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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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36/75

ハスミの少女の策略

アルダ隊と白き魔獣「シロ」の激戦が続く中、

ついに彼らはそれを討ち倒した。

アルダは息を整えながら、遠くで響く轟音の方へ目を向けた。


「……あの方向の騒ぎ、ただ事じゃないな。」


その頃、ラカンの心の奥では古い記憶がよみがえっていた。

光と闇の狭間に立つ一人の少女。

彼の脳裏に、優しい声が響く。


「ラカン……生きて。お願い。私の夢を――あなたが背負って。」


声が消え、胸の奥に痛みだけが残った。


一方その頃、マヤの身体は震えていた。

次々と脳裏に映し出される記憶。

オウスの嘲笑、シグランへの想い、師ラカンとの修行の日々、

そして仲間たちとの思い出。


彼女は顔を上げ、闇の腕に囚われたラカンを見据えた。

目を閉じ、叫ぶ。


「アァァァァァァ!」


大地が震え、岩が熱を帯びて裂ける。


驚愕するオウス。

「な……これが、あの泣き虫の妹……?」


イザンが息を呑む。

「マヤ……!」


マヤの瞳が蒼く輝き、闇を切り裂くように光を放つ。

オウスは後ずさりし、呟いた。


「くそ……これがハスミ一族の力……!?」


その瞬間、彼は父ミゾラの姿を重ねて見た。

同じ瞳、同じ光。


「なぜだ! なぜ俺じゃない!」


怒りに任せてオウスは水の矢を放ち、カインを吹き飛ばす。

だが空中に浮かぶスカイは、余裕の笑みを浮かべた。


「水の属性か……やはり君はハスミの血を継ぐ者だな。」


マヤは両手を掲げ、巨大な水流を生み出す。

スカイは驚きの声を上げた。


「……ここは海か!?」


だがその波は彼を狙ってはいなかった。

ラカンを拘束していた闇の腕を包み込んだのだ。


「なんという水圧だ……!」


上下左右、あらゆる方向から波が押し寄せ、

闇の腕は粉々に砕け散る。

ついにラカンは解放されたが、力尽きて倒れた。


落下する彼をイザンが抱きとめた。

「師匠! 大丈夫ですか!?」


そしてマヤを見つめ、微笑んだ。

「君は……本当にすごいよ。」


マヤはかすかに笑みを浮かべ、意識を失う。

アスマが駆け寄り、抱き支える。

「もう限界ね……少し休まなきゃ。」


スカイは冷ややかに笑った。

「最初の一撃は陽動、次は攪乱、そして三撃目が決め手……賢い娘だ。」


イザンは誇らしげに呟いた。

「……ああ、本当に賢い。」


そこへアルダ隊が駆けつけた。


「マヤ・ハスミ! 見事だ!」

レイドが感嘆の声を上げる。

「彼女……本当に強い。」

ワエルは息を呑んだ。

「……信じられない。」


だが勝利の喜びは長くは続かなかった。


スカイが再び現れ、嘲るように笑う。

「人数が多いだけで勝てると思うなよ? むしろ……楽しみが増えるだけさ。」


そしてふと、笑みを和らげる。

「だが認めよう。この娘――弱き見かけに反して、実に見事だった。」


その言葉に、背後のオウスが憎悪に満ちた目を向けた。

彼は叫び、槍を振り抜く。

「黙れ! 貴様をぶちのめす!」


スカイは岩に叩きつけられながらも、冷笑を崩さない。

「同じハスミでも……彼女には到底及ばないな。」


「黙れぇぇぇぇぇ!」

怒り狂うオウスが再び攻撃態勢を取ったその時――


イザンが叫ぶ。

「危ない! それは……あの時ラカンに使った技だ!」


「黙れ小僧! 貴様の助けなどいらん!」


空気が一瞬で変わった。

重く、冷たい気配が辺りを支配する。


黒い影がゆらりと現れた。

スカイが膝をつき、頭を垂れる。


「……我が主、アズロン・マハイ。」


全員の血の気が引いた。

イザンが震える声で呟く。

「まさか……彼が……」


マヤはアスマに支えられながら後退し、

オウスは恐怖に唇を震わせる。

「この気……ハマン様と同じ……いや、それ以上……!」


アルダが唸る。

「これほどの圧……ハマン様以外に感じたことはない。」


スカイが顔を上げ、かすかに笑った。

「お早いお出ましですね、主よ。」


アズロンは愉悦に満ちた声で答える。

「退屈していたのだ。少し、遊びたくなってな。」


その瞬間――時間が止まった。

誰もが息を呑み、動けない。


砂塵と血の中、

アズロン・マハイは静かに立っていた。

その双眸には、底知れぬ闇が燃えていた。




読者の皆さんへ

ここまで読んでくださってありがとうございます。

もしこの章が少しでも心に残ったなら、ぜひ感想をコメントで教えてください。

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