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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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133/134

爆発前の静けさ

✦ 象徴的な導入

いくつかの終わりは――告げられないと言われている。

大きな音でも、劇的な崩壊でもなく――

ただ、重い沈黙の中で。

埋められない空白だけを残して。


そして、脅威が突然消えるとき――

それは終わりを意味しない。

ただ――より悪い形で、再び現れることを選んだだけだ。


戦場は――

もはや戦場ではなかった。

大地は引き裂かれ、

空気は淀み、

残響は――何も運ばない。


何かが――確かにここにあった。

だが――もう、ない。


その中心に――

ハマンは立っていた。


動かない。

声もない。


その目は、虚空に縫い付けられたまま――

消えた何かを、まだ探しているかのようだった。


この程度の破壊には慣れているはずなのに――

この沈黙だけは、違った。


少し離れた場所に――

ヤザンが立っている。


静かに。

異様なほどに、落ち着いて。


彼の視線は、ハマンでも地面でもなく――

ただ遠くへ。

何も見えない、その先へ向けられていた。


やがて、低く言う。


「……終わりじゃない」


わずかな間。


「……始まりだ。もっと悪いもののな」


リンは――

二人のすぐ近くにいた。


体はまだ弱っている。

だが、その目は――もう以前のものではなかった。


ハマンを見る。


そこに恐怖はない。

代わりにあるのは――

重さ。

静けさ。

そして、はっきりとした意志。


一歩、踏み出す。


「……戻らない」


沈黙。


「……あの城には」


最後に一度だけ、彼を見る。


「あそこは――最初から、家なんかじゃなかった」


静寂。


そして――


「……むしろ」


わずかに間を置いて。


「……解放された」


ハマンは答えない。

振り向きもしない。


だが――声だけが落ちる。


低く。重く。


「……ああなったのは……俺が許したからだ」


沈黙。


今度のそれは――

さらに重かった。


ヤザンは背を向ける。


何も言わずに――歩き出す。


リンはその場に一瞬だけ残り、

後ろを振り返る。


これが最後だと知っているかのように。


そして――


歩き出した。


ヤザンの後を追う。


別の場所では――

誰もまだ知らない。


脅威が終わっていないことを。


アルマザの国境では――

軍勢が旗を掲げていた。


勝利。

長い戦いの末の。


兵たちの声。

笑い。

張り詰めていたものが、ほどける音。


首都近郊――


ラカン率いる部隊が立っている。


その傍らに――

アドナン、アルダ、ライド、マヤ、アスマー、アンス、ナダ、ワイル、アミール。


ラカンは――

遠くを見つめていた。


静かに。


やがて呟く。


「……妙な感覚だ」


間。


「……あの力は……普通じゃない」


マヤが振り向く。


「……何があったの?」


その瞬間――


空気が圧縮される。


そして――


ハマンが現れる。


一斉に沈黙が落ちる。

視線が集まる。


彼は――誰も見ない。


ただ通り過ぎる。

まるで、誰もいないかのように。


そして言う。


「……終わった」


ワイルが息を吐く。


「……よかった……」


安堵。

だが――どこか不完全な。


ラカンが一歩前へ。


「……総司令」


間。


「……シグランは?」


沈黙。


マヤは見ていた。


何かが――おかしい。


ハマンは止まる。


振り向かない。


そして言う。


「……今は話すことじゃない」


空気がわずかに張り詰める。


「……すぐに分かる」


「……緊急会議だ」


背を向けて――歩き出す。


誰も言葉を発しない。


だが――全員が後に続く。


その足取りは――

重かった。


遠く――


ヤザンは歩いている。


迷いのない足取りで。


立ち止まる。


空を見上げる。


白い気配が――静かに溢れる。


木にもたれ、待つ。


リンは、それを見ている。


ヤザンは言う。


振り向かずに。


「……戻ってくる」


「……次は、一人じゃない」


そして振り向く。


静かな笑み。


リンの中に広がるのは――

恐怖ではない。


静けさ。


突然――風が強まる。


巨大な影が空を横切る。


大鳥が――雲を裂く。


ヤザンが微笑む。


「……久しぶりだな、ガラフ」


降り立つ巨鳥。

圧倒的な存在感。


リンは驚きを隠せない。


「……どうして、そんなに信じてるの?」


ヤザン。


「……従わせたわけじゃない」


わずかな間。


「……裏切らなかっただけだ」


沈黙。


彼は背に飛び乗る。


そして手を差し出す。


「……来い」


リンは彼を見る。


「……変な人」


「……なぜ?」


リンは微笑む。


「……全部分かってるみたいなのに」


間。


「……何も言わない」


ヤザンは一瞬だけ彼女を見て――

目を逸らす。


「……全部は、言う必要はない」


リンは近づき、

その手を取る。


迷いなく。


背に立つ。


ガラフが首を動かす。


ヤザンが小さく呟く。


「……やめろ」


リンが微笑む。


ヤザンも――

わずかに笑い、


そして、軽く笑った。


リンは固まる。


その笑いに――


遠い記憶が重なる。


リース。


風が強まる。


ガラフが翼を広げる。


空へ――飛び立つ。


背後に残る大地は――静かだった。


だが――空は違う。


✦ 第133話 終わり

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