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no't ヒーロー  作者: 陽向アカネ


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5-2話

 

 「おっすー、たく…アクマ。久しぶり」


 「な、なんで、お前がここに居んだよ」



 家から出てきたのは、唯一、中坊の時に、女で仲が良かった、春華はるかだった。卒業する頃には、俺がノット高に進学するのが決まって、疎遠になっちまったがな。皆に馬鹿にされる俺と一緒に居るのが、恥ずかしくなったんだろう。春華は、真面目な方ではなかったが、ヤンキーでもなかった。人と違う道を進むのが苦手だった印象だ。俺がノット高に行くのを、初めは止めてたしな。


 でも、そんな春華がなんでここに…



 「はる…」


 「待って。ココでは、シュークリームだから」


 人差し指で俺の口を塞ぎ、ノット名を告げる春華。


 「シュ、シュークリーム!? 確かにお前お菓子作りは上手かったけど、名前にシュークリームって」


 クスクス笑っていると、はる… シュークリームの顔が赤くなり、玄関を閉められた。おまけに鍵までもな。



 ドンドンドン!!



 「ちょっ。悪かったって! 俺、明日も朝早いんだ、1日で良いから泊めてくれ。頼む!!」



 カチャッ、カチャッ!


 強めに鍵を開ける音が聞こえ、再び玄関を開けてくれた。


 「言っとくけど、アクマって名前も、シンプルにダサいからね」


 グサッ!!


 言葉の矢が、俺の胸に突き刺さる。


 中に入れてもらうと、甘い匂いが漂っていた。部屋は、無駄なものは無く、きちんと整理されていて…


 って、シュークリームに家を泊めてもらうだと!? たとえ今日だけだったとしても、女の家は緊張するぜ… 特訓の後だから、足、ぜってぇくせぇよな? 床につくのが申し訳なくなり、とりあえずその場で逆立ちをした。


 「ちょ、なに? いきなり。臭い足を上にあげないでよ」


 シュッシュッシュッ…


 消臭スプレーを俺に直接かけてくるシュークリームだが、なんだこの感覚…。娘が父親に臭いと言っているような…。あぁ、肩身が狭い。これだったら、緑頭に連絡したほうがマシだったか? あ、連絡先交換してないわ。結局、こうなるのが運命だったってわけか…。


 そう、頭の中で独り言を言いながら、デカいソファに欠伸をしながら寛ぐ、シュークリームを見つめた。



 「床に足つけて良いから、とりあえずこれ飲んだら? 私、早く寝たいし、軽く説明だけするわ。私がここにいる理由、聞きたいんでしょ?」


 「お、おう…」


 「って、そこ座んな! なんで、あんたと隣に座って会話しないと行けないんだよ」


 「いや、中坊の時は、外で横並びになってダベったりしてたし、おかしくねぇだろ」


 「何年前の話だよ! しかも、ここ家ん中だし」


 デカいソファに二人で座るのは、そんなにおかしい事なのか? 多分これ、6人は座れるはずなんだが。女は何考えてるかわかんねぇな… って、このセリフもおっさんみたいか? あー、シュークリームといると、俺老けるわ。


 対面になるように、座り直して、話は始まった。


 「毒リンゴさんに助けてもらった事があるの。中学2年の時だったかな。そこから、ノットヒーローに興味が湧いたからノリでこうなった」


 「中2って、立てこもり事件の時か?」


 俺らが中2の時、コンビニで立てこもり事件があった。そのコンビニの中に居たのが、買い物中だった、シュークリーム。他に客は居たが、店員一人とシュークリームのみ店に残されたらしい。大人でも怖い状況の中、中学生という若さで、とても辛い経験をしたはずだったが、シュークリームには、落ち込んでいる様子は見えなかった。強がっているだけだと思っていたが、毒リンゴの奴、良い仕事したんだな。



 「もっと落ち込むはずだったけどよ、あの時、元気だったのは、それがあったからなのか。ちなみに、俺も中1の時、ノット高に入れてもらう為にこっち来た事あっただろ? その時にボコられたのが毒リンゴだって今日知った」


 「あの無謀な行動ね」


 「ってか、お前、ノット高にいたってことだよな? 全然知らなかったぜ」


 「めっちゃすれ違ってたけどね。アクマ、自分の事しか考えてないから、気づかなかったんだよ」


 「確か、お前、髪長かったよな? なんで切ったんだ? それと、なんだか大人びた感じが…」


 「…そ、そう? って、髪切ったなんて、どうだっていいでしょ。切りたいなと思って切っただけ」


 「ふーん。長い髪も似合ってたけどな」


 「それ、あんたが言う!? 中学の時は、ロングの私に、ショートも似合うだろうなって言ったのに」


 「え、そうだっけ? まぁ、今も似合ってるけどよ」


 「本当、適当だよね、アクマって」

(ここにきた理由…。もう一つは、…アクマが心配だったからよ。なんて、今は言えないな)


 頬を赤らめているシュークリーム。


 「適当じゃねぇよ。思った事を言ったまでだ」


 「はいはい、じゃ、私がここに来た理由は、話したし、寝てくるわ〜。アクマはソファで寝てくれたらいいから。お風呂はあっち、トイレはこっち。明日も特訓なんでしょ〜? 早く寝なよ〜」


 「おう。そういえば、お前は、ランク大丈夫なのか…… はっ!!」


 俺はやってしまったかもしれない。1年経つ頃にAランク以上でなければ資格が剥奪される事を、黙っておかないとダートンに殺されるからだ。一気に冷や汗が出てくる。


 「あ〜、私、Sランクだから。なんか言っちゃいけない事言ったみたいな顔してるけど、それ結構みんな知ってるよ?」


 「はぁ〜!? んで、 はぁ〜!?」


 「へへっ。誰に聞いたのかは知らないけど、騙されてやんの〜。そんなんだから、Cランクにされるんだよ」


 「カッカカ…」


 「まぁ、おやすみ〜」


 …ダートンの奴ーーーー!! 次あったらぜってぇブッ飛ばす。しかも俺、シュークリームにも負けてんのかよ。はぁ…だるー。こんな時は風呂入って速攻寝る!



 と、思っていたが、女の家に泊まる事自体初めてなのに、風呂まで借りる事になり、羞恥心に襲われ、全く眠れなかった。


 こうなるんだったら、外で寝たほうがマシだったか…?


―――――――――――――――――――――――――


 その頃、シュークリームの様子は…。


 バフッ。


 ベッドに飛び込み、顔を赤らめ、少し切ない表情。


 (シュークリームって、そんなに変かな? なんか見た目もポコポコして可愛いし、ケーキが苦手でもシュークリームは食べれる人もいるのに、何がダメ? そもそも、アクマが昔、私のお菓子作りで大好物だったのがシュークリームだったのに、そんな事も忘れてるんだ…。心配でここに来たけど、それもいらない心配だったのかな…)


 枕に顔埋めて、ゴロゴロ転がり、落ち着かなかった。


―――――――――――――――――――――――――

お読み頂きありがとうございます。

引き続き宜しくお願いします。

応援して頂けると幸いです。

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