかなり候補が多い。 


 ステータスは魔力は俺より四倍ほど高かった。

 高すぎて比べ物にならないな・・・・・・。

 裏のポイント振り分けの欄を見てみると、パロマとは違い様々なスキル名がズラッと並んでいた。

 これを見る限りは、剣士とは違って魔法使いは晩成型だろうか。

 魔法使いは属性への振り分けでそれぞれ覚えられる魔法が決まっており、剣と比べて種類が多いので貰えるポイントも多いらしい。

 その中でシルクは炎、氷、雷に振り分けていた。

 炎と雷は下位魔法、いわゆる二つ目の魔法まで覚えているのだが、氷魔法が重点的に振られており、もうすぐ三つ目に届きそうだ。

 ここの振り分け方によって次の職も決まっていくのだろう。

 回復魔法や補助魔法、暗黒魔法等から念力や転移魔法の欄もあったが、その辺りに関しては全く振られていなかった。

 純粋に攻撃魔法のみへと振り分けている。


 最後は勿論表へと戻し、下の欄を見てみる。

 するとパロマと同じくシルクもなにやら書いている様だった。


『トウヤが私の下着を見る癖というのはどうすれば治るのでしょう。そういうセクハラさえ無ければまともな人なのですが』


 ・・・・・・この兄妹、俺が見ることをわかっていてわざと書いているんじゃないだろうな。

 見ようと思って見ているわけではない。

 そこにあるから見てしまうんだ・・・・・・!

 そんなことはとても言うことができないので、シルクのカードも無言で返す。


 二人とも言うまでもなくステータスは当然の事、技や魔法の豊富さも俺より上だった。

 強いに越したことはないがここまで他人に劣等感を感じたのも初めてだ。

 パロマの言うように俺自身も強くなりたいが、こいつらがここまで成長している方が逆に異常だと思う。

 っと、このことは後で話そうかな。

 今度はミナキのカードを拝見させてもらう番だ。



「――ちゃんと手拭いてよね。・・・・・・はいどうぞ」


 シルクにカードを返した後、俺がパンを食べていたのを見逃さず、そのまま手を差し出してきた俺に注意をするミナキ。

 意外と細かい奴だと思いながらも仕方なく手元の布巾で手を拭き、カードを受け取る。

 実はこいつのカードはあまり見たいとは思わない。

 それについての事も後にしよう。

 

 クラスは勿論名だけのイレギュラー。

 イレギュラーの文字の横にはかっこで囲まれ剣・魔法、と書かれている。

 レベルは十九、出会った時と比べて二上がっていた。 

 前も言っていたのだが、やはり前線に出ないとなると上がり辛いのだろう。

 それとパロマとシルクの成長が早いだけで、これぐらいが普通なのだと俺は思う。

 ステータスは俺と比べて全て高く、魔力が微量だが他のと比べて高い数値で引き離されている。

 もうここでわかってしまう。

 悲しいことに俺のレベルは一番低いということだ・・・・・・。

 

 後ろのポイント振り分けの欄はカードに書かれている剣、魔法の紋章をまず選び、そこからズラッとスキル振り候補がカードに出てくる。

 振り分けられる物はパロマやシルクと同じなのだが、特技を覚える為の必要なポイント数が高くなっている。

 両方振るなんて非効率なことをする人は滅多に多いだろうし、これについては理不尽さしか感じない。

 それに必要数が高いならそれこそ両立するのが困難というわけだ。

 こういう設定にした人はかなり頭が悪いのではないのだろうか。

 

 魔法の方に触れてみると、振られている物はやはり補助と回復の二つだというのがわかった。

 バランス良く、というよりは回復に偏っている感じか。

 もう少しでサンデニスが使っていた様な治療魔法が習得できそうだ。

 ここでもしシルクが回復全振りだったら、という想像はしておかないでおこう。

 思わず可哀想な奴だという目で見てしまいたくなる。

 自分が言える事でも無いのだが。


 一応剣の方も触れてみる。

 するとそこには、最低限のごく少量のポイントだけが熟練向上に振られていた。

 序盤はやはり俺と同じ感じで剣に振り、そこから何とかパーティーを組んだりしてレベルを上げたのだろう。

 今の魔法メインの状況でこそ無駄だと思いがちだが、魔法を数発しか撃てない序盤でなら合理的な方法なのである。

 でもやはりこいつには攻撃は任せられないか。

 俺よりステータスは高いのに少し勿体ない。

  

 俺と同じクラスなだけにあまり期待はしておらずも、がっかりしながら表へと返す。

 最後はこいつの書き込む欄も拝見を・・・・・・。


『我は最高位の暗黒司祭を目指し精進する者。体に宿る黒き力。この力により、我が目的を遂行させる事も可能。暗黒で全てを飲み込み、人類の頂点へと君臨するのだ。byMINAKI お母さんに会いたい』


 こいつの頭の中が既に暗黒に侵食されている。

 そんなに黒が好きなら赤と青のカラコン外した方がいいんじゃないのか。

 後最後の一言が切なすぎる!

 

 色々と痛々しいので俺は目を逸らしながらミナキにカードを返した。

 首を傾げながら不思議そうに受け取る。

 その行為に自分の痛々しさを自覚していないんだなと思わされる。

 お願いだから俺に何も言わせないでくれ・・・・・・。



「トウヤのカードも見てみたいな。どんな技を覚えているか気になるし」

「そ、そんないい物じゃないぞ!見ても何も面白くないぞ」


 もっともな提案をしてきたパロマに、見せたくないが為に言い返す。

 きっと見せたら恥をかくことになるだろうと思ったからだ。

 しかしシルクとミナキも加えて言ってくる。 


「私達もリーダーの戦力を把握しておく必要があるはずです」

「そうよ見せなさいよ。別に後ろめたいことが書いてあるわけじゃないんでしょ」


 三人はじりじりと俺に顔を寄せてくる。

 他人のカードを見ておいて何だが、本当に見せたくない。

 しかしこうしていてもらちがあかないので仕方なくポケットから差し出す。

 真ん中に座っているミナキがそれを受け取り、三人でまじまじと見始めた。

 俺はふてくされパンをもう一つ撮んで食べ始める。

 

 

 俺のクラスはミナキと同じ、言うまでもないだろう。

 レベルは十二だ。

 トゥロリテを出た時のレベルは七なので、五上がっているのだが三人と比べて圧倒的に低い。

 恐らく原因はパロマとシルクの成長がやはり早すぎる事。

 ミナキに関しては出会った当初からレベル差があったからだろう。

 そしてとどめには剣の損失だ。

 アデルマンドと戦った後、一か月間何もしていなかったのが一番大きい。

 そんなわけでダントツでレベルが低いという事態になっていた。


 スキル関連はパロマと似た感じで熟練と特技に振っている。

 後は序盤で魔法にも少し。

 バランスがいいと言えば聞こえはいいのだが・・・・・・、実際は中途半端な感じになってしまっていると言わざるを得ない。

 魔法は最近全然使わないし、俺のヒールもミナキの加入から全く出番が無くなった。

 おまけにステータスも最底辺ときたもんだ。

 そんなこんなでミナキには特に見せたくなかった。


 俺が持ったパンを食べ終わる頃、三人はカードを見終わったのか俺をジッと見つめる。

 そして三人は顔を見合わせ、俺へと同時に放った。


「「「・・・・・・ちょっと弱すぎる気が」」」


 

 言わないでもらえると助かったんだけどな!

 はあ、どうして俺冒険者をやっているんだろう。

 両手で頭を抱えながら初めて切実にそう思わされた・・・・・・。

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