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バル  作者: 隣の猫
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アルスハイル



翌朝。


アルセリアは静かな朝を迎えていた。


街では兵士たちが壊れた城壁を修復し、人々も少しずつ日常を取り戻し始めている。


それでも、誰もが昨夜の黒い霧を忘れてはいなかった。


ベスは城壁の上から街を見下ろす。


白銀の剣に手を添え、小さく息を吐いた。


「守れた……。」


その言葉には安堵と、まだ足りないという悔しさが滲んでいた。




「もう出発する顔だな。」


ガルドが隣へ立つ。


ベスは苦笑する。


「分かりますか。」


「長い付き合いだからな。」


ガルドは街へ視線を向けた。


「お前はここで止まる奴じゃない。」


「第一の封印が解けた以上、次を探すしかない。」


ベスは静かに頷いた。


「ああ。」


「真実を知るためにも。」




大聖堂ではルキウスが一枚の古い地図を広げて待っていた。


その地図には、神代の文字で四つの円が描かれている。


しかし、はっきりと読めるのは一つだけだった。


「継承の聖域。」


そこだけが淡く光を放っている。


「封印が解かれた場所だけが、こうして地図へ記されます。」


ルキウスは指を滑らせる。


すると、二つ目の円がぼんやりと浮かび上がった。


「これは……。」


アイラが目を見開く。


「共鳴です。」


「第一の封印が解かれたことで、第二の封印が自ら存在を示し始めました。」


地図に浮かび上がった名。


《忘却の渓谷》


部屋に静かな緊張が走る。




「忘却……か。」


レオンが腕を組む。


「嫌な名前だな。」


ルキウスは苦く笑う。


「神代の記録にも、ほとんど残っていません。」


「だからこそ、封印の地なのでしょう。」


ベスは地図を見つめる。


「そこへ行けば。」


「神代の真実が分かるのか。」


ルキウスは首を横へ振った。


「いいえ。」


「分かるのは、真実の一部です。」


「封印は一つずつ解かなければなりません。」


「急げば、世界は壊れる。」


その言葉に全員が黙り込む。




その時だった。


大聖堂の扉が勢いよく開く。


伝令兵が息を切らして飛び込んでくる。


「ルキウス様!」


「忘却の渓谷周辺で黒翼の目撃情報です!」


「さらに黒い霧も確認されました!」


ガルドは鼻で笑う。


「考えることは同じか。」


レオンは大剣を担ぐ。


「先に着いた方が勝ちってわけだ。」




ベスは白銀の剣を腰へ差した。


青年の言葉が胸によみがえる。


「迷え。」


「苦しめ。」


「それでも歩け。」


ベスは静かに頷いた。


「俺は止まらない。」


「神代の真実も。」


「この世界の未来も。」


「自分の目で確かめる。」


リシアは少しだけ寂しそうに笑いながらも、しっかりと頷いた。


「みんなで帰ってこようね。」


「もちろん。」


灰鷹は旅支度を整える。


アルセリアをあとにし、新たな目的地――


忘却の渓谷。


第一の封印は解かれた。























そして今、第二の封印を巡る戦いが静かに幕を開けようとしていた。

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