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バル  作者: 隣の猫
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スワロキン



白い光へ続く道は、不思議なほど静かだった。


足音だけが、石畳に小さく響く。


誰も口を開かない。


神代の空気そのものが、言葉を慎ませているようだった。


やがて一行は、大きな円形の部屋へ辿り着く。


天井は見えないほど高く、無数の光が星空のように瞬いていた。


部屋の中央には、一つの台座。


その上には、何も置かれていない。


「ここが……。」


ルキウスが息を呑む。


「継承の間。」




「継承の間?」


リシアが辺りを見渡す。


初代記録守の幻影は静かに頷いた。


「ここは、人ではなく”想い”を受け継ぐ場所。」


「神代の終わりに、多くの者が願いを託した。」


「その願いは記録ではなく、未来へ生きる者へ継がれていく。」


ベスは祭壇へ近づく。


そこには古い傷跡が刻まれていた。


まるで、何か大切なものが長い年月そこに置かれていたように。




アイラが床の文字を読み始める。


「……読めます。」


全員が耳を傾ける。


「『継ぐ者よ。』」


少し間を置き、続きを読む。


「『力を求めるなら、ここで引き返せ。』」


さらに文字を追う。


「『守る理由を求める者だけが、この先へ進め。』」


読み終えた瞬間、広間は静まり返った。


レオンが鼻で笑う。


「試されてるってことか。」


ガルドは腕を組み、静かに頷く。


「昔も今も、大事なものは変わらんらしい。」




その時だった。


祭壇が淡く光を放つ。


一筋の光がベスの前へ伸びる。


仲間たちは身構えるが、光はベスだけを包み込んだ。


左腕の灰色の紋様も、かすかに白く輝く。


ベスは反射的に左腕へ意識を向ける。


だが――


鼓動は感じられない。


それでも、胸の奥が少しだけ温かくなった。


初代記録守は静かに微笑む。


「焦る必要はない。」


「時は、まだ満ちていない。」




突然、広間の空気が震えた。


ゴゴゴゴ……。


天井の光が一斉に揺らぐ。


アイラが顔を上げた。


「何……?」


ルキウスの表情が険しくなる。


「聖域が拒絶している……。」


「違う。」


初代記録守が静かに首を横へ振る。


「迎えているのだ。」


その言葉と同時に、台座の奥の壁が左右へ開き始める。


現れたのは、一本の白い橋だった。


橋の先は光に包まれ、その向こうは何も見えない。




「この先にあるのですか。」


ベスが尋ねる。


初代記録守は穏やかに答えた。


「答えではない。」


「答えへ至る最初の扉だ。」


「継承者よ。」


「お前は、自らの意志で進むか。」


ベスは迷わなかった。


「ああ。」


その一言だけを残し、白い橋へ足を踏み出す。


仲間たちも続こうとする。


しかし――


橋が淡く輝き、リシアたちの前に透明な壁が現れた。


「えっ!?」


リシアが手を伸ばく。


見えない壁に静かに弾かれた。


ガルドも押してみるが、びくともしない。


ルキウスは静かに目を閉じる。


「ここから先は……。」


「継承者しか進めない。」




ベスは振り返る。


仲間たちの姿が、光の向こうに霞んで見えた。


レオンは拳を突き上げる。


「行ってこい!」


アイラは優しく微笑む。


「信じてる。」


リシアは胸の前で手を組み、小さく頷いた。


「待っています。」


ガルドは短く笑う。


「一人で背負うな。」


「帰ってこい。」


その言葉に、ベスは静かに頷く。


「必ず。」


再び前を向く。


白い橋の先には、まだ見ぬ神代の真実が待っている。


そして、その真実はきっと、ベス自身の運命を大きく変えることになる。





















誰もまだ、そのことを知らなかった。

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