表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/7

訪問者


以前、少しだけ住んでいた部屋での話です。


アパートの古い部屋でしたが、その部屋ではドアの覗き穴が封印されていました。


テープを貼っているとかではなく、薄い銅の板がドアに螺子ねじ止めしてあるのです。大家さんからは前の住人の仕業だろうと説明され、私も特に気にしなかったので、修理などもしませんでした。


その家では、夜中に扉をとんとんと叩く音がする、ということがたまに起きました。


深夜、寝静まっているときに起こるので、私も確認することが面倒で、そのまま布団の中に縮こまって、寝てしまおうと目をじっと閉じるだけでした。


それは私の部屋の扉なのか、風で飛ばされた何かが壁に当たる音なのか、雨樋から雨粒が落ちる音なのか、とにかくたまに、そういう音が鳴りました。


私は、塞がれたドアの覗き穴が気になってきました。何となく、誰かに加工されたドアというものが落ち着かなく思えたのです。


私は日曜大工が得意だったので、錆びついた螺子を抜き、銅板を剥がし、螺子穴をパテで埋めて、木のドアにサンドペーパーをかけて、ニスを塗り直しました。素人仕事ではありますが、外見上はきちんとやれたように思えました。


その日の、そう、まさにその日の、真夜中のことです。


布団の中で、とんとんとドアを叩く音を感じます。それははっきりと耳に聞こえるわけではなく、体に響く小さな地震のような、そんな音でした。


私はまた無視しようかと思いましたが、そういえばドアの覗き穴を直したことを思い出しました。ゆっくりと布団を這い出し、玄関まで向かいます。


とんとん、また音がします。


私はまさか強盗でもないだろうと、足音を立てぬようにドアに近づきます。


それは果たして扉を叩く音なのか、本当に音など響いているのか、それが疑わしくなるほどかすかな音でした。真っ暗な部屋の中で、覗き穴だけが点のように浮かび上がって見えました。


私はひたりとドアに指をつき、覗き穴に片方の目を。


アパートの廊下に、人影があったのです。


スカートも襟も黒いセーラー服を着た人物、その頭には……いえ、頭がありませんでした。

正確に言えばその人物には首から上の肉がなく、脳と、脳から視神経で繋がる眼球が二つだけ宙に浮いていて、他の部分は無く、向こうの景色がそのままに見えているのです。


私は悲鳴を上げようとする口を咄嗟に手で押さえ、そのまま後ずさって布団まで戻り、今のは夢だった、何も見なかったと強く思い込んでただただ朝まで震えていました。


その部屋は翌日すぐに引き払いました。それ以来、あの町に近づくこともなく、考えることもしないようにしています。


もし、同じように覗き穴を封印している部屋があったら、十分に気をつけたほうがいいかも、知れませんね……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ