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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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父の足跡:地獄の太陽

象徴的な導入

かつて言われていた——

太陽が生まれるとき、それは命を与えるだけではなく、

近づくすべてを焼き尽くすのだと。


光と焼滅の狭間で、

人はただ立ち尽くす。

自分が何であるべきかを選ぶこともできずに。


救う力か——

滅ぼす力か。


だが真実は——

太陽に触れた者は、

決してそこから逃れられない。


本編

谷は静まり返っていた——

水はかすかな音を立てて流れ、まるで空気を締めつける緊張など存在しないかのようだった。


シグランは微動だにせず立ち、視線を前に固定している。

アズロンはわずかに笑みを浮かべた。


「同じことは二度言わない——」


その声は静かだが、致命的な自信を孕んでいた。


「見せてみろ……その言葉に見合うだけの力を」


沈黙。


谷の頂の一つに腰を下ろしたスカイが、笑みを浮かべる。

「ふむ……観戦には悪くない場所だな」


ほんの一瞬——

だが、それで十分だった。


シグランの瞳孔が収縮し——

その姿が消える。


次の瞬間、二人は同時に踏み込んでいた。

正面衝突。


連続する打撃——

拳、蹴り。

一撃ごとに轟音が谷を揺らす。


水は飛び散り、岩が震えた。


上空からスカイが息を呑む。

「……いい出だしだな」


攻撃をいなしながら、アズロンが笑う。

「それで終わりか?」


シグランの目が細められる。

「黙れ……集中しろ」


再び衝突——


轟音と共に、二人は数メートル弾き飛ばされた。


シグランは斜面へ滑り、その上で静止する。


下方で——

アズロンがゆっくりと顔を上げた。


その瞬間——

シグランの周囲にオーラが立ち昇る。


黒と白。

互いに喰い合うように絡み合う力。


アズロンの目が細まる。

「……あの少年と同じか。ヤザンの力と」


刹那——

シグランが消える。


次の瞬間、アズロンの足元に現れ、蹴り上げる。


だがアズロンは軽く跳び、余裕の笑みを浮かべた。


——その直後。


その目が見開かれる。


シグランは、すでにそこにはいなかった。


同時に——

目の前に出現する。


一撃。


拳が顔面に叩き込まれる。


アズロンは吹き飛ばされ、空中で回転しながら岩壁に激突した。

岩は砕け、崩れ落ちる。


上空のスカイが叫ぶ。

「なんだと……!」


一瞬の静寂。


やがてシグランが歩み寄る。

ゆっくりと、一歩ずつ。


その眼差しは冷たい。


「勘違いするな——」


足を止める。


「お前が相手にしているのは……あの頃の俺じゃない」


短い沈黙。


「幻想だ」


——高笑いが谷を裂いた。


瓦礫の中から、アズロンが立ち上がる。


「いい……実にいい!」


埃を払い、狂気じみた光を宿した目で笑う。


「これが“準備運動”というやつだろう?」


シグランの表情が凍る。


「……準備運動だと?」


オーラが激しく揺らぐ。


「まだ侮るか」


掌に炎が収束する。


「灰にしてやる……」


アズロンは静かに手を上げた。


無数の光槍が、その周囲に生成される。


「来い」


次の瞬間——


炎と光が激突した。


連続する爆発。

谷全体が震える。


地は裂け、水は蒸発し、空気すら引き裂かれる。


スカイが叫ぶ。

「これは……戦いじゃない、災害だ!」


やがて——

すべてが消えた。


重い静寂。


煙の中、シグランは立っている。


「このままでは終わらない……」


低く呟く。


「ならば——使うしかない」


フラッシュバック

総司令室。


シグランは父ハマンの扉の前に立っていた。


手を上げる——

止まる。

一歩下がる。

また手を上げる——

躊躇う。


中から、冷たい声。


「何用だ」


「……入ってもいいですか」


「入れ」


シグランが入る。俯いたまま。


「話せ」


「……強力な技を……教えてほしい」


沈黙。

ハマンが立ち上がる。


「外で待て」


シグランの目がわずかに見開かれる。

そして——小さく笑った。


「……はい」


砂漠。


ハマンが手を上げる。


「地獄の太陽」


その瞬間——

空が震え、空気が燃え、地面が溶け始める。


ハマンの頭上に、巨大な火球が生まれる。

まるで空から太陽が落ちてきたかのように。


シグランは後退し、腕で顔を覆う。


「な……なんだこれ……!」

「太陽が……落ちてくるのか……!」


火球が消える。


ハマンが振り返る。


「この技は……敵を殺すだけではない」


冷たい目で見つめる。


「使い手をも殺す……習得を誤れば」


シグランは息を飲む。


「どうやって……習得すれば……?」


「まず——」

ハマンが指を立てる。


「オーラで全身を覆う術を身につけろ」

「そのオーラが……熱からお前を守る」

「そして——制御を覚えろ」


シグランは砂漠に立つ。


オーラを放とうとする——

何も起きない。


もう一度——

弱い。すぐに消える。


小さな炎を手に灯す。

身体に近づける——


焼けた。

叫ぶ。

膝をつく。


二日目。

もう一度試す。

弱いオーラが腕を覆う。


炎を放つ——


爆発する。

地面に叩きつけられる。


何日も……何週間も。


試みるたびに——

火傷。

痛み。

転倒。


それでも——

そのたびに立ち上がる。


一ヶ月後。


シグランが立つ。

息は荒い。


手を上げる。

炎が燃え上がる。


だが——今度は違う。

かすかな黒いオーラが、その身を包んでいた。


炎が触れても——

焼けない。


目が見開かれる。


「できた……のか?」


背後から声。


「これは……始まりに過ぎない」


振り返る。

ハマンが立っていた。


「今度は——」

手を上げる。


「その“太陽”を制御してみせよ」


現在

シグランがゆっくりと目を開く。


オーラが立ち昇る——

黒と白。

かつてないほど深く、重く。


手を天へ掲げる。


空気が熱を帯び始める。

空気が……燃え上がる。


シグランの頭上に——

巨大な火球が形成され始める。


膨張し——

拡大し——

周囲の光をすべて飲み込む。


まるで新たな太陽が……この世に産声を上げたかのように。


アズロンがゆっくりと顔を上げる。


「……見覚えがある」


フラッシュバック(第64話より)


ハマンの声:

「——死の列に加わってやる」


ハマンの周囲で爆発するオーラ。

空へと立ち昇る。

頭上に形成される巨大な火球。


アズロン(汗を滴らせながら):

「な、なんだ……!?」

「まるで太陽が近づいてきている……!」


現在へ戻る


熱の音が聞こえる——

世界が燃える音。


スカイが叫ぶ。

「何の狂気だ……!」


シグランは立つ。

黒と白のオーラが、生きた盾となって全身を覆う。


「地獄の太陽」


手を上げる——


そして——


振り下ろす。


衝突

一瞬の静寂。


そして——


爆発。


ただの爆発ではない。

破滅だ。


光がすべてを飲み込む。

音が消え——そして耳を裂く轟音として戻る。


地面は——裂け、崩れ、蝋のように溶けた。


谷の水は——一瞬で蒸発した。


木々は——倒れる前に灰と化した。


スカイ——

「くそ——っ!」


吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられる。


爆心地——


粉塵。

炎。

熱。


すべてが地獄の渦の中で踊る。


静寂。


数秒が経つ——

粉塵がゆっくりと晴れ始める。


シグランが立っている。


息は荒い。

オーラはかすかに揺らぐ——それでも消えない。


その眼差しは——待っている。


反対側——


巨大なクレーターの底。

かすかな動き。


岩が崩れる音。


そして——


手が瓦礫の中から現れる。


アズロンが立ち上がる。


身体は火傷だらけ。

服は引き裂かれている。


それでも——


笑っている。


低い笑いが漏れる。

そして——高まる。


「はは……」

「ははははははは!」


顔を上げる。その目は——今まで以上に狂気を帯びて輝く。


「これだ……これなんだ!」


視線をシグランに向ける。


「小僧が……親父に近づいている」


別の場所

ヤザンがリクザウの前に立つ。

二人の視線が、重い沈黙の中でぶつかり合う。


だが——突然。


ヤザンの表情が変わる。

何かが……胸を貫いたように。


遠くから——声。

かすかな……うめき声。


振り返る。


そして——消えた。


リクザウだけが残される。

その目が怒りに燃える。


「逃げるか……臆病者が!」


拳を握りしめる。

「なぜ逃げる! 戦いは始まったばかりだ!」


叫びが虚しく響く——返事はない。


遠く——


ヤザンが現れる。


アスルがそこに立っていた。


身体は震え、両手で頭を抱えている。


「やめろ……やめてくれ……!」


声は引き裂かれていた——見えない何かと戦っているかのように。


彼の精神の中——


闇。

声。

繰り返される——ハマンの声。


ヤザンは歯を食いしばる。


「なぜ……アスル?」


素早く歩み寄り、手を伸ばす。

アスルの頭に手を置く。


その瞬間——


アスルの精神の中

闇が彼を飲み込んでいた。

霊魂。声。見えない鎖が絡みつく。


呼吸ができない。


「あ……ああ……ダメだ……!」


膝をつく。


その時——


光が差す。


白い手。

差し伸べられる。


躊躇う。


「……お前は……誰だ?」


声は弱く——壊れかけていた。


「お前は……誰なんだ……!」


現実

アスルが突然目を見開く。


「はっ——!」


息は荒く、全身汗で濡れていた。


目の前に——ヤザン。


だが彼の目は、味方を見ていなかった。

危険を見ていた。


後退しながら叫ぶ。


「近づくな! 来るな!!」


恐怖は——本物だった。

恐ろしいほどに。


ヤザンは一瞬止まり——


ゆっくりと近づく。


無言で。


そして——抱きしめた。


強く。確かに。


「大丈夫だ……」


その声は——静かで、深い。


「お前は……もう安全だ」


アスルの身体が、その腕の中で震える——


しかし——

何かが——

ゆっくりと——

静まっていく。


第129話 終



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