表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
no't ヒーロー  作者: 陽向アカネ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/16

1-2話

 「昨日、午前7時頃、新人ヒーローが、快挙を成しました。ヒーロー達は民を救出し、消火を待っていた様子でしたが、まだ犠牲者が施設内に生存しておりました。では、昨日の中継をご覧ください」


 〜中継〜


 「何故、まだ犠牲者が残っていると分かったのですか?」


 「まだヒーロー登録に名前が無いようですが、ヒーロー名は?」


 「ヒーローと警察が貴方の事を警戒して、攻撃していたそうですが、どのような能力をお持ちなのでしょうか?」


 新人ヒーローはマイクを受け取り、眉間に皺を寄せ、顔がハバネロのように赤い。


 「俺は! ノットヒーローだーーーーー! ヒーローじゃねぇ! くそが!」


 新人ヒーローは、マイクを投げ飛ばし…


 プツッ…!



 「これはどういうことかね。アクマくん」


 ノットヒーロー本部、ジュラ会長が、不気味な笑みを浮かべて、俺に問う。


 「ぐうの音も出ないです。頭では分かってたんです、でも、体が勝手に… あの後、ヒーロー狩りをするつもり…」


 「その釈明をすると、ルールを破っても良いと証明されるんだね。だとしたら、どうぞ続けて」


 「…いえ、申し訳ございませんでした」


 俺は深々と頭を下げると、


 「ダートンくん。君も一緒に居たようだが、何か話はあるかね?」


 次は、後ろにいたダートンに問う。


 「申し訳ございません。でも、エネミーは救助しました。ルールを破ったと言っても、アクマのお母様ですし、致し方ないかと」


 「そうだね〜。お母様ね〜。それが、シャドー街の住民だったらね。アクマくんのお母様は、ライト街の住民でしょう? 交わってはいけないね〜。ね? ダートンくん」


 「はいっ! 申し訳ございません。口を慎みます」


 成績優秀だったダートンでも、ジュラ会長の圧には勝てなかった。それほど、ジュラ会長は、会長に相応しいということだ。


 「で、アクマ。久しぶりのお母様はどうだった?」


 会長は、不気味な笑みから、柔らかい表情に変わり、まるで理想のお父さんのような優しく包まれる感覚だ。



 「相変わらずでした。俺なんかを応援してくれる人なんて珍しいですから」


 「そうか。厳しいことを言うようだが、団体で動いているとな、一人でもルールを無視すれば、脆く崩れてしまうんだよ。それは、分かっているね」


 「はい…。次からはこういった事が無い様、約束します」



 本来なら、罰則が付くはずなんだが、今回はお許しを得て、そのままノットヒーローを続けて行けるようになった。本部から外に出た俺達は、朝食を食べに、シャドー喫茶店に寄った。


 カランカランッ。


 「シャドーコーヒーと、シャドーサンド二つずつ下さい」

 

 「かしこまりました」


 喫茶店のマスターが一人でやっている小さな喫茶店。シャドー街でも、ここは、限られた人間しか入れない。何故ならここに入れる条件は、まず一つ、ノットヒーローのみ。もう一つが、SSランクのみだ。え、俺か? そんなもの、SSランクじゃないに決まってるだろう。ダートンがSSランクで、上手く言ってもらって、通えるようになったんだよ。


 カウンターテーブルに俺達は腰掛け、話し始める。


 「アクマ。思ってたのと、違う目立ち方したけど、実際はどうなの? アクマは、ライト街出身でしょ? あのままヒーローになろうと思わなかったの? 目的が目立ちたいんだったらさ」


 俺は指を横に振り、


 「確かに、ライト街出身だ。でもよう、合わなかったんだ。純粋な光に浴びて映るヒーローの横で、負け試合をするエネミー、ノットヒーローが邪険にされる世界が」


 「ふーん。でも未だかつて、ノットヒーローがヒーローに勝った事ないんだよね。アクマは能力値は高いけど、使い方が不器用なんだよ。0か100かみたいなね。今のままじゃ、ヒーローより目立つのは難しそう」


 「はいはい、成績優秀、卒業と同時にSSランクになったダートンくんには、到底叶わないですよー」


 「いやいや…。僕がこの能力を得たきっかけは、大事な人が目の前で殺された時だよ」


 「うおー、ぶっこむね。結構、壮絶な過去があったんだな」


 

 珍しく自分の話すんだな。


 おちゃらけた表情から寂しげな表情に変わるダートン。


 「あぁ、僕の耳が聞こえなかったせいで、その人は殺された。最後に言われたんだ、『俺の事は良い。悔しいなら、お前の欲しいものを諦めるな。そうすればきっと、強くなれる』ってね。それから、全く聞こえなかった世界が、少しずつ聞こえてくる様な気がしたんだ」


 「その、大事な人?からの、プレゼントだな。良いプレゼントもらって良かったじゃねぇか」


 「それがね、そんな良いものでもなかったんだよ。それまで、人との会話は、口の動きを見て判断していたんだけど、戦闘には全く向かないし、外からの音が聞こえる様になったんだと思ったのは、身体に伝わる振動。プチプレゼントだよ、ほんと。まぁー大変だった。周波数ってなに? から始めて、同じ音程に聞こえる言葉でも、言葉が違うと、微妙に違うんだ。今はもう慣れたけどね」


 「じゃあ、俺の頭の中に伝えてくるやつは、どうやってんだ?」


 「これだよ」

 

 ダートンはいつも身につけている、ヘッドフォンへ指を指す。耳が聞こえないのは知っていたから、ファッションで着けているものだと思っていたんだが。


 「それは、音を聴くものだろ? なんでそれを人に伝えることもできるんだ?」


 「大事な人がヘッドフォンをくれて、使わずに家に置いてたんだけど、手に取ったら、閃いてさ。これを見えないコードにして、人の頭に繋げたらどうなるんだろうって」


 「おぉ! 考えたなぁ!」


 「我ながらに名案だと思ったよ。弱点を武器にするなら、抜かり無くやっておかなきゃね」


 「そうかぁ… 今ダートンと話せているのも、努力の結晶ってことだろ? よく頑張ったな」


 「… 生意気」


 「あぁん!? やんのか?」



 俺の物音で、マスターがジロッと睨みを効かせてきたことにより、ネズミのような肩身の狭さの現実に気づく。



 「じゃあ、アクマはどうやってその能力を得たの?」


 テーブルに肘を付き、次はダートンが俺の能力に興味を示す。


 「あぁ、俺? 中学の時に、ノットヒーローの本部に直談判しに行ったことがあってよう。高校からじゃないと入れないと帰されたけど、諦めきれなくて、ここの強いやつと戦わせろって言ったんだよ。そしたらよう、その時の衝撃で、名前が曖昧なんだが、毒…って名前のノットヒーローが出てきて、一発KO。その時に思ったんだよ。力が無いから勝てない。ヒーローだけじゃない、ノットヒーローも力があれば輝やけるって」


 「それでそれで?」


 「次の日目覚めたら、使えるようになってた」


 「はぁ!? ここでチートコース? だるー」



 「まぁ、俺様がチートなんて、当たり前だろ? って言いたいんだが、それはパンチやキックの威力が上がっただけで、ラブディフェンス(絶対防御)は、俺に勘当した父親が、俺の意思を尊重する母親に、その日唯一、手を出そうとしたんだ。それで、母親を庇おうとしたら自分のものになってたって感じだな」


 「なるほどね。そりゃあ、あの時、お母様を見捨てれないよな。羨ましいよ、一人でも応援してくれる人が居て」


 「お前の過去は未だにあまり知らねぇが、俺がいるだろ。俺にとってお前は道標なんだぜ。ノット高(ノットヒーロー学校の略称)の奴ら、とにかく悪い事がしたいとか、ライト街を潰すとか、特に理由もねぇ、ちょっとした妬みで言ってたけどよ、お前は違った。正義と誠義、どちらを持っているのかヒーローに確認したいってさ」


 「そんな事言ったかなぁ?」


 「俺はしっかり覚えてるぜ。俺は、ヒーローだけが目立つのが嫌で、敵だってかっこいいじゃねぇかって、子供じみた事しか考えてなかったけど、お前の言葉聞いて、ハッとしたんだ。俺が抱いてたヒーローへの苛立ちが」

 

 「そうなの? じゃあ、僕が役に立ったって事で、ここはアクマのおごりだよね。サンキュー」


 少し照れていたダートンだったが、何か企んでいる様な笑みで、立ち去ろうとする。


 「お、おい! 俺が払ったら2倍の料金請求されんだよ! 待て!」


 店の外に出て行ってしまったダートンを追いかけようとするが、後ろから肩に大きな手が添えられる。


 「待つのは貴方ですよ。はい、これ」


 と、領収書を出すマスター。


 「え!? 2万ピロー!? 10倍じゃねぇか!」


 マスターは、分厚い手に力が入り、領収書が今にも粉砕しそうだ。


 「わ、分かったよ。次はお手柔らかに頼むぜ」


 マスターへ朝食代を渡し、逃げるように出て行った。その後、マスターが200ピローとスーパーの割引券を見つめて、静かに怒りを堪えている事を、俺は知らずに。



 店を出て、しばらく探したが、ダートンの姿は無かった。ダートンは、俺の家を知っているが、俺はダートンがどこに住んでいるのか知らない。基本、自分の事は話さないタイプだから、今日は貴重だった。



 「いてっ! 何すんだよ!」


 後ろから歩いてきた奴が、俺と衝突し、キレている。学生の俺だったら突っかかっていたが、もう俺は大人。こんな事軽く流せる。


 「何だ? てめぇ? 前歩いていた俺が悪いとでも? すみませんでしたねぇ!」


 ほら。ちゃんと謝っただろ? 大人になると、自分が悪くなくても、とりあえず謝るのが鉄則。


 「はぁ!? 俺が悪いって言ってんのかぁ!? あぁん!?」



 何故だ。さらにキレたぞ。俺、謝ったよな。そうか、聞こえなかったんだ、きっと。


 俺は、輩の耳に向かって、もう一度、


 「すみませんでしたねぇ!!!」


 と、伝えた。


 よし、これで一件落着。 俺が目立てる舞台を探しに行こう。



 「ゔぅ!」


 「おい、どこいくんだ」


 去り際に首の後ろを掴まれ振り向くと、まだ輩は怒っている。


 「何だよ。悪かったよ、俺はやる事あるからもう行かせてく…」


 「やっぱり。お前、新人ヒーローの…」


 「人違いだ。じゃあな」



 輩が話しかけた途端、食い気味に答え、回れ右。


 俺のイメージ、それになっちまったか。黒歴史ってのに、そっとしておいて欲しいぜ。



 「おいおいおい、そんな丸見えな嘘で行けると思ってんの?」


 目を丸くして輩が俺の肩を鷲積みにする。


 「お前を見つけたら連れてくる様に言われてんだこっちは。へっ、ちょうど良かったぜ」


 「おぉー、やってやろうじゃないか。指示したヤツが誰だか知らねぇが、お前みたいなただの輩には負ける気がしねぇからなぁ」


 しつこく構われ、逃げることは諦めた俺は、輩とのタイマンを受けることにした。


―――――――――――――――――――――――――


 その頃、ダートンは本部に呼び出しを受けていた。


 「悪いねぇ、続けて呼び出してしまって」


 「いえ、話とはなんでしょう?」


 テーブルに腰掛け、両手を軽く握りながら笑みを浮かべる会長に、片膝を下ろしながら跪き、呼び出された理由を問うダートン。


 「いやぁねぇ、最近、良くない噂が聞こえてきてねぇ… 少し手伝ってもらいんだよ」


 話を聞き、目を見開くダートンへ、会長は、一つの任務を任せたのだった。

お読みになって頂きありがとうございます。

引き続き頑張って参りますので、応援して頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ