4-1話 指導者
「よしっ。じゃあ、そろそろ来てもらおうかな」
ダートンの言葉に、俺と緑頭は顔を見合わせて、首を傾げる。
すると、木々の中で、一本だけ明らかに揺れが大きい木を見つける。
なんだ? 動物でも乗ってんのか?あそこに。
次に瞬きをした瞬間、目の前が真っ黒になった。
「え?」
俺が動揺した時、ダートンが口を開く。
「ちょっと、毒リンゴさん。近い近い。それじゃあ、誰が来たかなんて分からないですよ」
「お、そうか。すまんなー、かっこいい登場したはずなんだけど」
なんだこのオッサン。髭はボサボサだし、髪の毛もくるくるで、清潔感ゼロだな。って、ちょっと待て。遅れて耳に入って来たけどよう…
「ダートン。このオッサンの名前、なんつった?」
「ん?毒リンゴさんだけど?」
目をぱちくりさせながら、ダートンは言った。
毒リンゴ… 毒リンゴ… 毒…
「あ!!! あの時の!!」
「あー、そうだ。よくここまで来たな、アクマ」
俺の目の前に現れたのは、ノットヒーローの本部へ、直談判しに行った時に、ボコボコにされた相手だった。名前があやふやだったが、戦闘能力に満ちた圧が、あの時と同じ。状況が読めていない緑頭には、簡単に説明してやった。
「で、なんで毒リンゴがここに? ダートン、俺が過去の話をした時、もう気づいていたのか? 相手が誰だったのかを」
「全然知らなかった〜。偶然だよ偶然。久しぶりの再会が出来てよかったね」
嘘丸出しの表情で言って来やがった、ダートン。コイツは嘘をつこうと思えば、隠し通せるほど、口が上手いのにな。こういう陰湿な所があんだよ。
「分かってたんだったら、言ってくりゃあ良いだろ」
「今、言った。しかも、ノットヒーローで、毒から始まる名前の人、この人しか居ないし。ノットヒーローになりたくてやっとなれたのに、他のノットヒーローの事も知らない方がおかしいでしょ」
「ムキー!!」
俺がダートンに飛びかかろうとすると、毒リンゴは、手を使わず、俺を膝まづかせる。その後、すぐに注射器のようなもので、俺の腕に打つと、身体が動くようになった。
「ダチと喧嘩するなら、もう少しマシな喧嘩をしろ。しょーもない事で喧嘩するほど、余裕は無いぞ」
「チッ。しょーもない事で悪かったよ。あの時、俺を気絶させなかったら、こうはなってねぇよ」
「あらー、アクマくん。人のせいにするんですか」
また煽ってくるダートンに、キレた俺が言葉を出す前に、
「ほどほどにしろ。ダートン」
と、毒リンゴが止めた。
ダートンは、ノット高時代、成績優秀だった為、ノットヒーローの助っ人として、何度か呼ばれていた事があった。その時に、毒リンゴと出会い、ノットヒーローになってからも、面識があったらしい。喫茶店で聞いた俺の言葉を思い出して、事前に呼んでいたんだとよ。
「ダートン。聞いていたのはアクマだけだったが、この緑頭はなんだ?」
「ダートンさんが呼ぶほどの人ですから、おこがましいかと思いますが、僕の名は、ヘッド・グリーンです。緑頭ではありません」
「緑頭じゃん、それ」
すかさず突っ込む毒リンゴの言葉で、笑いを堪えていた俺は、堪えきれず笑いが止まらない。ダートンも、後ろを振り向き、肩がすごく揺れている。
「違います。今はそうなったかもしれませんが、本名ですから」
ここで、俺、ダートン、毒リンゴの時が止まった。そう、ノットヒーローは、本名を明かしてはならない。必ず、新しい名前を決めないと行けないからだ。何も分かっていない、緑頭は、俺達3人の顔の前で、声をかけながら、手を振る。
「緑頭、今すぐ、会長に連絡した方がいい」
毒リンゴは、携帯を出し、連絡する。
「会長、ヘッド・グリーンの名の事なのですが…… はい。…はい。分かりました。失礼します」
「会長、なんで言ってたんだ?」
俺が毒リンゴに問う。すると、
「そのままでいいってさ…」
「えぇーーー!! なんで? 俺ら必死に名前考えたのに(よう)!」
と、ダートンと口を揃えて驚いた。
「元ヒーローだったんだな。緑頭。ヒーローで、身バレがすでにされている可能性があるから、もういいだろうってさ」
「そこは適当なんだー」
驚きを超えて、笑うしか出来ないダートン。
「あと、ヘッド・グリーンと聞いても、まさか本名だと誰も気づかないだろうってさ」
それを聞いて、笑う俺達に、
「名付けの親を侮辱してますね」
と、最もな事を言われ、俺達はちゃんと謝った。そして許しを得た。
「これからは、毒リンゴさんがご指導なされるんでしょうか?」
と、緑頭が問うと、
「そうだよ。僕、忙しいからね〜」
「俺も忙しいんだけどなー」
ダートンが答えた後、食い気味に毒リンゴが嫌味を放つ。
「なんだよ。手伝うって言っておいて、ここでおさらばかよ」
「なに〜、アクマくん寂しいの〜?」
「暑苦しい。引っ付くな! 俺の舞台に、お前を使ってやろうと思ってただけだ」
「そっか。ごめんね、アクマ。まー、これから任務だから、またな! ヘッドくんも、頑張って〜!」
一瞬、目を下に向けて、寂しげな表情になった気がしたが、いつも通りのマイペースなタイミングで、消えていった。
「ダートンのやつ、めんどくさい事を押し付けよって」
去っていくダートンに、嫌味を言う毒リンゴ。その後、俺と目が合い、一応、頭を下げておいた。
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