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バル  作者: 隣の猫
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429/437

428



白い羽が。


空を覆っていた。


アイラは。


弓を構えたまま。


風を読む。


来る。


白い羽が。


一斉に動いた。


アイラの指が。


弦を引く。


「――そこ。」


弦が鳴る。


ヒュッ!!


風が。


矢となって飛んだ。


白い羽を。


一枚。


また一枚。


撃ち落とす。


アイラは。


目を細める。


まだ。


見える。


先兵の動き。


羽が動く前の空気。


翼がわずかに揺れる。


その瞬間。


風が変わる。


だから。


撃てる。


だから。


止められる。


先兵が。


再び翼を広げた。


アイラは。


もう矢を番えていた。


ヒュンッ!!


白い羽が。


また落ちる。


その向こうで。


ガルドが動いた。


灰色の霧を纏った剣を握り。


その横には。


虚無の使徒幹部。


二人が。


同時に。


先兵へ向かっていく。


白い翼が。


大きく開く。


先兵が。


二人を迎え撃つ。


白い刃が。


振り下ろされる。


ガルドの剣が。


それを受ける。


キィンッ!!


同時に。


幹部の黒い霧が。


槍へ変わる。


白い翼へ。


突き出される。


二人の攻撃が。


重なる。


その瞬間。


幹部の動きが。


変わった。


先兵へ向かっていた身体が。


わずかに。


横へ流れる。


黒い霧が。


別の方向へ伸びた。


アイラ。


その視線が。


こちらを捉える。


「……!」


アイラが。


弓を引く。


幹部の霧が。


剣へ変わる。


来る。


ヒュッ!!


風の矢が。


刃を弾いた。


キィンッ!!


次。


槍。


アイラが。


弦を離す。


ヒュンッ!!


槍が。


軌道を逸らされる。


次は。


短剣。


その前に。


風の矢。


キィンッ!!


弾く。


見える。


全部。


幹部の攻撃は。


見えている。


霧が。


鎌へ変わる。


アイラは。


身体をわずかに傾ける。


風の矢を放つ。


鎌が。


弾かれる。


アイラは。


息を整える。


怖くない。


いや。


怖い。


それでも。


見える。


見えている限り。


止められる。


その一方。


ガルドは。


先兵と向き合っていた。


幹部が離れたことに。


構う暇はない。


白い刃が。


迫る。


灰色の霧を纏った剣が。


それを弾く。


キィンッ!!


アイラは。


それを一瞬だけ見た。


そして。


再び。


幹部へ視線を戻す。


黒い霧が。


また形を変える。


アイラは。


弦へ指をかける。


だが。


今度は。


武器が生まれなかった。


幹部の腕が。


そのまま。


前へ出る。


手刀。


「……!」


アイラが。


矢を放つ。


ヒュッ!!


風の矢が。


腕へ向かう。


だが。


届かない。


手刀が。


風の矢を突き抜ける。


その瞬間。


世界が。


ほどけた。


音が。


一つずつ。


遠ざかっていく。


まず。


風の音が消えた。


次に。


金属のぶつかる音が。


水の底へ沈むように。


遅れて。


消えていく。


視界の端で揺れていた光が。


一粒ずつ。


空間から剥がれ落ちるように。


遠のいていく。


空気が。


薄い膜の向こう側へ引き伸ばされる。


アイラの呼吸だけが。


やけに大きく。


やけに遅く。


胸の奥で。


軋むように響いた。


――世界が。


遠い。


そう思った瞬間。


時間は。


完全に壊れた。


音は。


もはや音ではなかった。


ただの振動の残像。


レオンの叫びは。


口の形だけが。


ゆっくりと動く影になっている。


リシアの氷は。


生まれる途中のまま。


空中で凍りついたように見える。


エインの矢は。


弦から離れた瞬間のまま。


空間に浮かんでいる。


ボルグの手は。


届くはずの距離を。


永遠に伸び続けているようだった。


そして。


ガルド。


その動きだけが。


やけに鮮明だった。


先兵と交わる刃の火花が。


一瞬ごとに。


花のように散っては。


消えていく。


その顔が。


見えた。


あの顔。


また。


自分を責める顔。


アイラの胸が。


強く締め付けられた。


嫌だ。


その顔は。


見たくない。


黒い手刀が。


ゆっくりと。


しかし確実に。


距離を詰めてくる。


アイラは。
















動けなかった。

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