第二十九話 作戦会議
フラットの食堂で、俺達は朝から大量に用意された料理をひたすらに貪っていた。
帰りは転送魔法でサンデニスに送ってもらい、無事に帰ってくることができた。
町に戻ってきた俺達は、アデルマンドを倒したことで人々に称えられた。
多大な歓声を浴びるその瞬間は、少しだけゲームの主人公の様な気分になれた。
町は所々の建物が半壊しており、復旧工事を行っている光景が見られた。
突然の出来事だったので、こればかりは免れないだろう。
この世界の人は逞しく、何があっても困らない様に専門の職人を通して、普通の住民でも工具の使い方をしっかりと覚えるのだそうだ。
そして実際の作業でも専門の人が住民の人々の指揮をとって修復していく。
この世界の魔物との戦闘以外での人同士の団結作業だ。
俺も冒険が終わればいつか町に住んで、こんなことをするんだなと思いながら見ていた。
真っ先に修復を終えていた宿屋へと迎えられ、先に冒険者達にアデルマンドを倒したことと、町を防衛した礼にと料理を振る舞われていた。
「いやー今回は危なかったな。物凄い顔して追っかけられて死ぬかと思ったよ」
俺がため息をつきながらそう言うも、パロマとミナキは目の前の料理に夢中の様だ。
「ん?そうねー、トウヤの奇声には噴き出しそうになっちゃったわよ」
「んぐっ。その後も俺の目の前で物凄い大きな声出してたしね。喉大丈夫?」
「それは本当か。私ももう少し早く来るべきだったな」
あれこれの話より真っ先に喉の心配をされる俺。
少し複雑だなあ・・・・・・。
机には俺とパロマとミナキ、そしてサンデニスの四人で座っていた。
町の人々はサンデニスのことを魔王だと言っても、町を救う魔王なんていないと冗談としか受け取らなかった。
こいつ自身はその方が好都合らしいのでこいつもそれで通している。
俺もこの場にいることにあまり違和感を感じなくなってきた。
アカリは羨ましそうな目で見ているのだが、そもそも食べられないので無理だと宥めている。
そしてそんな中、シルクだけは別の机の席に座り、料理も取らずに一人で座っていた。
かなりの時間氷山(?)に籠っていたのに腹が空かないわけがない。
俺は料理を持って、シルクの机の方へと向かった。
アカリが料理を直視しながらついてくるのが少しうっとおしい。
「どうしたシルク。アデルマンドに魔法が効かなかったことを気にしているのか?」
俺が料理の皿をシルクの目の前に置いて聞くと、シルクは顔を俯かせ言い辛そうにボソボソと。
「それもあるのですが。あの魔王の近くには行きたくなくて・・・・・・」
ミナキやパロマもそうだが、俺達はあいつのことを一応魔王ということで認識している。
氷山で帰る前にパロマが勝負を挑もうとしていたのだが、消されかねないので必死に止めたものだ。
あれか、やはりあの人間離れした容姿だと、変わり者のミナキは別として、真面目なシルクみたいな女の子にとっては近づき難い物なのだろうか。
割と憎たらしい程のイケメンではあるのだけど。
「まあ気持ちはわからないでもないが・・・・・・。でも食う物はしっかり食っとけよ」
「私は大して活躍していないので大丈夫です。なのでトウヤさんが・・・・・・」
シルクが皿を持って俺の促しに反対して返そうとするが、その行為を裏返すようにお腹の音が鳴る。
それを聞いてシルクの顔が赤くなる。
口ではなんと言おうと体は正直なんですよシルクさん。
「何を言ってるんだよ。山の中をサクサク進めたのはお前のおかげだぜ?受け取っとけって」
それを聞いて観念したかの様に皿を机に戻し、机の隅のナイフとフォークを取る。
「トウヤさんの作った料理の様な言い方をしないでくださいよ。いただきます」
俺に反論しながらもようやく食べ始める。
道中もそうだが、最後もシルクの魔法が注意を引いてくれたおかげで俺は死なずに済んだのだ。
もっと堂々としておけばいいのに、変なところで真面目なんだもんなあ。
「そうそう。しっかり食べないと成長しないぞ。色んな意味で」
「! よ、余計なお世話ですよ!」
「うわっと!」
俺の意味深な発言に過剰反応しフォークを俺に突きつけてくるが、慌てて体を仰け反らせて避ける。
少しからかっただけなのに危ないことをしやがって。
「それと後で今後のことの話し合いするからさ、食べ終わったら嫌かもしれないけど、お前もこっちに来てくれよ」
「・・・・・・わかりました」
ひとまずシルクを説得し、俺も自分の席へと戻る。
確かにあいつは今はああだが、特定の人間なら容赦なく殺している人々の敵だ。
俺もしっかりそれを踏まえた上で、奴と関わらなきゃいけないな。
あれ?俺の席に先程頼んだばかりの物がない・・・・・・。
ってよく見たらミナキがそれをせっせと口に運んでいた。
こいつ俺の注文した料理を勝手に食いやがって!
「勝手に人の物を取るな!意地汚い奴め。すいませーん!さっきのもう一皿お願いしまーす!」
俺はミナキを軽く殴りながら注文をする。
しかしミナキはそれを無視してせっせと食べる。
・・・俺達に比べれば大して動いてないのにここまで必死に食べるとは。
こいつは食べるのが余程好きなのだろうか。
今後の食費に大きく関わってきそうだ。
食事を終えて全員が机へと集まる。
サンデニスを除いた皆が眠そうに目を擦る。
それもそのはず、昨日の昼からずっと起きていて、とうに朝を回っているのだ。
手早く済ませて俺も眠りにつきたい。
シルクも行き辛そうにとぼとぼと来たのだが、それを察したのかサンデニスは真ん中から端の席へと座り直す。
大人の対応というやつだろう。
やっとのことでシルクも席に着いて全員揃う。
俺が真ん中、その右にシルクが座る。
向かい側の真ん中にミナキ、俺から見て右にパロマ、左にサンデニスが座っている。
「えー、これより対幹部討伐隊による作戦会議を始める」
「何そのダサい名前」
それらしく気取りながら話す俺に対して、一名からのツッコミが入ったがそれを無視して続ける。
「ではまずシルク殿の意見から聞こうか」
「まずはトウヤの変態癖を直した方がいいと思います。今後の冒険にとって重要な事かと思われます」
シルクは俺の肩を指でつつきながら言ってくる。
な、何を言ってるんだこいつは。
確かに見れるのならつい見ちゃうけど、それは幹部討伐とは関係ないから!
「同意だな」
サンデニス、お前も賛成するな!
というかこの二人、割と初っ端から息ピッタリだな。
「き、貴重なご意見をありがとうございます。修正を前向きに検討していきたいと思います・・・・・・。次!サンデニス!・・・お前は今後どうするんだ?」
そういえばこいつはどう行動していくのだろうか。
一番気になるところかもしないな。
サンデニスは腕を組んで目を瞑り。
「私自らで幹部を止めたいところだが、恐らくもうゴースディ側についているだろう。奴は会話で他人を自分側に引き込むのが上手いからな。加えて仕事が幹部達に比べて頭一つ抜けて早いのだ。そしてアデルマンドが持っていた私の力を弱めるネックレス。それも幹部らの手に渡っていることだろう。そうなると私には彼らを止めることは難しい」
戦闘よりは他のことに長けているタイプか。
この手のタイプは頭が回って、あれこれ対策を考えたりするからかなり厄介なんだよな。
それにサンデニスの言う通り、あのネックレスがあると幹部の方が力は上回ってしまう。
「それでどうしたいんだ?」
俺が追及する様にそう聞くと、サンデニスは目を開き。
「お前達に同行させてはもらえないか」
予想もできない様なことをサンデニスは軽々と口にした。
それを聞きパロマとミナキは口をポカンと開け、シルクは心底嫌そうな顔をする。
こいつと組めば幹部を追い詰めやすくなり、冒険も楽々進めることになるだろう。
そしてクエストも受け放題のクリアし放題で稼ぎも圧倒的に良くなるはずだ。
戦闘もこいつ一人に任せておけば、恐らく俺達は何もしなくてよくなる。
前みたいに死ぬこともなくなる。
そう、導きだされるのは安定した冒険者ライフ・・・・・・!
・・・って魔王が同行?
いやいや待て待て。
それは確かにこいつは強いけど仮にも魔王だ。
少なからずも人を殺してきた魔王なのだ。
そんな奴と一緒に旅をしていくなんて自ら身を捧げに行くような物だ。
それにどんな理由があろうと、『魔王と旅をする』という行為自体が俺の道理に反する。
結論はノーとしか言えない。
「それはできないな。仮にも魔王であるお前と一緒に旅するなんて俺はお断りだ」
俺はきっぱりとサンデニスに告げる。
それを聞いてシルクがホッと息をつく。
魔王というのは倒すべき最終目標。
少なくともそうであってほしい。
そういう存在と旅するだとか・・・無理無理。
「お前ならそう言うと思った。当然だろうな。では私はゴースディの本体の居場所を探ってみる」
サンデニスはフフっと笑いながらそう言う。
こいつ自身もわかっていて冗談半分で言っていたのだろうか。
手玉に取られたような気分だ。
「探るって言ったって場所はわからないんだろ?」
俺が疑問に思って聞くも、サンデニスは真面目な顔で。
「しかしあいつを止めなければ根本的な解決はできないのだ。他の幹部がいなくなろうとも、その気になれば何か理由をこじ付け、人間を利用して町同士を争わせたりもするだろう。あいつ単独でも相当危険なのだ」
そんな恐ろしいことを口にする。
確かにそんなの放っておいたらこの世界ごと拗れかねないな。
もう何でもアリって感じだなそいつ・・・・・・。
「だから私は世界を回り、ゴースディの居場所をつきとめる。お前達には好き放題に暴れるであろう、幹部の相手を頼みたい」
やはりそうなりますよね。
俺達が幹部の相手を担うことになるんですよね。
面倒だなあ。




