表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行きはこちらです  作者: 神に選ばれし村人
第二ノ二章 リーダーの暇潰し
24/46

第二十一話 不思議な感情

 五日目のバザー・・・というよりは祭りが終わった後、俺はアカリに連れられとある場所に来ていた。

 町の草原の南にある、森を超えた先の古ぼけた墓地だ。




「へえ、こんなところがあったんだ」

 

 この町でも様々なクエストを受け草原を駆け回ってきたが、全く行ったことのなかった場所に案内された。

 墓地お墓の数は数えきれないほど多く、森の木に囲まれ、辺りも真っ暗な時間帯なのでかなり不気味だ。

 ・・・・・・これアンデットモンスターが群がってきたりはしないよな?

 特に気配とかはしないし大丈夫だとは思うが。


 俺とアカリは墓地をしばらく歩くと、ある一つのお墓の前で立ち止まる。


「ここの墓地に眠っている人はみんな私と同じで、七年前の戦争で亡くなってしまった人達なんです」

 

 このお墓の数だけ魔王の手先にやられたってことなのか。

 余程激しい戦争が行われていたことを物語っている。

 酷いなんてレベルじゃないなこれは・・・・・・。



「このお墓の名前を読んでみてください」


 アカリの立っている目の前のお墓をよく見てみる。

 そこには日本でも見慣れた系統の文字が刻まれていた。

 これは・・・・・・。




「――日野・・・愛花莉・・・?アカリの墓なのか?」

「やっぱり読めちゃうんですね。そうです、私もトウヤさんと同じ、違う世界から来た者です」


 アカリは微笑みながらそう語る。

 七年前にこの世界へと来た人だったのか。

 シルクとあまり変わらない程の、こんな小さな子でも来る人がいるとは。

 随分変わった出会い方もあるものだ。

 そしてアカリは俺と真っすぐに向き合い、手を組んで語りだす。


「トウヤさんのことはこの世界の人ではないとすぐわかりました。どうやら私は違う世界から来た人にしか見えない様になっているみたいなんです。その中でもトウヤさんは他の方々とは違い、凄く優しく接してくれました」


 俺にそんな特殊な力があるとは知らなかったな。

 幽霊がそこらにウヨウヨいたとなってもそれはそれで困り物だが。



「・・・自分がお腹を空かせながらも、私のことを優先して食べ物を渡してくれたり、平原でモンスターに襲われた際も必死に庇ってくれたり、バザーの時も勝手にお願いした私に付き合ってくれたり・・・・・・、凄く優しい人だなと思いました。今まで出会ってきた冒険者さんは自分のことで精一杯で、トウヤさんの様にそこまで優しくはしてくれませんでした」



 ちょっと照れくさくなる。

 そんな大したことをしたはつもりはないんだけどな。

 でもアカリが言うには、俺以外の冒険者もアカリと関わってたってことだよな。


「あはは・・・・・・。でもその言い方だと、俺の様にアカリと接した冒険者はいたんだろ?そいつらじゃダメだったのか?」


 俺が疑問に思い聞いてみると、アカリは俯きながら。


「・・・何十人もの冒険者さんと出会ってきましたが、救ってくださる方はいませんでした。雪原にいる私を発見しても見て見ぬ振りをしたり、町まで連れて行っても私が普通の存在でないと知ると逃げ出してしまったりで。中には私の魔法がアンデットにしか使えない魔法と知って、関わらない様になってしまう人もいました。そうして私が見捨てられてしまう度に、何故かあの雪原へと戻されていました」


 ・・・・・・鬱になりそうな話だな。

 何度も人に見捨てられて繰り返されて来たというのか。

 でも未練云々と言うより何か不自然な話だな。

 何で戻される必要があるんだ?

 

「確かに辛い話だが、何で雪原に戻される必要があるんだ?」

「それは・・・」




「――それは私が絶望の呪いをかけたからですよ。木村冬也さん」




 アカリが何か言おうとした途端、そいつはアカリの後ろに突如として現れた。

 黒いローブを身に纏い、白い不気味な仮面を付けた謎の人物。

 そいつが現れた瞬間、辺りの温度が下がったのか急に寒気を感じる。

 何者なんだこいつは。

 アカリはその声を聞き振り向くと、顔を青くして俺の方へと駆け寄り後ろに隠れる。

 相当こいつのことを怖がっている様だ。


「フフフ、お初にお目にかかりますトウヤさん。私は魔王の幹部のゴースディと申します」

「魔王の幹部だと!?」

「ええ、まあ幹部といっても特殊な役割を担わせてもらってますがねえ」


 ヤバい奴に出くわしてしまった。

 呪いとか言ってたし、サンデニスの様な闇魔法使いタイプだろうか。


「私のお仕事は冒険者の意識を操作し、その子を絶望させ、その絶望のエネルギーを集めることなのですよ。あの雪原なら冒険者の通り道や、平原とは違う生物の狩場となっており人通りが良い。そして自然に冒険者の行動を演じさせることができる。・・・子供の感情は崩れやすく扱いやすい。だからこの子を呼び起こし、使っていた。とてもいい道具だったんですけどね」


 ・・・幹部らしいゲスな奴だ。

 扱いやすいだの道具だのいきなりぶっ飛んでる奴に会っちゃったな。 


「ですが何故か貴方には私の能力が効かなかった。それに貴方からは魔王に似たような謎の力を感じる。不思議ですねぇ」


 そこまで言うとそいつは微かに笑った。

 魔王に似た力?

 俺と魔王が同く違う世界から来たということ以外に、何か接点でもあるのだろうか。


「その子はいいエネルギー源だったのですが、良からぬことに貴方が救ってしまった。まあいいですよ。他にも使える道具はたくさんありますから」


 ゴースディは仮面を抑えながら言う。

 こいつそんな質の悪い事を繰り返す気なのか。

 ゲーム何かに出てくる奴よりもよっぽどズル賢くて陰湿な奴だな・・・・・・。


「そんなことをして何をするんだ?絶望のエネルギーとやらで何を企んでいるんだ?」

「それは教えられませんよ。素晴らしい計画は実行まで秘密にしておくものですよ」


 そりゃそうなりますよね。

 わざわざ計画をバラしてくれるはずもないか。

 

「さて・・・ここでの私の用事が無くなってしまったので、ここで貴方と話をしていても仕方がない。僅かな時間でも大切にしなくてはなりません。別の場所へ行ってエネルギーを集めてくるとしますよ」


 そう言うとゴースディは姿を消した。


「おい待て!逃げんのかよ!」

「目的を優先するのですよ。また会えるといいですね。トウヤさん」


 夜の墓地の暗闇の中から、ゴースディの別れを告げる声が聞こえると共に、先程まで感じていた寒気が引いていった。

 この場からいなくなってしまったということだろうか。

 

 計画・・・か。

 嫌な話を聞いてしまったな。

 何かとんでもないことでもやらかそうとしているのかもしれない。

 それに魔王に似た力とは何だろう。


「トウヤさんトウヤさん」


 俺はあいつの言っていたが気になり考えにふけっていると、後ろに隠れていたアカリが心配そうに呼びかけてきた。


「ああごめん。あいつの言ってることが気になってな」


 そう言うとアカリは暗い表情で。


「戦争で死んでしまった私達は救われることを求めていた。そんな感情をあの者は利用したんでしょう。それを拒む様に仕向け私を絶望させていた・・・・・・」


 そこまで言うとアカリはこれ以上ないくらいの満面の笑みを浮かべ。


「でもそこへトウヤさんが現れ、私を救ってくれて満たしてくれた。トウヤさんは恩人ですよ!」

「そんな大したことはしてないって。見つけられたのだって偶然かもしれないし、町でも一緒に遊んだだけだし」


 俺は顔を赤くしながら、アカリの大げさな評価をかき消す様に返す。

 フラットへ行く途中の黒猿の存在とその賞金や事故、サンデニスとの出会いが重なって、偶然この町に戻ることになったのだ。

 少しでも状況が違っていればアカリとは出会わなかった。

 ・・・でもあいつの言っていた通り、この子はきっと救われたのだろう。

 その結果だけあれば十分か。


「きっとこれは運命なんだなって私は思いますよ?トウヤさんと出会えて幸せです。それに・・・もう一つの願いも果たせましたし」


 アカリの顔が急に赤くなる。

 もう一つの願いとは何なのだろうか。


「願いってなんだ?折角だから教えてくれよ」

「ひ、秘密ですっ!教えられません!・・・あ、そろそろ時間みたいですね」


 アカリが必死に拒むと、アカリの体が光に包まれ、薄くなり始めた。



「そうか、目的はもう果たしたもんな」


 目的が無くなった死人がいつまでも地上を彷徨っていてはいけない。

 ゴースディの呪いは消え、成仏するのだ。


「お別れですね。できればもう少しトウヤさんと・・・」


 顔を赤くしながらそこまで言うとアカリはフイっと後ろを向いて。


「・・・なんでもありません!」

「気になるじゃないか。会えなくなっちゃうんだし教えてくれよ」


 俺がそう促すとアカリは再びこちらへ向き直る

 挙動不審だなあ。


「もう少し・・・一緒にいたかったなと・・・思っただけです」


 アカリは恥ずかしそうに目を逸らしながら俺に告げる。

 なんだそんなことか。


「そうだな。俺もアカリと一緒にいられて楽しかったよ。な、中々無い体験もさせてもらったしな」


 こんな小さな子だし幽霊の様な存在だが、一時的に彼女ができたような気分だった。

 そんなことを思うと恥ずかしくなり、俺もアカリと同じく目を合わせられなかった。

 そして良い事ではないとわかっていながらも、少しだけあの幹部に感謝をしていた。


「そう言って頂けると嬉しいです。これは私からのお礼です」

 



 するとアカリは急に俺に近づいて背伸びをする。

 そして頬に近づきキスを・・・・・・。



「!!??」

「ふふふ、驚き過ぎですよ。さようならトウヤさん」

「あ、ああ・・・・・・」



 アカリはそう言って微笑むと、光に包まれて消えてしまった。

 それを見送った後も、俺は突然のことに頭がついていかず、そのままボーっと立っていた。

 


 道具として起こされたアカリの呪いは消え去り、何にも縛られなくなったアカリは無事に帰って行った。

 辛い時間を過ごしてきた彼女を俺は救うことができた、それだけのことだ。

 それだけのことなのに・・・・・・。



「――帰るか」


 我に戻り呟くと、町へ戻ろうと森の方へと歩き出そうとした。

 

 そんな俺に、今まで感じたことのない胸の痛みと、目からこれ以上は無い程の涙が自然と零れ出てきた。

 

 何だろうこの気持ちは、この感情は。

 何故締め付けれる様に胸が痛く、溢れる様に涙が出てくるのだろう。


 

 その不思議な現象は町に戻るまで治まらなかった・・・・・・。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 そして俺は次の日の朝を迎えた。

 着替えも済ませ、身だしなみも整え準備を終える。

 

 今日はあの変な魔王に賞金を渡す日だ。

 何故魔王が金を欲しがるのかわからないし、普通じゃない行動だが仕方がない。

 面倒なことにならない様にさっさと渡し行くか。

 そう思って宿屋の個室のドアを開けると。


「――痛っ!?」


 するとドアが何者かに当たった様な感触がし、少女らしき声が聞こえる。

 

「すいません!大丈夫です・・・か・・・!?」




 俺は慌てて部屋の外へと出て謝ろうとする。

 しかしその少女を見て絶句する。


 白いワンピースを着た、最近どこかで見たことのある少女。



「アカリ・・・?」

「はい、トウヤさん!戻ってきちゃいました!」


 アカリは額を擦りながら微笑んで言ってくる。

 そして俺はアカリを見た瞬間、何故か涙が出てくる。

 昨日の様な、よくわからない感情と共に。


「トウヤさん、泣いてるんですか?」

 

 アカリは立ち上がってちょっとだけ嬉しそうに聞いてくる。

 俺が泣いてることに対して何故嬉しそうにしているのだろうか。


「な、泣いてないよ。それより何でアカリがここにいるんだ?消えちゃったんじゃないのか?」


 一番に気にするべきことを忘れていた。

 アカリは光に包まれて消えていくのを、俺はしっかり見届けたはずだ。

 それともまたゴースディとやらの仕業だろうか?

 実は諦めていなかったのだろうか。


「恐らくトウヤさんと一緒にいたいと、直前に強く願ったからなのでしょうか。気が付いたら墓地に倒れていたんですよ」


 よかった、あいつの仕業じゃなかったのか・・・・・・。

 

 って俺そんなにこの子に気に入られてるのか。

 成仏を拒まれるほどこの子に思われてるのか。


「――罪な人ですね。トウヤさんは」


 アカリは首を傾けながらにっこり微笑んでそう言ってくる。


「あれ、トウヤさん?大丈夫ですか!?」


 ボーっとするアカリは俺のことを揺すってくる。

 

 魂が抜けた様になった俺は、しばらくその場を動くことができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ