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no't ヒーロー  作者: 陽向アカネ


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5-5話

 アクマが戦っている中、ヘッド・グリーンは…


 「えーっと…。僕はずっとこのままなのでしょうか…」


 先手を打って攻撃したつもりが、フラワーの能力、『花言葉フラワーボイス』によって、凧を羽のように扱い、空中へ吊り上げられていた。花言葉フラワーボイスは、フラワーの言葉によって思うがままに物体を動かす事ができる能力。物体には効果を発動できるが、生物には無効だ。


 「当たり前よ。ヒーローが、悪事を犯した証拠が無いノットヒーローを、勝手に潰すなんて出来ないもの」


 「いや、あそこに1名、狙われてる人が…」

 

 「あれは、ヒーローにとって、害のある人間だからいいの。だって、こんな汚れた所にいるのに、健全なライト街で、注目を浴びてるんだから。ライト街にとって、害虫を駆除する事に誰も批判しないわ」


 「健全…。最近のライト街は…いや。ライト街でも、シャドー街でも、害の有る人は必ずいます。害の有る、無いの基準は、結局受け取る人間によって変わりますよ」


 「キミ。ベラベラと喋っているけど、ギリギリ守られている事に気づいていない訳? ヒーローの裏切り者が」


 「あー… こんな元底辺ヒーローのことでも、知ってくれているんですね…」


 「ヒーローとは、民を守る存在。民が危険に合う可能性があることは、全て確認しないといけないから。確認した所、キミは、ヒーロー活動を全くしていない。なんら、他の民とは変わらないと判断した。だからといって、怪しい真似をすれば、私は黙ってないよ」


 「まぁ、悔しい話ですが、事実です。僕は何もしてこなかった。出来ないと思っていた。でも、自信を持って、やりたい事を恥ずかしがらずに堂々と言える人に出会ってからは、フラワーさんが思ったような人間では無くなってますよ。僕はノットヒーローですから」


 フラワーは、退屈そうな顔から、殺意を感じるほどの、鋭い目になる。その目を見たヘッド・グリーンは、酷く後悔をする。


 だが、フラワーは、それからもアクマと隆の戦闘の状況を眺めるだけで、ヘッド・グリーンに危害を与えなかった。その状況に、ヘッド・グリーンは心の中で葛藤していた。


 (このまま大人しくしていたら、何もされないで済む。でも、隆の戦況が悪くなれば、いつ寡勢するか分からない。だとしたら、ここで僕がフラワーをどうにかするしかない。でもぉ…)


 「なんでモジモジしてるの? キモいんだけど」


 「キモ…い!?」


 悩むヘッド・グリーンの様子に、軽蔑するかのように見下ろすフラワー。


 「そんな心配しなくても、キミの仲間は負けるよ」


 「いや、負けませんよ」


 「はぁ? なに夢みたいな事言ってんの」


 (うわぁーー、思った事そのまま言っちゃった… 結局、怒らせちゃったよ)


 「夢ですか。夢みたいな話ですよね。でも、あの人は、夢みたいな事を実現できる人なんですよ。土壇場には強いですから」


 言ってしまった手前、引き返せずに、思った事を素直に言ってしまうヘッド・グリーン。そして、楯突いた事に、後悔する羽目になってしまった。


 バキンッ!!


 (えっ…)


 「えぇーーーーーーーー!!」


 フラワーの足にぶら下がったままだったヘッド・グリーンは、着陸装置無しで、空から落ちていく。フラワーを怒らせてしまったのだ。


 「私の見込んだ彼氏が、負けるわけないでしょ。せいぜい後悔しな」



 だんだんと地面が近くなっていく状況に、焦り出すヘッド・グリーン。


 (やばいやばいやばい。このままだと、やばい! どうしよう、あー、どうしよう)


 焦り過ぎて、頭が余計に回らない。そんな時、ダートンの言葉を思い出した。


 『能力の底上げ。これに限るね。贅沢を言えば、新たな技の習得も』


 (新たな技の習得… これだ。これしかない)


 それから無我夢中で、思いついた技を言葉に出し、新たな技の発掘をする。


 「緩衝材ウッドクッション!!」


 ……。


 「木弾機ウッドスプリング!!」


 (…あー、ちょっと待った! ここから落ちてバネのように跳ねたら、結局僕の身が持たない。うーん…)


 ヘッド・グリーンはみるみる地面が近くなるにつれ焦りを隠せないが、もう一つ、新技を思いついたのだ。これが発動しなければ、ヘッド・グリーンは、着地を失敗してしまう、絶対絶命の危機。どう乗り越えるのか…。


 「擬気球ウッドエアー!」



 ぶぁさっ!!


 「よーーーっしゃーーー!!」


 ヘッド・グリーンの持つ枝から、風船のように空気を含みながら、見えない気球を作り出したのだ。だが、喜びも束の間…。


 「ホッっとしているところ悪いけど、あんた邪魔だから、このまま落ちてもらうわ」


 パンッ!!



 (えっ…。まさか)


 「こんな事ある〜〜〜!?」


 すぐに追ってきたフラワーは、見えないはずの気球に穴を開け、ヘッド・グリーンは再び窮地に立つ。フラワーは、もうヘッド・グリーンには手札がない事を察して、アクマと隆の戦いの場へ向かって行った。


 「やばいやばい、どうしよう。これ、もう一度、擬気球ウッドエアーでどうにか着地できたとしても、あっちにまた追いつかなければ、僕が頑張る意味がなくなる!!」


 そう、焦ったヘッド・グリーンが出した答えは、


 「ウッッッッド!!!」


 ミキミキミキッ!!


 ただの樹木を生やしたのだ。当然、ヘッド・グリーンは、樹木にしがみつき、呆然とする。


 (もう、ここからやるしかないな…)


 フラワーを追うのを諦め、その場からフラワーを止める策を考え始めた。


 (今の僕の攻撃範囲はせいぜい10メートル。フラワーは、少なくとも20メートルは離れているだろうね。これは完全に詰んでるけど、追いかけても間に合う気がしない。攻撃が届かないとしても、どうにかして届く技を…)


 頭上に灯りが消えていた豆電球が、パッと光る。また何かを思いついたようだ。


 「ウッド!!」


 先程の技を再び出したが、今回はフラワーに向かって放っている。


 ミキミキミキッ!!


 「くっ…」


 地面に聳え立つ太い樹木を、ヘッド・グリーンの細い腕で支えるには根気がいる。重さに耐え続け、そこで起きたのは、樹木の先に、ポッと花の蕾が咲いたのだ。ヘッド・グリーンの生命力からエネルギーが注がれ、ゆっくりと蕾が開いていく。


 「ん?」


 花の匂いに敏感なフラワーは、思わず動きを止め、振り返った。


 「桜? なんでこんなところに桜が…」


 (今だ!!)


 「急成竜木グロウトルネード!!」


 「やば」


 急いで前を向き必死に逃げるフラワーだが、ヘッド・グリーンの編み出した樹木がみるみる成長し、さらに桜が咲いた枝がフラワーを巻きつき捉えたのだ。


 「よっっしゃあーーー!! って、もう限界…」


 樹木だけでも支えるのがやっとだったヘッド・グリーンは、フラワーの重みが加わりとうとう支えきれなくなってしまった。樹木と共に、巻きついたフラワーは落ちていき、地面に頭を打ち気絶する。


 ヘッド・グリーンも、高い場所にずっといるのは怖かったのか、降りるための技を繰り出そうとするが、全て不発。力の全てを使い果たしてしまったのだ。結局…


 バイ〜〜〜〜〜ン…


 その場から飛び降り、着地した足裏から、衝撃が頭の先まで響き、悶絶する。



 そして、アクマが居る方角を見つめ、親指を立てたのだった。


お読みになって頂きありがとうございます。

応援して頂けたら幸いです。

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