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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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124/138

大侵攻の始まり(だいしんこうのはじまり)

空は――

濃い砂煙に覆われていた。

何も見えない。

まるで世界そのものが、嵐に飲み込まれたかのように。


――その時。


影が、その砂煙を切り裂いた。


軍勢。

はためく旗。

きらめく鋼。

そして――大地を震わせる足音。


カグラの軍。


さらに――

異形の存在。


様々な大きさの魔獣が、兵と並び走る。

まるで地獄そのものが、一つの標的へと解き放たれたかのように。


目標――

アルマザ国境、最初の村。


国境


城壁の上。

アルマザの兵士たちが立つ。


一人が手を額にかざし、砂煙の向こうを凝視する。


沈黙。


そして――

その目が見開かれる。


「……旗だと?」


さらに目を凝らす。


そして――理解した。


「敵襲!!」


声を張り上げる。


「攻撃を受けている!直ちに本部へ伝令を!!」


もう一人の兵が凍りつく。

「な、何だって――!?」


だが――

返事はない。


すでに馬に飛び乗り、駆け出していた。


反対側


数キロ先――


ユキナラ将軍が馬を駆り、突き進む。

その背後には、氷の奔流のような軍勢。


表情は冷静。

だが――その瞳には焦りが宿る。


「間に合ってくれ……」


さらに速度を上げた。



そこには――

いつもの日常があった。


会話。

子供たちの笑い声。

農夫たちの働く姿。


だが――

その平穏は、突如として砕け散る。


砂煙が迫る。


そして――軍勢。


顔が凍りつく。

恐怖が広がる。


「逃げろ!!」


しかし――

遅すぎた。


虐殺


悲鳴。

振り下ろされる刃。

飛び散る血。


大地さえ――

悲鳴を上げているかのようだった。


混沌が、すべてを呑み込む。


農夫の視点


少し離れた場所。


一人の男が、背に藁束を担いでいる。


ふと――立ち止まる。


違和感。


足音。


迫ってくる。


振り返る――


悲鳴が耳を打つ。

心臓が激しく鼓動する。


そのすぐ近く――

子供たちが麦畑で遊んでいた。


笑っている。


まだ知らない。

死が、すぐそこまで来ていることを。


絶望の瞬間


カグラ兵が現れる。


剣。

斧。

冷たい光を放つ。


農夫は藁を捨て、駆け出す。

子供たちを強く抱きしめる。


そして――

目を閉じた。


終わりを待つ。


介入


……静寂。


ほんの一瞬。


そして――


何かが通り過ぎた。


雷のように。


次の瞬間――


崩れ落ちる身体。


カグラ兵が、次々と倒れていく。


音もなく。

抵抗もなく。


その男


一人の男が立っていた。


黒い外套が風に揺れる。


ヤザン。


振り向きもせず、静かに言う。


「……子供たちを連れて行け」


「安全な場所へ隠れろ」


農夫は、ゆっくりと目を開く。


信じられないという顔。


ヤザンは、少し強い口調で言う。


「見るな」


「行け」


男は震えながら頷く。


「は、はい……!」


子供たちを抱え、走り去った。


一瞬の静寂


……だが。


戦いは、終わっていない。


郊外 ― アルマザ首都


厳重な警備。


兵士たちが各所に配置されている。

城壁、監視塔、絶えない視線。


空気そのものが張り詰めていた。


ラカン隊


それぞれが持ち場につく。


武器は構えられている。

だが――緊張は隠せない。


シグランが苛立ちを吐き出す。


「なんで俺たちはここで待ってるんだ?」


拳を握りしめる。


「向こうは攻めてきてるのに……俺たちは守るだけか?」


ラカンが静かに答える。


「国家は――国境では滅びない」


一拍。


「首都から滅びる」


その言葉が、重く落ちる。


マヤが空を見上げる。


「どうか……守ってください……」


別の場所――


アドナン。

アミル。

ナダ。

アンス。


誰も口を開かない。


だが全員が理解している。


――これからが、本当の地獄だと。


もう一つの防衛線


アルダが前に立つ。


その背後――

ライド。

アスマ。

ワエル。


視線は鋭い。


恐怖はない。


ただ――待つ。


感覚


都市は静かだ。


だがその静けさは――


平穏ではない。


崩壊前の沈黙だ。


首都外 ― 10km


風が唸る。


一頭の馬が、狂ったように駆ける。


その上に――

リコザ将軍。


顔には焦り。

視線は揺れる。


「くそ……なぜ計画通りに動かない……!」


手綱を強く握る。


「攻撃は一年後のはずだった……なぜ今だ!?」


沈黙。


「……俺を信用していないのか!?」


5km後方


――足音。


重く。

確実に。


最高司令官――ハーマン。


ただ歩いている。


だがその一歩一歩が、

地面を押し潰すかのようだった。


リコザ


突然――止まる。


身体が凍りつく。


ゆっくりと振り返る。


目が見開かれる。


「……この気配」


呼吸が乱れる。


「間違いない……奴だ」


沈黙。


「……あの化け物が、後ろにいる」


馬を叩く。


「急げ……!」


駆け出した。


北部戦線


激戦。


アルマザ軍と敵軍が激突する。


金属の衝突音。

怒号。

大地の震え。


最前線――


ツシマ将軍。


山のように動かない。


戦況は明らか。


アルマザ優勢。


敵は後退する。


合図


ツシマが手を上げる。


それだけで――


兵は理解する。


散開。


敵は困惑する。


「なぜ……退かない?」



ツシマが馬から降りる。


歩く。


ゆっくりと。


「お前たちの過ちは――」


一歩。


「アルマザに侵攻したことだ」


さらに一歩。


「六十年前……」


地面が震え始める。


「我らがまだ部族に分かれていた時でさえ――」


敵が後ずさる。


恐怖。


「誰一人として……我らに攻め入ることはなかった」


発動


手を上げ――


叩きつける。


地震。


大地が裂ける。


悲鳴。


敵軍、壊滅。


勝利


静寂。


そして――歓声。


「将軍万歳!!」


「ツシマ万歳!!」


ツシマは静かに言う。


「アルマザ帝国に――栄光を」


声が空を震わせる。


異変


……しかし。


勝利の瞬間。


一人の男が現れる。


戦場の端。


青い外套。


静かに立つ。


目には――狂気の歓喜。


「素晴らしい……」


「ははは……」


一歩前へ。


「強いな」


「俺の相手に……なれるかもしれん」


兵たちが叫ぶ。


「何者だ!」


「動くな!」


近づく――


ツシマが叫ぶ。


「止まれ!近づくな!!」


だが――遅い。


閃光。


動き。


五つの影が崩れる。


一瞬で。


ツシマが歯を食いしばる。


「なぜ……従わなかった」


鋭く睨む。


「貴様……何者だ」


男が近づく。


外套を脱ぎ、投げる。


「軽く体を温めたかっただけだ」


笑み。


「本命と戦う前にな」


ツシマの表情が変わる。


「……お前は」


沈黙。


「アズロン・マーヒ」


「黒き暁の隊長」


視線がぶつかる。


「狙いは――ハーマンか?」


アズロンは笑う。


低く、狂気を帯びて。


「そうだ」


「ははは……」


第124話・完

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