5-1話 襲撃
ひとしきり毒リンゴの部下に揉まれた後、俺達は家に帰ろうとした。が、
「あのー、アクマさん?」
なんだ、緑頭のやつ。なんだか、しおらしいな。いつも名前なんか呼んでこないのに。嫌な予感がするんだが…
「なんだ」
表に俺の本音を出さず、堂々と聞いた。
「家、泊めてもらってもいいですか?」
「はぁ!? こっちに来る時、普通、宿決めてから移住すんだろ! ダートンでも家に入れた事ねぇのに、お前はもっと無しだ! そもそも男同士の共同生活なんぞ、俺はしたくねぇ」
別に本心は家に入れてやってもいいが、なんだかコイツには素直になれねぇ。
「仕方ありません…」
「お、おい…。 何する気だ!!!?」
緑頭は、大事な所を、いつも持ち歩いている枝でなにか、しでかそうとしている。
「ちょっっっと待て!!」
「何ですか。男同士がダメなら、これを取るしか…」
「だーー!! から待てって。女でも無理だから! 俺、女とつるんだの中坊までだ。それから一切絡んでねぇんだよ。うぶな俺が、女を家に入れるわけねぇだろ! って、お前が恥ずかしがんな!!」
必死になっている俺に、
「なんだなんだ、帰る場所がねぇのか?」
と、見かねた毒リンゴが声をかけてくれた。
「おう…。こいつが…」
俺が、緑頭へ指を差すと、
「コナモン! ちょっと来い!」
毒リンゴの呼び出しに、まだ店に残っていたコナモンがやってきた。
「なんですか、毒リンゴさん」
「緑頭、宿がないんだと。どっか空いてるとこに、住ませてやってくれねぇか?」
「あー、わかりやした。ただ、無賃だと住めても1年までっすよ? 1年後、まとめて請求ってなるんすけど、大丈夫っすか?」
「大丈夫だ。まとめて請求するんなら、今、俺が払う。いくらだ」
「えぇっ! こんな急な話やのに、今、請求なんか毒リンゴさんに出来ねぇっす」
「良いから言ってくれ。借りを作ったままだと、俺が嫌なんだよ」
「ほんまですか…? えーっと、じゃあ、
お言葉に甘えて、240万ピローっす」
「たっ!!…。いや、なんでもない」
毒リンゴは財布から240万ピローを出すが、手から離さず、コナモンに渡らない。異常にプルプルしている様子を見ると、察しがつく。
まぁ、俺からすれば関係ない話だ。そのまま俺は、毒リンゴ達と離れ、俺の家に戻った。
「はぁ〜疲れたな。風呂入って速攻寝よ。…あれ? 鍵が開かない…」
俺は急いで借りてる家の管理人に電話をした。遅い時間だったが、管理人は夜方の為、すぐに出てくれた。
「あのーすみません。家に帰ってきたら鍵が開かないんすけど。鍵が壊れちまったかもしれなくて…、スペアキーもらえないっすか?」
それを聞いた管理人の言葉は、
『アクマさん… 何ヶ月滞納してると思っているんですか。そりゃあ、鍵変えま…よ』
だんだんとフェードアウトしていった。
そして、同じく俺の膝もフェードアウトしていった。
くそ〜!! 家賃はなんだかんだ待ってくれてたから、光熱費を先に払ってたんだよ。そうしたらだんだん払わなくてもいけんじゃね? って甘えてたのが、今、追い討ちくるのか!?
最近、任務も出ていないから、収入ゼロだぜ? くっそー!! 緑頭の家の話をしてる時に、便乗するんだった。まじかー、今から俺、家無し? ってか、荷物も家の中に置きっぱだよな? 終わった…。
絶望している俺だが、頭の中に、二つの候補が出ていた。まず一つ目、ダートンの家に止めてもらう。もう一つは、緑頭の家に入れてもらう事だ。前者は、付き合いは長いが、家を知らない関係だ。俺の家は知られているがな。まず、こんな時間に起きているか分からねぇ。後者は、なんか言いたくねぇ。頼み事した後の、アイツの顔が想像つくからな。しかも、アイツの連絡先知らねぇし。
俺はとりあえず、ダートンに電話を掛けた。
プルルル… プルル… プチッ。
「はい。アクマ、こんな時間にどうしたんだ?」
出たーーー!!
「起きてたんだな。あのさ、悪いんだけど、家泊めてくれねぇか? ちょっと訳あって、家に入れねぇんだわ。頼む!」
「…あー。ごめん。今、家に居ないや」
家に居ないパターンね!!
俺の頭の中で、ゴングが鳴り響く。
「そっか! お前、忙しいもんな! 悪かったよ、こんな時に電話して。じゃあ、また…」
「毒リンゴさんの連絡先送っておくよ。毒リンゴさんの周りに、不動産の仕事している人いるみたいだし。聞いてみるといいよ」
さっき会ったんだよ、その人に…。
あの時に、家があると調子こいていた俺の姿が脳を焼く。
「わりぃな。まっ、仕事もほどほどに頑張れよ。俺もすぐにお前のとこまで追いつくからよ」
「そうだね…。待ってるよ」
「ん。じゃ…」
「ん」
プツッ。
最後のダートンの声が、いつもより暗く感じたが、気のせいだろうと、深くは考えなかった。ダートンからすぐに送られてきた、毒リンゴの、連絡先を見つめ、ため息を吐く。
「っしゃあねぇ…」
俺は、毒リンゴの連絡先をタップし、電話を掛けた。
プツッ。プルルル…
「はい。どちら様でしょうか?」
「はや!!」
「おー、アクマか。どうした?」
いざ、頼むとなると、さっきの俺の調子こいていた事に、目を向けられず、
「あっ、いやー、ダートンから連絡先送られてきたからよう、俺だけ知ってんのもアレだから、連絡入れただけだ」
「あー、そうなのか! お前も家がないんだな?」
はぁーーーー!? なんでバレた?
「いや、家あるけど」
「えっ、そうなのか? てっきり、お前の事だから、帰る家がないくせに強がってんだと思ってたからよ」
「あの時までは、あると思ってたんだよ!…あっ」
「ほら。家が無いんだろ? 子供の強がりは、大人にはバレバレだぜ〜?」
「ちげーよ。本当に、今日の朝までは家に入れてたんだよ」
「まっ、今日はもう遅いから、明日、コナモンに伝えるとするか。位置情報送るから、そこまでこい」
「わかっ…」
プツッ。
電話出るのも早いけど、切るのもはえーなー!! 助かったけど…。
それから、毒リンゴから送られてきた位置情報の元へ向かった。きっと毒リンゴの家だろう。
ここだよな…?
ピンポーン…。
ガチャッ。
インターホンを押すと、足音が聞こえ、扉が開いた。
「なんでお前が…」
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