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異世界行きはこちらです  作者: 神に選ばれし村人
第二ノ二章 リーダーの暇潰し
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第十九話 見えない子

 空が暗闇に染まる頃、俺とアカリは町へと到着した。

 俺達は町の門を潜り安全な町中へと入る。

 遭難者に出会ったり危ない目に遭ったりと、戻って来るだけで色々なことが起こったがこんなものだろう。

 ここは何があるかわからない異世界なのだ。 


 町中をふと見回してみるが、何やらいつもと様子が変わっている。

 この時間なのに外に人が多く、道端のあちこちに屋台の様な物を立てている人が大勢いる。

 何事だろうか。


「うわあ・・・・・・!」


 アカリの感激するような小さな声がし、横を見るとアカリが目を輝かせてその光景を見つめていた。

 まるで小さな子供が何とかランドに来た時の様な、そんな感情を露わにしていた。

 何かイベントでもあるのだろうか。


「なあアカリ、これ一体何なんだ?」


 俺が声をかけるとアカリは慌てて。


「あわわ、すいません、嬉しくてつい。バザーですよバザー!この町では何か月かに一回定期的にバザーが開かれて、五日間だけ遠い地域から特別に無償でこの町に来ることができるんです。そして様々な商人やお客さんで町が賑わうんですよ!」


 アカリは興奮しながら、満面の笑みで語る。


「へー、この世界にもそういった物があるんだな」

「え?」

「あっ。な、なんでもないよ」


 危ない危ない、ついうっかりしていた。

 これは面白いことを聞いたな。

 この町がお祭り騒ぎの様になるのだろう。

 ・・・興味あるな。

 

「――よし、それじゃまずはアカリを家まで送ってくか」


 中々見られない光景を眺めていたい気持ちはあるが、まずはアカリを家まで連れていくのが優先だ。

 親の元を離れてどれ程経っているかもわからないし、一刻も早く向かった方がいいだろう。

 しかし俺がそう言うと、アカリは急に表情を曇らせ俯く。


「どうしたんだ?家に帰れるんだぞ?」

「いえその・・・、明日に・・・してもらえませんか」

 

 様子が変だ。

 こんな小さな子ともなれば、家に帰れるのが嬉しくてたまらないはずなのだが。

 それに家に帰らなくてどうするってんだ。


「いやそれはマズいだろ。親だってアカリを心配しているはずだぜ?帰った方がいいよ」

「・・・家に・・・帰りたくないんです。トウヤさんと・・・・・・一緒がいいです」


 アカリは言い辛そうに声を小さくしていく。

 何を言い出すんだこの子は。

 それは俺と一夜を・・・って違う違う。

 うーん参ったなあ。


「何か理由があるのか?その、帰りたくない事情が」


 するとアカリはコクリと頷き、


「だめ・・・ですか?」


 涙を浮かべながら上目遣いでそんなことを聞いてくる。

 家庭がこの子に対して、何か良くない深刻な状態にでもあるのだろうか。

 ゲーム好きの俺でもわからない、ややこしい展開になってきたな。

 この子も帰りたくないって言い張っちゃってるし。

 仕方ないからとりあえず今夜は一緒にいてやろうか。

 遭難していたんだし、道中も色々あったしきっと俺といる方が落ち着くのだろう。

 俺は仕方ないとばかりにため息をつき。


「そこまで言うのなら一緒にいるよ。一晩だけな?」

「あ、ありがとうございます!」


 アカリは先程の様な明るい表情に戻り頷く。

 こんな小さな子を見捨てるわけにはいかない。

 俺もこの子といること自体に不満は無いしいいか。

 本当に変わった子だなあ。


 飯を食おうにも宿を取ろうにもお金が無いので、まずはギルドへと向かう。

 サンデニスに半分も渡すことになるのは癪だが、治療費や魔王の真相を知れたことと比べたら妥当なところなのだろうか。

 でも今の俺には五十万もあれば十分か。

 そんなことを考えながらアカリと一緒にギルドの中へと入り、受付へと向かった。


 ギルドの奥隅の方に階段があり、そこに立ち入り禁止と書かれたバリケードの様な物が置いてあったのだが、それが無くなっており、商人の様だがこの町では見慣れない服装の人が出入りしていた。

 きっと他の国からのバザー関連者の人達だろう。

 もう夜だというのにギルド内は凄く騒がしい。


「お、トウヤじゃない!戻ってきちゃったの?」

「ええ、この町にちょっと用事があったので」


 受付のマキは相変わらずフレンドリーに接してくる。

 俺がそう言うと奥の引き出しから札束を取り出し、数を数え始めた。

 

「何をしてるんですか?」

「あら、フラット方面から来る人に話はとっくに聞いてるよ。トウヤって人のパーティが黒猿を倒してくれたぞーってね!受け取りに来ると思ってしっかり残してあるわ」


 マキは振り向きながら笑顔でそう言ってくる。

 それなら話は早いな。

 俺の方は色々あり過ぎて、サンデニスに言われるまで忘れちゃってたけど。


「九十九枚、百枚っと。はい百万ノールよ!これで女の子とイチャイチャすることね」

「な、なな何言ってるんですか!そんないかがわしいことは考えてませんから!」


 こういうことを言われるのは慣れてないので、大げさな反応をしてしまう。

 それを見て面白そうにクスクスと笑うマキ。

 チラッと横を見ると、アカリも目を逸らしてフフッと笑っている。

 恥ずかしいなあ。


「そういえばこの町でバザーがあるみたいで。随分賑わってるんですね」


 俺はふと話を変える様にバザーの話題を出してみる。

 この町のことに詳しそうなこの人なら、何か詳しいことを聞けるかもしれない。

 

「そっか、トウヤは遠い場所から来たんだっけね。色んな国や王国から商人の人が来て、日用品とか装備品とか様々な物を店に出して凄く賑わうんだよ。この町じゃ見られない品もたっくさんあるからトウヤも見ていくといいよ!もう明日から始まるみたいだし」


 なんと、もう明日から開かれるのか。

 中々見られない品が御目にかかれるとなると、これは是非とも参加しておきたいところだ。

 それにもしかしたら今の剣よりもずっと強いのが見つかるかもしれない。

 そうなれば冒険も大分安全に勧められる!


「でも急に開催されるとは思わなかったよ。確か・・・六年ぶりになるのかな」


 六年ぶりか。

 かなり久々に開かれることになるんだなあ。

 

 ってあれ?

 聞いてた話と違う様な。

 


「おい、アカリ。バザーって何か月かに一回のペースじゃなかったのか?」


 俺はマキの言っていることが、先程アカリの言っていたことと違っていたことを思い出し聞いてみる。

 しかしそれを聞くとアカリはオロオロし始め、答えられないでいた。

 それを見てかマキは首を傾げながら。


「バザーが何か月に一回だったのは七年前までの話だよ?そこから一年開けて開催されたんだけど、とある王国で良くないことがあったみたいで、それからは復興させる為に開催地はそこへと移されることになったのよ」


 

 ってことはアカリは七年前の話をしていたってことになるのか?

 隣のアカリを見るが、その話を聞いて俺とマキから目を逸らすように横を向いている。

 どうなっているんだ・・・・・・?




「ねえトウヤ。さっきから横向いたり話しかけたりしているけど、そこに誰かいるの?」




 ・・・・・・え?

 マキは首を傾げながら俺に聞いてくる。

 何を言っているんだこの人は。

 この人のことだからきっと冗談か何かだろう。


 

「あまり俺で遊ばないでくださいよ。結構対応に困るんですから。この子はアカリって言ってそうな――」

「だから、そこには誰もいないじゃない」



 俺の言葉を遮り、尚も真面目そうな顔でそう言ってくるマキ。

 いないってなんだよ。

 俺の隣にちゃんといるじゃないか。


「人を空気扱いする嫌がらせは流石に悪質ですよ」


 

 嫌がらせにも限度があるってことを知ってもらった方がいいかもしれない。

 そう思い俺は少し対抗心を燃やしながらマキに言ってやる。

 しかしマキは何を言ってるんだとばかりに顔をしかめる。

 

 まさか・・・本当にこの人には見えていないのか?


「初心のトウヤがいきなり大物と戦ったんだし、きっとまだ疲れてるんでしょ。渡す物は渡したし今日はもう休みなさいな!」

「あっ、トウヤさん!」


 マキは受付カウンターから出ると、そう言いながら困惑する俺をギルドから追い出した。

 アカリも俺を追いかけて走って出てくる。

 

「どうなってんだよ・・・!」


 俺はわけがわからずアカリを見る。


「ごめんなさい・・・・・・」


 状況がわからないが、今この子を脅えさせても仕方がない。

 ギルドの中で飯を食べようと思っていたのだが、追い出された以上今は入る気がしない。

 とりあえず宿屋へ向かうか。

 


 

 

「俺は見えているのに、俺の周りの人は見えてない、か」

「・・・・・・」


 俺は宿屋の食堂で夕飯を食べながら呟くと、アカリはそれを聞いて俯く。


 宿へと来たところまではよかったのだが。

 俺が二人泊まると言ったら、宿の人まで「もう一人は後から?」と聞いてきたのだ。

 マキのとのこともあり、俺はその言葉に対して言い返すことはできなかった。

 それに普通に商売している人まで、ふざけたことを言ってはいないだろうと思い、結局俺一人ということで部屋へ向かった。

 アカリも部屋まで俺についてきたのだが、その宿の人が呼び止めようとする様子は一切見せなかった。

 アカリが何か知っているかを聞いてみたいが、昼から食べていないのは流石に辛くなってきたので、バッグを置いてから先に食堂に向かったのだ。

 しかしアカリは何も食べないと言い、俺の隣に座っている。



 俺だけが見えていて他の人には見えない。

 そんな人間が存在するはずがない。

 魔法だとしても、指定した誰かだけに見えるというのは聞いたことがない。

 

 それ以前にこの子を見つけた時からおかしいと思っていた。

 雪原の中で絶対寒そうな服装なのに平然としていた。

 関連あるかはわからないが、この町の近辺の子なのに俺よりも格段に強い能力を持っている。

 そして何故か回復魔法を嫌がる。

 滅多に無い・・・というか、悪く言えば人間ではないと考えていた・




 食事を終え、俺とアカリは部屋へと戻る。

 そしてアカリが部屋に入ったのを確認すると、アカリと向かい合う。


「アカリ、ちょっと話があるんだけどいいか?」

「話・・・ですか?」


 不思議そうに首を傾げて返してくるアカリ。

 そう言って俺とアカリは座って向かい合う。

 

 アカリが一体どんな答えを出すのだろうか。

 今日のことを色々考えたが、結局は聞いてみるしかない。

 





「――アカリ。お前、何者なんだ?」

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