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異世界行きはこちらです  作者: 神に選ばれし村人
第二ノ三章 恐怖と勇気
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第二十八話 朝焼け

「トウヤ!大丈夫ですか?」


 シルクが俺に声を掛けながら、ミナキと共に駆け寄ってくる。

 変わった風に力を使い果たし、パロマに踏み台にまでされた俺はうつ伏せのままで。

 

「大丈夫だー。パロマがしっかり倒してくれたみたいでよかったよ」


 声を弱らせながらなんとか返事をする。

 走ったり叫んだりで今回は本当に疲れた。

 しばらくはこの態勢で休みたいところだ。

 ミナキが残り少ない魔力で俺に回復魔法をかけてくれている。

 

「・・・最後のあいつへの妨害、あれシルクのだろ?よくやってくれたな」

「少しだけ魔力が回復したので、無いよりはマシかと思い使ってみました。役に立てたようで良かったです」


 俺がシルクに礼を言うと、シルクも微笑んで返してくる。

 こいつの魔力を絞り切った一発が決め手となったのだ。

 あれが無かったら俺はまた他界していた頃だろう。

 本当によくやってくれたものだ。 

 それよりも・・・・・・。


「シルクさん。絶景ですよ」

 

 俺はシルクの方を向いてニヤけながら呟く。

 シルクはどういう意味かわかっておらず首を傾げる。

 フフフ・・・いい眺めです・・・なっ!?


「あら相変わらずの様ね!この変態!!」


 ミナキが状況を察した様で怒鳴りながら杖で頭を叩いてきた。

 くうううう、痛えな・・・・・・。

 一生懸命頑張った人に杖で叩くことはないだろうが。

 というよりコイツ、どちらかというとシルクに興味あるんじゃなかったのか。


 シルクもそのやり取りを見て気づいた様で、泣きそうな顔をしながら後退ってく。

 俺が悪いとはいえ、その表情はちょっと切ない・・・・・・。

 

「大丈夫?トウヤ」

「あ、ああなんとか」


 パロマがいつもと変わらない調子で話しかけてくる。

 地を浴びても動揺しなかったり、斧の一撃をまともに受けて、あんな痛い目にあっても平然としていられるのが凄いな。

 メンタル面も強いということか・・・・・・。


 何にせよ今回の戦いが無事終えることができてよかった。

 正直町であいつの力を見せつけられて凄く怖かったのだが、頭が弱かっただけに割と何とかなった。

 町に帰ったら報酬をたっぷり貰って・・・・・・。

 

「!? 生きてる・・・!!?」


 そんなことをのん気に考えていた時だった。

 シルクの表情が急変し、叫び出す。

 まさかと思い、俺もシルクの向いている先を見ようと顔を上げる。

 それにつられてミナキとパロマも振り向く。

 

 ・・・・・・あの時と同じような光景だった。

 あり得ないことであり、しかも先程と全く違う様子だった。

 あの時と同じく、恐ろしくてすぐに動くことができなかった。

 

 そこにはパロマがしっかりと倒したはずのアデルマンドが、目を赤くさせ立ち上がっていた。

 あの黒猿の時と同じ様な現象が起きていた。

 またかよ・・・一体何なんだよ・・・・・・! 

 アデルマンドは笑い、黒い息を吐きながら斧を振り上げる。

 

 先程までの叫びながら、俺を追いかけ回していた単純な龍の魔物ではない。

 黒猿と同じ様に、致命的な場所に穴を開けながらも立ち上がり、眼を赤くさせ不気味に笑う。

 その変わり果てた姿は、化け物という呼び名がこれ以上は無い程にお似合いだった。

 ミナキも脅えその場に立ち尽くすが、パロマは咄嗟に剣を構える。

 しかしいくら俺より強くても、俺と同じ鉄の剣を扱っているパロマが防げるはずがない。

 加えて今回は蘇生ができるミナキもこれでは殺されてしまう。

 俺も起き上がろうとしたところでもう間に合わない。

 

 ・・・・・・終わりか。

 


「『ダークバースト』!!」


 聞き覚えのある男の叫び声がが聞こえる。

 そして次の瞬間、目の前で紫色の爆発が起こった!。

 アデルマンドは斧を振り下ろすことはなく吹っ飛ばされる。

 この声はまさか・・・・・・。


「油断したな?この変態男が」


 振り向くと、氷山道中の方の空にサンデニスが浮いていた。

 そしてそのまま俺の方へと飛んでくる。

 

「お、おいその言い方はやめてくれ。目に入っちゃったんだから仕方ないだぐえっ!」


 俺は立ち上がりながらサンデニスに言い訳すると、シルクに杖で背中をど突かれる。

 だから武器で人を殴るのはやめてほしいのだが。

 ついでにパロマとミナキ、先程は気にしていなかった様子のアカリにも冷たい目で見られる。

 俺が悪いですね、ハイ。


「まあ助かったよ。町の方は大丈夫なのか?」

「少しばかり被害が出たが、魔物は途絶え死者も蘇生させておいたから無事だ」


 流石魔王さんだ。

 俺らで苦戦していた魔物もあっさり片づけてしまうとは。

 魔物を倒す魔王というのも違和感が凄いが。


「それよりあいつはもう動かないのか?というか前にも一回似たようなことがあったんだけど」

「あの魔法は一回きりだ。あいつはもう動けない」

 

 そりゃよかった。

 またあんなデカいのに襲われたくはない。

 ・・・・・・でもこいつ魔法って言っていたな。

 誰かが使ってたっていうのか?

 でも見る限りはアデルマンド以外には、あの即殺された奴の手下くらいしか見当たらなかったが。


「そこにいるのだろう?出てこい!」


 サンデニスはそう叫びながら、シルクの方を指差す。

 え、まさかシルクがやったってのか?

 急展開過ぎないか?

 いやしかしこいつは蘇生なんて使えないはずだし、する意味が・・・・・・。


「やはり邪魔しにきたんですね、魔王様」


 声が聞こえると同時にシルクの後ろに、いきなり黒いローブと白い仮面を付けた人物が現れた。

 そ、そうだよなシルクがやるわけが無いよな・・・・・・。  

 姿を消す能力と、とにかく不気味なその容姿には見覚えがあった。


「お、お前は・・・・・・!」

「覚えていてくれましたか。嬉しいですね」


 そう、幹部と名乗っていたゴースディだった。

 絶望の感情とやらを集めて、何かを企んでいる怪しげな奴だ。

 ゴースディを見てアカリが脅え出す。

 アカリにとってはトラウマの様な存在なのだろう。

 シルクも慌てて俺の方へと駆けてきた。


「こんなことをするのはお前くらいだろう。やはりここに現れると思っていた」

「この者達、特にこの男は私の計画を大いに狂わしますからねえ」


 サンデニスとゴースディが互いに向かい合って話し始める。

 あいつはああなることをわかっていて、防ぐ為にここに来ていたのか。

 それにゴースディの計画を俺が狂わせるってどういうことだ?


「結局アデルマンドは計画不足でここへの侵入を許し、町の方も手下の併給が追い付かず、魔王サンデニスの侵入を許してしまった。手下はその十倍は連れていくべきだと言ったのに、この者は私の忠告を聞かずに俺がいれば十分だと言いここへ来てしまった。そしてこの結果ですよ、どうしようもないですね」


 相変わらずの見下すような言い方をする。

 アデルマンドもこいつの計画の道具に過ぎなかったということだろうか。

 そして結果を出せなければあの言われ様か。

 その非道さでサンデニスよりもずっと魔王らしく思えてしまうな。


「おや?そこにいるのはあの時の使えない小娘じゃないですか?」


 ゴースディがアカリに気づいた様で不思議そうに聞いてくる。

 アカリはそれを聞いて泣き出しそうになる。

 こいつの言い方はちょっと頭にくる。


「おい。アカリだってお前への貢献になってたし、アデルマンドだって自分なりに頑張っていたじゃないか。それに対してその言い草はあんまりじゃないのか?」


 少しでも役に立っていたはずなのに、役目が終わればゴミ扱い。

 そんなあいつの性格が気に入らなくて思わず俺は言ってやる。

 しかしゴースディは両手を肩まで上げ手の平を上へと向けて、やれやれと言わんばかりに首を振り。


「当然じゃないですか。使えない物は使えない物らしく見限るだけですよ。あ、シャって意味のモノではなくて、ブツって意味のモノです。ここ大事ですからね。フフフフ」


 丁寧に悪徳さを強調した解説まで付け加えて言ってくる。

 それを聞いたアカリを除く全員がゴースディを睨みつける。

 こんなに悪という印象を受ける奴を初めて見た。

 こいつが何かを喋る度に気分が悪くなってくる程、俺はこいつのことが嫌いだ。

 

「はああああっ!!」


 するとパロマが剣を構えて斬りかかる。

 それは突然のことすぎて、止める暇もなかった。

 しかしこいつはアデルマンドと同じく、幹部という立ち位置の奴だ!

 何をしてくるかわからない。

 パロマの奴、結構ヤバいことをしてるんじゃないか!?



 スカッ


「うわっと! あ、あれ?」


 パロマの剣はゴースディにしっかりと当たったが、音もせず何も起こらない。

 それどころがパロマがゴースディの体をすり抜けてバランスを崩していた。

 何なんだこいつは・・・・・・。


「今のあいつには実体が無い。あれはゴースディの本体では無いのだ」

 

 サンデニスが今の現象について語ってくれる。

 つまり攻撃が当たらないってことか?

 俺達が一方的に不利じゃないか。

 これは随分と厄介だな・・・・・・。

  

「まあそういうことです。貴方達には私を止めることはできません。・・・さて無駄話を続けていても時間が勿体無い。私はそろそろ行きますよ」


 するとゴースディは姿を消した。

 また逃げるってのか!


「お前自らは攻めてこないのかよ」


 俺はふと気になり問いかけてみる。

 あいつも幹部なら実力は相当の物のはずだ。

 何故直接襲ってはこないのだろうか。


「この姿は私の分身みたいな物でしてね。この仮の姿では死体を一度動かすことくらいしかできないのですよ。なので私が戦うことはできません」


 死体を動かす・・・・・・。

 つまりアデルマンドが一度復活したのは、隠れていたゴースディの仕業だったってことか。

 姿を消しているなら俺達には認識されない。

 実体も無いから姿を現したとしても何もすることができない。

 しかも気分の悪くなるようなことをベラベラと喋りやがる。

 あいつ自身が攻めてこなくとも、十分に嫌な存在になってやがるな・・・・・・。

 

「次のステージもしっかりと作り上げておきますよ。精々頑張ってくださいね。フフフフフ・・・・・」


 笑い声が小さくなっていき、やがて聞こえなくなった。

 この場から消えてしまったのだろう。

 これからもあいつと関わることになると思うと頭が痛くなってくる。

 

「ゴースディの本体はどこにあるか私にもわからない。目的もわからないが、絶望の感情を集める為に、あいつは様々な町に今回の様に幹部を派遣するだろう。あいつ自身を止めることができない以上、あいつの派遣する幹部共を止めるしかない」


 何だか面倒な話になってきたな。

 今回のアデルマンドみたいな敵と今後も戦うことになるのか。

 嫌だなあ・・・・・・。

 普通の異世界生活がしたい。


「そ、その・・・幹部って後どれくらいいるの?」


 ミナキが苦笑しながらサンデニスに尋ねる。

 きっとミナキも俺と同じ気持ちなのだろう。

 あまり絶望的な数じゃないと嬉しいのだが・・・・・・。


「ゴースディを抜けば残りは五人だ。奴は人の多い町を襲わせることだろう。だが町にもその地域の魔物に対抗できる一端の冒険者は存在する。焦ることは無い」


 五人・・・か。

 多いような少ないような微妙な数だな。

 しかしアデルマンドは幹部の中でも一番下位と名乗っていた。

 となると他の幹部はあいつよりも強いってことになりそうだ。

 その町の冒険者が頑張って倒してくれないかな。


「あいつみたいなのと五人も戦えるのか!楽しみだなあ・・・・・・」


 パロマが目を輝かせてそんなことを言う。

 本当に好戦的な奴だなこいつ。

 できれば俺はあんなのともう戦いたくないのだが。


「魔王らしくない魔王に、奴は痺れを切らしたのだろうな」


 町の方を向きながら、物寂し気に呟くサンデニス。

 確かに町に変装して溶け込んでる辺り、あまり魔王と言えるような奴ではない。

 それに対してあの極悪なゴースディだ。

 わからなくもないのだが、悪として考えるならゴースディの行っていることの方が正しいんだよな。

 理想の世界を保つというのも、魔王らしいと言えば魔王らしいかもしれないけど・・・・・・。

 

 俺はこの世界に来る時に魔王を倒すことを頼まれた。

 その倒すべき相手は今目の前にいる。

 しかし俺に倒せる力があったとしても、この流れだと今こいつを倒してはいけないのだろう。

 ・・・・・・しっくりこない話だなあ。



「もう・・・朝ですね」


 そんなことを考えていると、シルクは鉄格子の方へおり、外を指差して言う。

 俺もシルクの方へと、少しよろけながら歩み寄る。


「お疲れの様ですね」

 

 アカリにそんなことを言われる。

 体は素直だ。

 一睡もしないで戦っていたら流石に疲れてしまうか。

 

 氷山の頂上から眺める朝焼けはとても美しく、今回のアデルマンドとの戦いの勝利を、祝福してくれているかの様だった。

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