意志の衝突
戦争が頂点に達しつつある中で——
すべての境界には…「壁」があった。
石ではない。
意思でできた壁だ。
北では——
水は静かではなかった。
荒れ狂っていた。
慈悲を知らぬ波のように。
南西では——
影は沈黙していなかった。
飢えていた。
近づくすべてを喰らうように。
東では——
炎は温かくなかった。
焼き尽くしていた。
生命の痕跡すら残さず。
そして西——
何も見えぬその場所こそ…
最大の危険が潜んでいた。
なぜなら——それは姿を現していなかったからだ。
九つの氏族。
九つの力。
九つの壁。
アルマザを「開かれた国境」と思った者たちは——
気づいた。
その一歩一歩が…墓場だったことを。
それがアルマザ。
国家ではない。
死の王国だ。
北方国境 — ハスミ将軍(水)とその息子オス
荒れ狂う河。
氾濫。
敵兵は次々と呑み込まれていく。
ハスミは川岸に立つ。
蒼い瞳が光る。
ゆっくりと手を上げる——
水が応える。
敵軍が渡ろうとする。
だが——
波がすべてを呑み込む。
オスはその隣に立つ。
無言。
ただ指を動かすだけで——
流れが分かれ、兵を一人ずつ引き裂く。
「撤退しろ!」
叫びは虚しく消える。
水は——慈悲を知らない。
ハスミが呟く。
「ここは我らの地だ。」
「そしてこの河も。」
「越えようとするなら…代償を払え。」
南東国境 — コラミ将軍(影)
闇。
月も星もない。
敵兵は足音を聞く。
だが——何も見えない。
コラミは闇の中心に立つ。
その身体は影と溶け合っている。
前進する敵軍。
次の瞬間——
先頭が消える。
血もない。
悲鳴もない。
ただ——消失。
「どこへ行った?!」
「影の中に…何かいる…!」
その時——
コラミは背後に現れる。
見えぬ刃。
ただ、倒れていく死体。
彼は呟く。
「影は敵ではない。」
「影は我らの家だ。」
「そしてお前たちは——無断で踏み入った。」
東方国境 — カグチ将軍(炎)
空は赤く染まる。
熱が大地を焼く。
敵兵は息を荒げる。
恐怖と渇き。
カグチは丘の上に立つ。
ただ見下ろすだけ。
次の瞬間——
大地が燃え上がる。
消えぬ炎。
石すら焼き尽くす炎。
魂すら喰らう炎。
「逃げ場はどこだ?!」
——ない。
カグチが呟く。
「アルマザは炎の上に築かれた。」
「触れた者は…焼かれる。」
残されたアルマザ軍は——
将軍たちの指揮のもと、
各国の侵攻を打ち砕いた。
そして——
物語は進む。
森の中——
リクザが馬で駆ける。
「愚か者ども…」
「アルマザの力を理解していない。」
「敗北するだけだ。」
「我らのように耐えればよかったものを。」
突然——
馬が止まる。
空気が重い。
「これは…ハマンか?」
「いや…違う。」
五百メートル先——
足音。
重い。
恐ろしい。
汗が一滴、落ちる。
「これは…違う。」
「ハマンでも、リースでもない。」
彼は決断する。
「進むしかない。」
馬は動かない。
震えている。
リクザは降りる。
「…当然の反応だ。」
馬を逃がす。
歩き出す。
——止まる。
目が見開かれる。
首都の方向——
ハマンが立っていた。
振り向かずに言う。
「出てこい。」
影から現れる——アセル。
対峙。
「誰だ。」
「俺が誰かだと?」
ハマンは低く言う。
「時間がない。」
アセルの怒りが溢れる。
「一族を滅ぼした…」
「…それでも平然としている。」
ハマンの目が細まる。
「一族?」
「ずっと待っていた。」
「復讐のために。」
「それは…お前の命令だ!」
沈黙。
ハマンは思い出す。
「……ああ。」
「生き残りか。」
「イセハル一族の。」
「リースの血筋か。」
「そうだ!」
その瞬間——
アセルの気配が爆発する。
「これが始まりだ。」
「王を殺した。」
「そして次は——お前だ。」
一瞬——
消える。
背後へ。
斬撃。
ハマンの首が落ちる。
「簡単だな。」
だが——
身体は煙のように消える。
「……幻か?」
声。
「言ったはずだ。」
「時間の無駄だと。」
闇がすべてを覆う。
アセルは——
その中にいる。
魂。
歪んだ顔。
無数の手。
締め付ける。
「ここは——俺の世界だ。」
別の場所——
森。
リクザは立つ。
「…あの少年か。」
イザンが現れる。
静かに歩く。
消える。
背後に現れる。
だが——攻撃しない。
ただ通り過ぎる。
「おい!」
止まる。
振り向かない。
「何が目的だ?」
沈黙。
「裏切り者に興味はない。」
リクザは怒る。
「礼を知れ!」
イザンは言う。
「お前のような者は…長く生きる。」
「だが——無意味だ。」
そして去る。
沈黙は破られる。
リクザの怒りが爆発する。
雷が空を裂く。
「許さん!」
その時——
別の場所。
ハマンは感じる。
「…首都が先だ。」
「リクザ…後でだ。」
風が吹く。
静寂が戻る。
だが——
重い。
✦ 第127話 終わり




