3-3話
緑頭は、ノットヒーローになるまでの経緯を話す。
「僕は、シン・リンに憧れて、ヒーローになりました。元々持っている能力が、木の枝を使った能力なので、似ているところもあって、好きになったのですが…。ヒーローになると、任務は自主制だったので、ヒーローになってからの僕はあまり任務に携わることは無かったです。ほぼ、推し活をしていたようなもので、シン・リンが向かう先に、こっそり着いて行ってたんです」
「けっ。お前がストーカーかよ」
「貴方に言われたくないですけどね」
「もうアクマ!コラッ! すみませんねぇ、ヘッドさん続けてくれますか?」
「はい…。僕が推し活を始めて…」
「だから、ストーカーだろ?」
「アクマもういいって」
緑頭は、俺に睨みを効かせた後、話し続けた。
「僕が推し活を始めてから、半年が過ぎた頃、見たくない情景をみてしまったんです。シン・リンが、悪事に手を出していないエネミーを、でっちあげる所を。目を疑いました。信じたくは無かったから。でも、それからは、真っ当なやり方でヒーロー活動をする姿は無くて…。きっと、本人も焦っていたんだと思います。低ランクのヒーローは、どれだけ任務を果たしたとしても、なかなか上に這い上がるのは難しい。目立った能力、実力が無いと、上には行けないんです。どこでも一緒ですけど。しかも、推しのヒーローを僕の力で通報するのは、当然出来ない。だから、ノットヒーローが駆け寄ってきた時に、誘導して、見つけてもらおうと思ったんです。結局、通報するのと一緒なのですけど、少しでも、僕だけが原因にはなりたくなくて…」
「だから、その頭と服だったのか!?」
「いえ、これはただの趣味です」
「なんだよ。ややこしい奴だなー!」
俺と緑頭のやりとりを見て、ダートンは何故か、微笑ましく見ている。
「なるほどねー。じゃあ、アクマは救世主ってわけだ」
「いえ、違います。ちょうど来たのが、この人だっただけで」
「そ、そっか。あははは。で、何故、ノットヒーローに?」
少しひりつく空気を纏いながら、緑頭に聞くダートン。その空気に恐れながらも、緑頭は口を開く。
「ヒーローになって、自分の仕事はほとんど何もしてこなかったけど、周りを見ていると、僕はこっち側の人間じゃないのかもと思ったんです。憧れだけでなったので、現実とは違う事に戸惑いもありましたが、己のやりたい事をやっているノットヒーローを見て、人の為に動く前に、己を大事にして仕事を全うしたいと思ったんです。転職するにも、何も取り柄が無いから、一般の仕事に復職する勇気がないというのも理由にありますが…」
「俺様のお陰で、無職、お先真っ暗にならなくてよかったな」
「はい? 最後のキッカケが貴方なだけで、前からノットヒーローになろうと思っていましたよ。シン・リンの暴走を止めてくれるまで、待っていただけです」
「はぁ… 素直じゃねぇなぁ」
「よしっ!」
手を叩き話を切り替えるダートン。
「そういう事なら、僕の出来る事は限られているけど、協力するよ。ノットヒーローは、上からSS、S、A、B、C、と、ランクがあるのは、知っているかな?」
「はい。そこはヒーローと一緒なので」
「そこでなんだけど…。ヘッドくん、ここでやって行く為には、ランクを最低でもAまでは上げないといけないね。アクマもそうだけど」
「ランク上げですか…。あまり興味がないんですけどね」
「そんなものわかってんだよ。だから、焦ってんだ」
「本当に分かってる?」
ダートンが、いきなり真剣な目つきに変わる。
「な、なんだよ…」
何を言われるか分からず、少し焦る俺と緑頭。
「ノットヒーローを取得して、1年以内にAランクにならないと、免許剥奪。知らなかったでしょ?」
「はぁああああ!? 聞いてねぇよ、そんな話!」
「ぼぼ僕も、初耳です!」
「そりゃあ、そうだよ。公式で発表されていないからね。警告なく、1年経った時に、会長に呼び出されて、即、剥奪だから」
俺は、空気が抜けたように力が抜ける。緑頭は、座ったままポカーンだ。
だってよう、最低ランクのランクCだぞ!? 1年で2ランクアップなんて、すでに会長の呼び出しを2度も喰らってる俺に、無理だろ。
「びっくりさせてごめんねー。でもね、言っとかないと、本当になっちゃいそうだったから。僕、優しいでしょ?」
「もっと早く言ってくれよ…」
死にかけた俺の言葉に、
「口止めされてたからね。まぁー今もだけど。バレたら怒られるだろうなー、僕。だから、絶対に言っちゃダメだよ。言ったら、どうなるか分かってるよね?」
俺のパワーでも跳ね返せないほどの、恐怖の圧で、暗示をかけるダートン。
「はい…。必ず。誰にも言いません。ダートン様…」
「ならよしっ」
真剣な眼差しから、いつものおちゃらけたダートンに戻った。
「でも、どうやって、ランク上げをすれば…」
緑頭が、切実な質問をする。
「能力の底上げ。これに限るね。贅沢を言えば、新たな技の習得も。簡単に言えば、会長に認めてもらえれば、SSランクにもなれる可能性はあるってこと」
「え、会長の独断ですか? ランク査定の機械、導入してないんですか?」
「へぇー、ヒーローはそうやって決めてるんだ。アクマは経験してるから知っているけど、ヘッドくんは知らないもんね。ここは、会長が全て決めるんだ。理不尽に思うかも知れないけど、逆に好都合でもある。機械だと、設定された能力、知能を基準に判定されるから、ランク上げは厳しい。でも、ここは、会長に気に入られれば上に行ける。そう思えば、簡単に思えるでしょ?」
「簡単じゃねーよ。それが一番難しいんだよ」
食い気味に俺が言った言葉に、
「アクマはそう思うよね。パワーも、能力も、Aランクに通用するから。でもね、それでもAなんだよ。会長が実践をするのは今じゃないって言ったのもそういう事だと思うよ」
一つの希望を与えてくれた。
「そうか! もっと強くなれれば、会長も俺にランクを上げざるを得なくなるって訳だな! 簡単じゃねぇか!」
「そうそう、簡単簡単っ」
緑頭が何か言おうとしたが、俺に気づかれないように、ダートンは口元に指を当て、緑頭が何か言い出すのを止めた。
「そうなれば、シャドー街を案内した後、特訓だね!」
「お願いしゃす!!」
「お願いします!」
俺と緑頭は、ダートンに頭を下げた。
シャドー街を案内しながらも、満喫しながら周り、特訓の事を、忘れかけていた、俺と緑頭。一通り、シャドー街を周った後、シャドーの森へ向かった。
「この辺りでいいかな? よし、始めようか。まずはとりあえず、思いっきり僕に攻撃してみて」
ダートンは、仁王立ちで、手招きをして、俺と緑頭を誘う。
「随分と余裕じゃねぇか、お兄さん! 遠慮なく行かせてもらうぜ!」
「SSランクのダートンさんに、遠慮などしていたら、いつまで経っても当たりません! 失礼ながら、僕も本気で行かせて頂きます!」
2対1で、不利な立場にも関わらず、俺の本気のパンチも、緑頭の枝を使い、伸びた枝で拘束を試みるも、叶わず、すぐさま、絶対防御を唱えたが、ダートンの手が俺達の首に当たり、手音振動によって、気絶させられた。手音振動は、ダートンの能力の中の一つ。文字通り、手から音を放ち振動させ攻撃する。手加減をされていなかったら、倒れて動けない程度では済まない。
倒れ込んだ俺達を頬を叩いて起こし、上から覗き込みながら、
「これじゃあ、ランクアップどころか、ランクダウンするんじゃないの?」
と、煽ってくる。すかさず、俺は立ち上がり、もう一度攻撃を試みるが、避けられた挙句、絶対防御の効果発動中にも関わらず、俺が攻撃を受け、全く歯が立たない。
「アクマ。なんで、絶対防御中なのに、攻撃が当たると思う?」
「まー、俺に攻撃をする目的で攻撃していないからだろう」
「まー、そうだね。どうやったと思う?」
「何か別の物を標的にして、攻撃したとかか?」
「お? アクマ、戦闘中に、そんな事考えれるようになったの? 偉い偉〜い」
「ちょっ! ヨシヨシすんなっ」
「僕が居ない、あの1日で、何かあった?」
「あー、なんか、鍵持ってる輩に絡まれたり、緑頭の推しの奴らを倒したぐらいだなー」
「鍵!? そいつは、今どこに?」
「知らね。ボコボコにして、そのまま放ってきたからよう」
「ははっ。アクマらしいね。そこで、考える力が少し着いたんだ。なら、ここから伸びるよ、アクマ。気を抜かない方が良い。閃く力っていうのは、経験が無いと身につかないから」
「えぇー。考えんの、めんどくせぇーから、直感でも勝てるようになりてぇんだけどな」
「そんなに甘く無いよ。しかも、じっと考えていたら、その間にやられる。考えながらも実行して、相手がSSランクであろうと、試す時間を作れるようにはなっておかないと」
「へいへい分かりましたよ…」
「ヘッドくん、さっきから動かないけど、大丈夫かい?」
俺が2度目にダートンへ挑んだ時、緑頭は、何もせずその場で座っていた。
「認めたく無いですけど、この人みたいにパワー系では無いですし、僕の持っている能力も、そこまで威力が無い。特訓して変われるのだろうかと考えていたら、身体が動かなくなってしまって…」
「まー、俺様は天才だか…」
「アクマ黙って」
普通に注意された。そりゃそうか…
ダートンは寄り添うように、緑頭を勇気付ける。
「ヘッドくん、何故、君がCランクでは無く、Bランクを貰えたか、分かる?」
「全く分かりません。ヒーローの時は、Cランクでしたから」
「会長は、ヘッドくんがAランクに達すると、見込みがあったから、Bランクにしたんだと思うよ。じゃないと、ヒーローからノットヒーローになるのに、高待遇を与えて、その人がスパイだったらどうする? 最悪の場合も考えて、会長はランク査定をする。じゃあ、君も伸び代があるって事だよ」
緑頭は神様を見たかのように、目を輝かせ、
「頑張れる気がして来ました」
と言い、最後にはダートンに向かって、拝んでいた。
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