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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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136/138

虐殺の静寂

象徴的な導入


すべての破壊が――

音を伴うわけではない。


ある終わりは――

完全な静寂の中で訪れ、


世界そのものですら……

その消失に気づかない。


本編


灰は――

いまだに降り続いていた。


ゆっくりと。

終わることを拒むかのように。


イザンは瓦礫の中に立っていた。


音はない。

風もない。

命もない。


一歩――

かすかな破砕音。


視線を落とす。


小さな破片……

人形の。


……その手。


沈黙。


拾い上げる。

長くは見なかった――理解してしまうことを恐れるように。


周囲には――

遺体。


だが……本来あるべき姿ではない。


形を失った四肢。

輪郭を失った顔。

遺体ですらいられなかったものたち。


大地そのものが……

彼らとともに押し潰されたかのようだった。


足が止まる。

呼吸が乱れる。


内側で何かが……崩れ始める。


そして――


その瞳が見開かれた。


瓦礫の中にあるもの――


……


フラッシュバック


数分前――


夜は静かだった。

村は生きていた。

人々は安らかに眠っていた。


だが空は――

もはや同じではなかった。


光は徐々に消え、

闇が上から圧し掛かり始める。


やがて――

空に亀裂が走った。


雷ではない。

嵐でもない。


内側から何かが砕けている。


その裂け目から――


シグランが現れた。


巨大な黒い鳥の上に立ち、

空に在る。


その瞳は冷たく……空虚だった。


下では――

すべてが止まる。


人々は空を見上げる。

理解できない。


だがアマニは――

感じていた。


名のない恐怖。


一歩後ずさる。

瞳が震える。


そして――

闇が彼女に落ちた。


彼女は崩れ落ちた。


「闇が村の上で爆ぜた。

血を混ぜたような黒――

まるで空からオタラを呑み込むかのように。」


空はもはや空ではなかった。


裂けた。


爆発ではない――

世界の裏側が露わになったような亀裂。


そこから――

闇が降り注ぐ。


それは死んだ光ではない。

生きている“何か”。


黒い。

重い。

そして――終わりなき血のような赤い糸を孕んでいた。


それは地に触れるだけではない。


――消し去る。


家々は崩れない。

存在ごと消える。


肉体は叫ばない。

声になる前に断たれる。


大地すら――

層ごと削がれていく。


破壊ではない。


――抹消。


上空で、シグランは静かに見下ろす。


怒りもない。

喜びもない。


ただ冷たい虚無。


そして呟いた。


「……まだ足りない」


指先をわずかに動かす。


闇が応じる。

さらに濃く、重く。


まるで空そのものが――

血を流し始めたかのように。


下では――

もはや理解する時間すらなかった。


悲鳴。

逃走。

崩壊。


だが――

逃げ場はどこにもない。


シグランが手を上げる。


そして――落とす。


その一瞬で――


すべてが終わった。


現在へ


灰は――

再び降っている。


イザンは――

まだ立っている。


だが内側では――

何かが壊れていた。


「……アマニ……」


沈黙。


「……遅かった……」


その呟きは――

声になっていないようだった。


動きが止まる。


そして――


爆発した。


大地が割れる。

空気が圧縮される。

灰が空へと弾き上げられる。


彼の周囲に現れる“気配”。


黒と白。

相反し、衝突する。


不安定。

歪み。


恐怖。


それは力ではない――


生きた何かの崩壊だった。


キナンとリンの到着


二人は縁で立ち止まる。


まず――静寂。


そして――視界。


石の下の子供。

伸びたままの小さな手。


何もないものを抱く女。

首のないまま立つ男。


リンは口を押さえた。


「……いや……」


一歩後退。

さらに一歩。


「……これは……」


言葉にならない。


キナンは歯を食いしばる。


「……虐殺だ……」


そしてイザンを見る。


――凍りつく。


イザン


彼は――そこに立っていた。


崩れ、再生し続ける気配。

足元で裂ける大地。


リンの身体が震える。


「……父さん……」


無意識に後ずさる。


キナンが低く言う。


「……これほどのものは……

獣でさえ恐れる」


振り向きの瞬間


イザンが気配に気づく。


ゆっくりと――振り向く。


リンは凍りついた。


その瞬間――


見てしまった。


右目が震えている。


血がゆっくりと滲む――

かつての傷の線から。


傷跡が目覚める。


それは単なる傷ではなかった。

封印のようなもの。


目を裂くように――

上から下へと走る。


そしてもう片方の目は――

静かに涙を流していた。


耐え難い光景。


怒りではない。


――痛み。


――崩壊。


リンはその場に崩れ落ちた。


「……イザン……」


声が砕ける。


キナンは黙って見つめる。


そして言った。


「……壊れたな……」


結末


灰は――また降る。


だが今度は――


よりゆっくりと。


まるで空そのものが落ちているのではなく――


泣いているかのように。


第136話・完結

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