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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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砂漠で生まれた悪魔

【序幕:砂漠】

砂漠は果てしなく広がっていた。

熱風が砂丘の上を這い、あらゆる痕跡を消し去っていく――まるで過去そのものを飲み込むかのように。


その虚無の只中を、アズロンは独り歩いていた。

足取りは重く、両肩は落ち、その目は疲労よりも深い何かに沈んでいた。

むしろ…挫けに近い何かに。


《闇の大地》…

白と黒のオーラのイメージが、まだ彼の記憶の中で燃え続けていた。

イーゼンのオーラ…その力の前で、彼は自分が…無に等しいと感じた。


呼吸が速くなる。

砂を足で激しく蹴る。

「ちくしょう…」

拳が震える。

なぜ俺はいつも…弱者なんだ?


そして、記憶の波が彼を遠くへと運んでいく…


【回想:数年前 ―― 混沌の街】

やせ細った10歳の少年が、狭い路地を走っていた。

裸足。破れた服。そして、機会を探す鋭い目。

それがアズロンだった。


父も母もいない。

ただ、彼に盗み方を教えるか…さもなくば餓死させるかしかない、過酷な街だけがあった。


彼は市場の人混みを縫い、裕福な女に軽やかに近づく。

素早い動き。

彼女の首飾りが、気づかれぬうちに消える。


彼は走る。

路地を曲がり、壁にひび割れ、屋根が崩れかけの廃墟にたどり着く。

がれきの中には、彼と同じような子供たちがいた。

怯えた目。飢えた腹。


そして、影の中に…

男が立っていた。


巨大な体躯。無造作な髭。そして、慈悲など微塵もない目。

彼らの頭領だった。


子供たちは、盗んできた品を一人ずつ彼の前に置く。

男は、手ぶらの少年の前で止まる。


激しい平手打ち。

少年が地面に倒れる。

「役立たずが…お前に食う価値もない。」

蹴り。泣き声。哀願。


アズロンはそれを見ていた。

心は沸騰していた。

だが両手は震え…何もできなかった。


日々が過ぎる。

そして、ついに一人の少年が失敗しすぎた日が来た。


強烈な一撃。

そして、静寂。

その少年は…それから動かなかった。


その夜、アズロンは廃墟の隅で友人と座った。

彼は囁いた:

「いつか…あいつを殺す。」

だが、その声よりも恐怖の方が大きかった。


日々が過ぎる。

男がアズロンの肩を叩く:

「お前が一番だ。いつも価値あるものを持ってくる。」

腐った酒の臭いが、アズロンの息を詰まらせそうだった。


しかしアズロンの目は…別のものを見ていた。

戸棚。

男の宝物だ。

彼らが盗んだ宝石がすべて、そこに隠されている。


そして、ある夜、男が酒に溺れている隙に…

アズロンは囁いた:

「今だ。」

彼らは戸棚を壊した。

すべてを持ち出した。

そして、街を逃げ出した。


【森の奥深く】

アズロンは重い袋を地面に投げ出し、息を切らせながら言った:

「聞け…一人は食い物を買いに街へ行く。もう一人は見張りだ。」

友人がうなずき、街へ向かった。

アズロンは一人残された。


時が過ぎる。

そして、不安が募る。


【廃墟 ―― 夜明け】

かすかな夜明けの光が、ひび割れから差し込む。

残った酒の臭いが、場内に充満している。

男がようやく目を覚ます。


よろめきながら立ち上がり、戸棚へ向かう。

立ち止まる。

扉は壊れていた。

鍵は砕けていた。


開ける…

空っぽだった。


一瞬の沈黙。

そして――


「だ、れ、だ、やったのは――!」


子供たちは怯えて飛び起きる。

彼は一番近くの者を掴み、殴る。

「アズロンはどこだ?!」


沈黙。

彼は周りを見渡し…そして理解する。

「もう一人は?!」

彼の声は唸り声に変わる:

「アズロン…この小僧が…」

壁を殴りつけ、拳から血が流れる。

「必ず見つけ出す…裏切りの代償を思い知らせてやる…」

ナイフを掴む。

「俺から逃げられる者はいない。」


【市場】

アズロンの友人は、急いで食い物を買おうとしていた。

だが、巨大な手が彼の肩を掴む。

彼は凍りつく。

男だ。


彼を狭い路地に引きずり込む。

「宝石はどこだ?」

少年は泣く。

ナイフが彼の首に押し当てられる。

「まずは耳を切り落としてやる。」

少年は崩れ落ちる:

「アズロンが持ってる!街の外の森にいる!」

男は微笑む:

「そこへ案内しろ。」


【森】

アズロンは不安そうに立っていた。

足音が近づく。

彼は少し安心する。

「遅かったな…」


友人が近づく…

その瞬間――


背後から、巨大な手が彼の首を掴む。

そして冷たい声が耳元で囁く:

「逃げ切れると思ったか…裏切り者よ?」


アズロンの血が凍りつく。


巨体の男がアズロンの首を締め上げ、地面から持ち上げる。

「殺してやる、この小僧が…」

アズロンの足が宙をばたつかせる。

両手は無力に鉄の握りを解こうともがく。

息が詰まり…視界が霞み始める。


その時――


別の手が、巨体の男の手首を掴んだ。

静かな握りだった…だが、岩のように固い。


冷たい声が言う:

「子供をこんな風に扱うものじゃない…大男。」

男は怒って振り返る:

「何者だ?離せ!関係ないことに首を突っ込むな!」

だが、見知らぬ男は答えない。

ただ…少し手を締めただけだ。


パキッ!


骨の折れる音が空気を裂く。

巨体の男は悲鳴を上げ、手を開き、アズロンは地面に落ちて必死に息を整える。

「くそっ!俺は――」

彼は言葉を終えられない。


怒りが目に燃え上がり、もう一方の手で攻撃しようとする。

しかし、三人目の男が背後に現れ、素早い一撃で彼を意識不明に倒す。


短い沈黙。


アズロンはまだ地面に倒れたまま、ゆっくりと頭を上げた。

その目は、自分を救った男の顔と合った。

穏やかな面立ち…しかし、その存在感は重かった。

戦いと…死に慣れた男の目。


その男は【リース】だった。

巨体の男を倒したのは、【ハマン】だった。

そして傍らに立つ三人目の男は、袋を開け、周りに集まってきた子供たちに宝石を投げ与え始めた。

その名は【シャミル】。


子供たちは、震える手で金を拾い上げ、信じられない思いで見つめる。


ハマンは不快げにシャミルを振り返る:

「なぜそんなことをした?」

シャミルは軽く微笑む:

「後で彼らが、これを巡って殺し合わないようにね。」


リースはアズロンに近づき、少し身をかがめて彼の目を覗き込んだ。

しばし沈黙し、そして言った:

「なんてこった…君ぐらいの年の子供が、そんな目をするのか。」

アズロンは何と言っていいかわからなかった。

言葉が出ない。

ただ…魅了されたように、彼を見つめるだけだった。


短いひととき…

そして三人の男は動き出し、現れた時と同じように木々の間に消えた。


アズロンはその場に座り込んだまま、彼らが消えた場所を見つめ続けた。


生まれて初めて…

自分を怖がらせない強さを見た。

むしろ…魅了する強さを。


【現在 ―― 砂漠】

再び、目の前に砂のイメージが戻る。

風が彼の周りで荒れ狂う。

彼は黙って歩く…


だが、記憶はまだ彼を追いかける。

彼は囁く:

「あの日から…俺はあの強さを追い続けてきた…」

視線を地平線に向ける。

「…だが、まだ遠く及ばない。」


アズロンは歩き続ける。

一歩…また一歩…そしてまた一歩。

太陽が彼の肌を焼き、風が彼の顔を打ち、砂は果てしなく広がる。まるで全世界が、彼を生かすつもりのない過酷な試練と化したかのように。


数時間が過ぎる…そして数日。

水もない。食い物もない。隠れる日陰もない。

彼の体は弱っていく。

唇はひび割れ、視界はぼやけ始める。


ついに、彼の足は止まった。

彼は膝をつき、そして顔から砂に倒れ込み、熱い砂の中に身を埋めようとするかのようにもがく。

息が途切れる。


意識と失神の狭間で…

彼は自分自身を見始める。


今の姿ではない。

敗れた軍勢の上に立つ自分を。

人々が彼の前にひざまずく。

彼の名は、畏れと共にすべての地で囁かれる。

アズロン…世界最強の男。


かすかな笑みが彼の顔に浮かぶ。


その時――


声がした。

静かに。近くに。まるで彼の内側から聞こえてくるかのように。

「力を望むか?」


彼は目を開こうとする。

「誰…だ?」

声は直接答えない。

「俺が誰かは重要じゃない…大事なのは、お前がこんな死に方をする価値もないってことだ。これまで経験してきたすべてを思えばな。」


彼は息苦しそうに呼吸する。

「何が望みだ?」

「力を望むなら…俺に導かせろ。躊躇するな。後悔するな。憐れむな。」


イメージが彼の心に溢れ出す:

飢え…殴打…屈辱…逃走…イーゼンのオーラの前での敗北。


彼の拳が砂にめり込む。

「何が得られる?」

声は近づく…まるで心臓への囁きのように:

「今日からお前は、被害者じゃない。

お前自身が嵐になるのだ。

そして世界は…ただ、お前の行く手を阻むものに過ぎなくなる。」


アズロンは長く沈黙した。

そして囁く:

「…いいだろう。」


その瞬間――


何かが彼の胸の内で鼓動を始めた。

暗く、怒れるエネルギーが、炎のように彼の血管を流れ始める。

彼の目が突然、見開かれる。

体が震える…そしてゆっくりと立ち上がる。まるで別の人間が新たに生まれたかのように。


声が戻り、満足感に満ちて:

「そうだ…それでいい。

さあ行け。

誰も容赦するな。

大人も子供も…皆、お前が踏み台にするだけのものだ。」


アズロンは砂漠の只中に立つ。

風が彼の周りを渦巻く。


そして彼は笑い始める。

高く、鋭く、何か恐ろしいものを含んだ笑い声。

「そうだ…これだ…!」

彼は空に向かって顔を上げる。

「今こそ…世界に思い知らせてやる、俺が誰かを!」


その瞬間――


遠く離れた岩山の上で…

イーゼンが突然、歩みを止める。

彼は顔を上げ、遠い地平線を見つめる。まるで世界の何かが変わったことを感じ取ったかのように。


彼は囁く:

「ついに…目覚めたか。」


一陣の冷たい風が吹き抜ける。


そして、見えない場所で…

アズロンの魂の奥深くに、かすかな微笑みが浮かぶ。


悪が生まれたからではない。

人間は…自ら落ちる道を選ぶ時、それを押す悪魔など必要としないからだ。


第119章 終わり

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