2-3話
「よぉ! 二人がかりで、弱いものいじめですか」
追われていたおっさんは蹲り、シン・リンとコンが上から詰めている所を、俺が割り込んでやった。
「誰だぁ? お前」
男にしては高めの声で、挑発するように、突っかかってくる、コン。
「貴様はもしかして… ヒーローインタビューの…」
「あー、その話はやめてくれ。俺の黒歴史だ」
シン・リンは、図太い声で、ドッシリと構えた様子だ。実際に見ると、緑頭と全然似てねぇなー。
「悪かった。誰にでも掘られたくないものはあるよな。で、何が目的だ? エネミーの解放なら、致し方ない。こちらも任務を遂行しなければ行けないのでね」
「おう! 上等だ! だが、待て。先に、このおっさんの話を聞いていいか?」
と、言った途端、コンが、シン・リンの背後から高く飛び上がり、俺に向かって、デカい口を開けながら飛びかかってきた。
俺はすかさず、絶対防御を唱え、コンの攻撃を防いだ。
「いいじゃねぇかよ。ちょっと聞くだけだ、な?」
「まぁ、いいだろう。二人同時に豚箱に放り込む事が出来るんだ。待ってやろう」
コンが今にでも俺に飛びかかりそうなのを、抑え込みながら、シン・リンは俺の話に承諾した。
蹲るおっさんに、俺は、膝を曲げ目線を合わせる。しっかりと抱き抱えられたうさぎの後ろ姿は、何だか苦しそうだ。
「なんで、これが欲しかったんだ?」
恐る恐る、俺と目を合わせたおっさんは、
「子供のためだよ。ライト街に売っている、この『イケおじうさちゃん』が欲しいって言ったからだよ」
と、涙を浮かべ、答えるおっさん。
「本当に、イケおじの顔してんじゃん! ギャップありすぎてびっくりしたけど、今はこんなのが流行ってんだな。そりゃあ、盗むまでしても、子供にあげたくなるわ」
何か他に言いたげなおっさんに、分かっていると肩を叩き、そのまま両脇に手を入れ、こう伝える。
「おっさん、歯、食い縛れよ!」
おっさんは訳もわからず、グッと目を瞑り、食い縛る。
「はい、3、2、1。発射ー!!」
おっさんを頭上まで持ち上げ、後ろにそり返りながら、遠心力を使い、遠く後方に吹っ飛ばしてやった。
「ひぃやぁああああ!!!」
「そんだけ飛んでいけば、逃げれんだろ! 後は自分の足で頑張れよ!」
遠くに飛んでいくおっさんに向かって声をかけた時、コンの足が見え、すかさず握りしめ、動きを封じる。俺の手によって、宙吊りになったコンは、首元に食いかかろうとしてくるが、絶対防御のおかげで痛くも痒くもねぇ。
「貴様っ…。話をして良いと許しただけだ。逃して良いとは言っておらんぞ!」
「あのエネミー、着地大丈夫なのか? 生身のただの人間だろ?」
さっきまで落ち着いていた、シン・リンが、顔が赤くなり、マグマのようになっていく。コンは、俺に攻撃が効かず諦めモードになり、宙吊りのまま腕を組み、おっさんの心配をする。
コンを左手で握ったまま、
「これで1対1になったな。でも、俺優しいからさ、ハンデをやるよ」
と、残った右手を振りながら挑発し、シン・リンとの戦闘が始まった。
初めに仕掛けるのはもちろん俺様。…だが、右手で、渾身の一撃をシン・リンに与えたのにも関わらず、図太い木のようにびくとも動かない。内心、俺は凄く焦っている。何故なら、俺のパンチをまともに受けれる者にまだ出会った事が無かったからだ。ハンデをやると、息巻いた事で、自分の首を閉める形になってしまった。
そんな俺を待つ事なく、シン・リンの反撃が始まった。
「森林の成長!!」
と、シン・リンは腕組みしたまま動かず、特徴的な緑頭がどんどん成長して行き、シン・リン自体が木になる。そのまま、伸びた葉のついた数百本の枝が勢いよく俺に向かって来るのを、堂々と迎え撃つ。俺の絶対防御の効果があるうちは、絶対に当たらないからな。
「想定内だ。だが、いつまで持つかな」
向かってきた枝がどんどんと俺を巻き付けていく。ここで、効果が切れたら、俺はボンレスハムの様に締め付けられるだろう。ちなみに、俺の絶対防御の効果は、5分だ。これが二つ目の俺の弱点。この効果が切れれば、パワーのあるただの男になっちまう。絶対防御の効果は残り2分。この間に、シン・リンをやらなければ俺はやられる。だが、未だに俺は焦っている。俺のパンチが効かない奴に、どうやれば勝てるのか、全く分からない。頭のキレない俺には、超難問を突きつけられているからだ。
とりあえず、巻き付けられた枝を、Tシャツを引き裂く様に引き離し、拘束からは解かれた。コンは俺への敵意は消失しているが、何故か、余裕の笑みを浮かべている。持久戦へと、持ち込もうとするシン・リンとまだ余裕があるコンの違和感にモヤモヤするが、考える事なく、パンチやキックで、シン・リンに立ち向かった。
焦りながらも、何もせずには勝機が無い俺は、無我夢中で攻撃を続ける。そして、効果が切れるまで残り1分を切った…。
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