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no't ヒーロー  作者: 陽向アカネ


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12/20

4-4話

 俺と緑頭の特訓は、日が暮れても続いた。目を瞑り感覚を研ぎ澄ませ、1分が経ったら毒リンゴのパンチが繰り出される。そして、俺達の顔面がパンパンに腫れ出した頃、


 「よし、そろそろ飯の時間だな。今日はこの辺で終わりだ。着いてこい」


 毒リンゴの手が止まり、今日の特訓を終える。


 毒リンゴへ着いて行った先は、シャドーの森の一番奥にある、shadowシャドー diningダイニングだった。


 「こんな所にも店があったんだな」


 と、俺が呟くと、毒リンゴは振り向くことなく、こう答えた。


 「あぁ、俺の連れが働いててな。可愛がってもらえ」


 と。


 カランカランッ♪


 「お、毒リンゴじゃねぇか。今日はおせーなと思ってたんだ… って、お前、いくつの時の子だ…」


 「俺のガキじゃねぇよ」


 扉を開け、目に入った店の中は、見るからに悪そうな集団が酒を飲み明かしていた。可愛がってもらえと言われたが、全然可愛がってくれるような雰囲気じゃねぇ。俺がよく行くシャドー居酒屋の雰囲気は、ここと比べれば、可愛いもんだ。



 「お前ら、いくつだ」


 さっきまで親しく毒リンゴと話していた男は、毒リンゴの子供じゃねぇと分かった途端、周りにいる男達と同じ目をして、睨んできている。


 「19っす」

 「…23歳です」


 「え!! 年上!?」


 「なんですか。まさか、年下だと思って、初めからタメ口だったんですか? はぁ… 社会人では、年上、年下関係なく、初対面では敬語で話すのが当たり前なのに、無礼な人だなと思っていましたが、さらに残念です」


 「いやっ、背も小さいし、ヒーロー経験も少なそうだったから…」


 「身長は関係ありませんよね。男は後から伸びると言っても、止まる人は怖いぐらいピタッと成長が止まるんです。これでも小学生までは大きい方だったんです。自分で言わせないで下さい。しかも、高卒だけがヒーローになれる訳じゃないですし。大卒の可能性…とは考えなかったんですか?」


 「し、仕方ねぇだろ!? ノットヒーローの免許取る為には、ノット高通わないと免許取れないんだからよう」


 「あー、だから、そんな世間知らずなんですね」


 「はぁ!? お前表でろや!」


 「はいはいはい〜、ちょっと落ち着こうか。ここ、どこか分かってんのか? あんま調子に乗ってたら、おじちゃん、相手したんで? 他所もんが勝手に盛りあがんな」



 俺と緑頭の間に入ったのは、毒リンゴでもなく、歳を聞かれた男でもない。角刈りでサングラスをかけた、コテコテな男だった。


 「あぁ、頼むよ。俺より弱かったら拍子抜けすっから、頑張ってくれよな。おっちゃん」


 「あぁん!? 毒リンゴの連れやから、やさしぃ言うてたのに、なんやその態度。ほんま一発絞めな分からんようやなぁ」


 「おい、コナモン。今日は大目に見てやってくれ。俺はコイツらに飯を食わさなきゃならねぇんだ。口が開かねーようになったら食べれねぇだろ」


 「…チッ。毒リンゴが言うんやったら、今日は大目に見たるか。ただ、ここにおる時に何かしらこいつらが怪しい態度したら、そん時は止められても止まらんで」


 「わーったよ。ほら、アクマ、緑頭、挨拶」


 ドスンッ!!

 シュパッ! タラー…



 毒リンゴが、俺と緑頭の頭を掴み床に頭を打ちつけられたと思えば、すぐに引き上げられ、頭から赤い物が垂れながら、俺達は簡単な自己紹介をする。



 「こ…んばんは。俺はアクマって言います。毒リンゴ… さん… は俺達がAランクになる為に、特訓に付き合ってもらってます」


 「ここここここ、こんばんは…。僕は、ヘッド・グリーンです。だから、名前は緑頭では御座いません。ここに居る理由はこの人と同じです」


 『毒リンゴ』で終わりそうになると、周りのメキメキと漂う殺意に圧倒され、渋々、さん付けをしてやった。緑頭は、相変わらずだ。


 自己紹介をした後、2、3秒沈黙の時間があり、アウェイな雰囲気に今にでも帰りたかった。


 こっちは、額に傷つくってまで挨拶してるんだぞ? 冷たい奴らだぜ…。


 と、思っていた時、カウンターの中に立っている、白髪、短髪の店主の男が、口を開いた。



 「そんなとこで突っ立ってねぇで、そこ、座れ。そろそろ閉店時間だ。早く注文してもらわないと、困るんでね」



 と、背を向けながらカウンターに指を差した途端、大ブーイングが始まった。ブーイングが起きながらも、赤リンゴは、空いているカウンターへ俺らを連れて行き、座るように言われる。周りがどんどん俺らを囲んで、今にでも、袋叩きにされそうな、暗いオーラを放っている。



 「お前ら! 人が飯食う時に、メンチ切ってんじゃねぇ… 早く戻らねぇと、出禁だからな」



 と、店主がそう言った途端、周りに溜まっていた奴らは、さっきまで座っていた席に戻った。そして、店主をじっくり見ると、何処かで見た事がある気がするが、何故だ…。引っかかる事があるが、それより腹が減ってもう限界だ。


 「お前ら、嫌いなものはあるか?」


 タバコを吸い始めた毒リンゴが俺と緑頭に問うと、食い気味に声を揃えて、


 「ありません!!」


 と、腹の音色と共に答えた。



 「フッ…。ベイク、いつものやつ、食べ盛りな若者仕様で頼むよ」


 「はいよ」



 俺達は、後ろでガヤガヤと声が響き渡る中で、何も喋る事なく、ベイクと言われていた店主の背中を見つめた。見た目はただのおっさん、ガラの悪い客ばかりがいる店で、まともな物が出てくると思えないが、作っている姿は、男の俺でも思うほど男らしく、飯を作っているだけなのに、見惚れてしまった。



 「待たせたな。これ、若者が喜ぶのか分からねぇが、これが毒リンゴの『いつもの』だ」


 俺と緑頭の目からは、涙が溢れ出した。


 「お、おい! なんで泣くんだ? 若者だと、もっとジャンキーな物が良いだろうけど、これも美味しいんだぞ!?」


 予想外の光景に慌てる毒リンゴ。周りの男達も、だんだん静まり返り、俺達を覗く。



 「違うんです…」


 と、緑頭。


 「そうだろうけど、せっかく作ってもらったんだ、そんなに嫌がるなよ」


 と、ベイクの顔と俺達の顔へ目が泳ぐ毒リンゴ。


 「そうじゃねぇ…」


 と、俺が口を開くと、俺達は口を揃えてこう言った。


 「暖かすぎて涙がでるんだ」

 「暖かすぎて涙がでるんです」



 「…だぁっはっはっはっ! なんだよ、そういうことだったのか! 焦らすんじゃねぇよ。ほら、泣いてねぇで、冷める前に食え。ここの飯は美味いぞ」

 

 笑いながら、少々強めの(かなり痛い)力で背中を叩かれ、俺達は食べ始める。


 「頂きます」


 緑頭の過去はあまり知らねぇが、俺と同じ反応をしている限り、母親の家庭料理を久しく食べていなかったのだろう。ライト街には、飯屋が充実しているが、金がないと良い物は食べられない。シャドー街は、そもそも家庭的な飯屋は、俺の知る限りここだけだ。闇を持つシャドー街の住人は、こんなにも暖かな飯を出してくれる店があると知ると、殺到するからな。殺到する、=(イコール)、問題トラブルが起きやすい。面倒ごとになるぐらいならと、そんな店は存在しなくなったらしいが、少し腑に落ちた。こんなにもガラの悪い客が居て、店主のベイクの一言で、一斉に動くほどだ。問題トラブルが起きても、対処できるほどの強さを持ち、問題トラブルを、起こせば何をされるか分からないと思わせるほどの、人物だろう。一体何者なんだ、ベイクという男は…。



 「したっ!」

 「ご馳走様でした!」


 食べ終わった時の俺と緑頭は、目と腹を腫らせていた。


 ゴロゴロ〜、ゴロゴロ〜


 そう、ボールの様に、転がるほど…。


 

 ガシッ!!


 転がる俺達を、止めたのは、初めに毒リンゴへ話していたおっさんと、コテコテのおっさんだった。


 『絞められる!』 と、悟った、俺達は、起きあがろうとするが、身体が重くて、顔を真っ赤にして、手足をパタパタと動かす事しかできなかった。



 だが、おっさんの二人は


 「お前ら、可愛いとこあるじゃねぇか!!」


 と、ボーリングのマイボールの様に、撫で回され、俺達は、その圧迫と揺れでリバー…



 そんなこんなで、毒リンゴが言った通り、メンチを切っていたガラの悪い客達は、俺達を快く迎えてくれる事となった。


 ちなみに、ガラの悪い客は毒リンゴの部下達だそうだ。そして、店主のベイクは、毒リンゴと同期だった。そこまで聞いても、ベイクがなぜ見た事があるのか、まだ分からない。

お読みになって頂きありがとうございます。

引き続き頑張って参りますので、次回もご覧になって頂けると、幸いです。

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