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no't ヒーロー  作者: 陽向アカネ


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4-3話

 

 「ブフッ!…」


 「ボフッ!!…」


 今、俺と緑頭は、絶賛、拷問中だ。



 1時間前…。



 「よし、次はこれに座れ」


 次の特訓へ移ると言った毒リンゴは、辺りに生えている木を、毒リンゴの能力、指毒ポインズンフィンガーで、木を倒し、即興で2つの椅子を作った。そして、知り合いのライト街の刑事から貰った手錠を、手と足首に装着された。この手錠が、貰ったのでは無く、毒リンゴ本人に装着され、逃亡し、外したのだと、俺達は2秒で悟った。



 「今から俺が簡単なパンチをお前らにする。とりあえず、避けてくれ」



 という言葉に、俺達は頷き、目を凝らしながら、パンチを待つ。両手で、俺達へ同時に拳を放つ毒リンゴ。ノットヒーロー名、毒リンゴと言うだけあって、拳には、訳の分からない、身体には摂取しては行けないと直感で分かるほどの毒が纏わりついている。


 「ボフッ!! なっ…」


 「うゔっ!! んで…」


 目の前で、さらに、二人同時に軽くパンチを受けるだけのはずが、全く動きが読めない。そのまま1時間が経過した。



 「あちゃー、そろそろ、毒が回ってきた頃か。死なれたら罰が悪いしなぁ、解毒剤入れてやるか」


 毒が回り始め、脳の働きも動かなくなって来た頃、パンチを止め、解毒剤を俺達に注入する毒リンゴ。


 「俺は天下の毒使いだが、解毒剤作りにも相当自信があってな。そろそろ効いてくる頃だろう」


 さっきまで、痛みと、脳への酸素が足りない感覚だったのが、空気清浄機のCMように浄化され、復活した俺達。


 「目の前で、モーションかけるところまで見てんのに、なんで、俺は避けれないんだ…」


 俺の疑問に、答える毒リンゴ。


 「モーションが、もし、フェイントだったらどうする?」


 「フェイントな…。 俺はそれには通用しないぜ。フェイントなら、ダートンに学生時代、しっぽりと扱かれたからな」


 「簡単に言ってるけど、アクマ、避けれて無いぞ?」


 「分かってんだよ。フェイントかそのまま来るか、2秒に一回のペースで来るパンチに考える暇がねぇんだよ」


 「それを特訓しているんだろうが、どアホ」


 「風の動き… ですかね…」


 ポロッと、考えた言葉が滑ってしまった緑頭は、適当な予想だと、焦って弁解していた。だが、緑頭の焦りとは裏腹に、


 「正解。もしかしたらセンスあるんじゃねぇの? 緑頭」



 めっちゃ喜んでじゃねぇかよ、緑頭…。


 毒リンゴに褒められた緑頭は、少し俯き、顔を隠してるつもりだが、メガネの向こうに映る頬が赤くなっている。


 風… か。


 「1分待ってくれ。1分経てばまた再開してほしい」


 「お? 俺に指図するとは、いい度胸だ。良いだろう。待ってやる。緑頭も一緒にやってみると良い」



 俺は、目を瞑り、葉の揺れる音、風があらゆる所にぶつかり、様々な音を聞くことにした。緑頭は俺を見て、同じように眉間に皺を寄せながら目を瞑る。



 右にある赤い木の実が風が吹くたび、一つ、二つと落ちていく。左にある木は、実が無いからか、軽快に葉が揺れる。後ろの木は、花が咲いていたが、葉より摩擦の音が少ない分、何枚落ちたか、まだ把握出来ないな。前の木は、花も実も付いていて、実と葉が重なる音、大ぶりな花だから葉との重なりも、少し離れていてもわかりやすい。



 ブンッ!!


 シュッ!

 ブホッ!



 「1分経過だ。アクマは何か掴めたみたいだな」


 目を開けると、俺の目に、子どもの成長に感心する親のような目をする毒リンゴと、ハテナが頭の上に浮かぶ緑頭が映る。



 「ちょっとな。でもまだダメだ。大体分かった程度だからよう、しばらく俺、この特訓続けるわ」


 「緑頭はまだ分かっていない様だが、お前は、感覚だけでは伝わりにくいだろうから、少し教えてやる」


 「はい… お願いします」


 緑頭は、寝ぼけていたのが覚めた様に、強い眼差しで毒リンゴの話を聞く。そして、俺は話を聞きながら、再び目を瞑った。



 「アクマは、自分で見出した特訓方法だと思っているが、これは昔からある、基礎特訓方だ。少し、昔話でもしようか」



 1千年前、二人の少年が居た。その名は、ライトと、シャドー。ライトは、冷静で落ち着きがあり、曲がった事が嫌いだった。シャドーは、落ち着きは無いが、色んな事に興味を持ち、柔軟な対応ができる少年だ。

 その頃は戦ではなく、個々の闘いとなると、武術しか許されなかった為、二人は物に頼る事なく強くなる為、闘い続けた。一見、シャドーの柔軟さが有利に見えるが、冷静な判断をできるライトとは互角。互いに、勝利を勝ち取る方法を考え、初めに行き着いた方法。物に頼らず、そして、視覚に頼らない攻撃を見つける。それを、視覚不要術ナットビジョンと、名付けられた。



 「それって、二人ともその特訓をしたんですよね? それじゃあ、また…」


 「いや、そこで一度決着はついた。勝ったのはシャドーだった。堅いことは考えず、直感で動くシャドーの方が習得しやすかったんだろう。後に、ライトも習得し、また同じ課題にぶち当たったみたいだがな」


 「なるほど…。じゃあ、これが出来ても、SSランクのヒーローなら、出来ていてもおかしく無いでしょうし、同じ方法を行っても、今後の勝ち目は無いのではありませんか?」


 「まー、そうだな。でもな、お前らはそれすら出来てないということは、この先、上位ヒーローに勝つことは出来ない。SSランクまではいかずとも、Sランクで9.9割、Aランクでは6割の奴が、これを習得している。ヒーロー、ノットヒーロー共にな」


 シュッ!!


 ボフッ!


 「おい、アクマ。気を抜くんじゃねぇ。やるからには本気でやれ」


 「やってんだよ。まだ始めたばかりだ、厳しくすんな」


 「甘っちょろいこと言ってっと、1年なんかあっという間だぞ?」


 「鬼! 毒鬼!!  …って、最初に目を瞑れって言ってきたのって、のっと…ぴじょん? を習得する為だったのか?」


 「ま、まぁ?… そんなとこだな。ってか、のっとじゃなくて、ンーッナットビジョンだ。鳥じゃないって言ってる暇あったら、特訓を続けろ」


 「言われなくともそのつもりだ!」


 (あー、絶対トンヅラこく気だっただけだわ。このアクマに言うと、うるさそうだし、何も言わないでいよう…)


 「後、一つだけ…」


 緑頭が申し訳なさそうに話すと、耳を向ける毒リンゴ。


 「さっきの少年二人って、ここの二つの街を作った人たちですか? おとぎ話や、昔話は聞いた事や、読んだ事はありますが、その二人の名前とこの街の由来は初耳だったので」


 「そうだ。この二人が分かれて街を作った事により、二つの街が出来た。緑頭が知らないのは、おかしい話ではない。この昔話は、限られた人間に受け継がれる昔話だからな。この昔話を全ての人間が知ってしまうと、街の均衡が崩れる恐れがあるからだって話だ」


 「そ、そんな話、僕達に話していいんですか!?」


 「んー、しらね。知らんことにしといてくれ」


 「ダートンさんといい、毒リンゴさんも、SSランクの人は、口が軽いですね」


 「口が軽いだと〜!?」


 緑頭の首を腕を回し締めようとする毒リンゴ。そんな二人を他所に、俺は集中していて、二人の輪に入らなかった。


 「こんな時ぐらい助けてくださいよ〜!」



 と、緑頭の声が、シャドーの森中に響いた。



 その声を耳にした、森の端に佇む女が、不穏な空気を纏い、聞こえた方向へ、目を向ける。

お読みになって頂きありがとうございます。

引き続き宜しくお願いします。

応援して頂けると幸いです。

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