4-2話
「よしっ。今からどうする?」
「アンタがそれ言うのか」
頼りない毒リンゴの言葉を聞いて、俺と緑頭はダートンの顔を思い浮かべる。
「あ、今、ダートンだったらな…って考えただろ」
「別に〜」
あからさまな態度をする俺と、苦笑いをする緑頭。
「わーったよ。じゃあ、まず、座って目を瞑れ」
俺と緑頭は、今から何をするか見当も付かないまま、言われた通りにした。
「よし、俺が目を開けていいと言うまで、ずっと目を瞑っておくように」
そして、体感時間20分が経過した頃、開けるなと指示されたが、あまりにも何も起きず、気づかれないように、目を開いた。そこで目にしたのは…
「野郎!! 逃げやがったぞ!!」
俺の言葉に驚き、緑頭も慌てて目を開く。
「これは、見捨てられたと言うことでしょうか…」
「それしかねぇだろ。うんともすんとも無く、ずっと放置だぜ? これが特訓だと思えねぇ。ダートンが無理なら、他のやつに当たろうぜ」
「いいんですかね…。もしこれが特訓だとしたら、ここで動いたら、僕達…」
そこで、木に生える葉の重なりの音と共に、また毒リンゴが現れた。
「うおぉっ! ビックリさせんなよ」
「うわあっ! ビックリしたぁ…」
驚く俺達に毒リンゴは、
「お前ら、本当に強くなる気あんのか?」
と、呆れた。
「こんなんで、強くなれっかよ。暇つぶしに言っただけだろうよ」
俺の言葉を聞いた、毒リンゴは、緑頭に問う。
「緑頭、お前はどう思う。返答によっては、俺はここで去るけど」
(へぇえええっ… 責任重大じゃないか。勘弁してよ…)
「ぼ、僕は… 目を開けるとその場に居なかったので、一見、見捨てられたと思いましたが、もしかすると特訓ではないかと…」
「何故、そう思った」
毒リンゴの緑頭への問いは続いた。
「え、ええっと… 時間も内容も伝えられないまま始まったので、忍耐力?をつけるためかと…」
恐る恐る答えた緑頭へ、毒リンゴはこう伝える。
「ブー。不正解!正解は、トンズラつこうとしてた でした〜」
「えぇ〜!? やっぱりそっちなんですか!?」
「はぁ!? ふざけんなよ!」
「おいおい。お前は、はなから信じていなかっただろ」
何も言い返せない俺を見て、声に出して笑い出す赤リンゴ。
「本当、タイプは違えど、二人とも素直だなぁ。ま、マジな話、緑頭の答えと、俺のさっきの発言、半分正解なんだけどよ」
「半分ってなんだ。お前らの言った事は、全く違うじゃねぇか」
「頭の悪いアクマきゅんでは、分かりませんかー。残念だな〜」
赤リンゴに飛び掛かろうとする俺を、必死に止めに入りながら、次は赤リンゴに緑頭が問う。
「半分正解とはどういう事でしょう?」
「言葉のまんまだよ。トンズラつこうとしていたし、特訓でもあった」
「ということは、今、毒リンゴさんが現れたと言う事は、この特訓はクリアしたということでしょうか?」
「全然。全くだよ。本当に1年で強くなろうと思ってんのか? こんな事も出来ないようじゃ、Aランクに認められるまで、まぁ5年はかかるぞ」
「なんなんだよさっきから! はっきり言えよ。なんの特訓なんだよ、これが」
ため息をつく赤リンゴ。そして、真剣な目つきになる。
「さっき、俺が座って目を瞑れと言った。そして、お前らは10分後に目を開けた」
10分しか経って無かったのかよ…。
「目を開けて、俺の指示を破った事には褒めてやる。ノットヒーローたるもの、己の身は己で守れと言われるほど、相手の指示通りにして良いことは無い。あのまま俺の指示が出るまで、ずっと目を瞑っていたら、俺はトンズラをこいていた。素直すぎる人間は、上には上がれないからな。だが、見極めが遅い!」
「じゃあ、あの時、どれくらいで目を開ければよかったのですか?」
「お前達が目を瞑り、俺がその場から離れるまでの2秒だ」
「そんなもん、考える暇もねぇじゃねぇか!」
「考える暇か? 笑わせるな、敵は待ってくれるのか? お前が考えている間に。それが通用するのは下位ヒーローだけだ」
下位ヒーローでは無く、SSランクに勝つための特訓をしようとしている俺には、耳が痛い言葉だ。だが…
「アンタが来るまでに、ダートンに言われたんだよ。考えながら行動しろってな。どうすりゃあ良いんだよ」
毒リンゴは、
「それも間違いではない。だが、じっくり考える戦闘は、遠距離攻撃を出来る奴にしか出来ない。それを言うと、もっと能力を開花させた緑頭なら、出来るだろう。だが、それも、相手が自分より劣っている奴にしか通用しない。じゃあどうすれば良い? 緑頭」
いきなり話を振られた緑頭は、また慌てて口を開く。
「ええっ… とですね… 僕自身出来るとは思わないですけど、考え、2秒で答えを出すとかですかね」
「正解だ」
正解を言い当てることができて、喜びを隠せない緑頭。そして、納得のいかない俺。
「2秒で答え出すなんか、無理だろ」
「無理なら、もう特訓はこれで終わりだ」
「おい、待てよ。何か策があるなら言えよ」
引き止めてもらえるのが少し嬉しいのか、真剣だった毒リンゴが、満面の笑みで答える。
「気合いだ」
「はぁ!? 根性論かよ。そんな物に指導なんかいらねぇじゃねぇかよ」
気合いで何かを成すとは、かけ離れた緑頭は、身体から蒸気が漏れ、思考停止に…。
「まぁ、落ち着け。気合いで、答えを見つけるためには、経験が必要だってことだ。今から次の特訓へ移る。最後に聞く。指導者が俺で、本当に良いんだな?」
俺が口を開こうとした途端、緑頭は口を塞ぎ、
「お願いします!」
と、答えた。
勝手に決めんなよ、緑頭…
そう、心の中で話すと、俺の感情が伝わったのか、『後で話は聞きますから』と、自らの背後に、緑頭の能力には欠かせない、枝を変形させ、文字にして答えられた。
渋々納得した俺と、さっきまで思考停止していたのが嘘のようにやる気に満ち溢れる緑頭へ、次に課された特訓とは…?
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