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バル  作者: 隣の猫
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427



雪原の中央に、神の先兵が降り立つ。


その瞬間、空気が「落ちた」。


音が一度だけ消え、次の瞬間、風が遅れて吹き返す。


白い翼が広がるたびに、雪面がわずかに沈み、冷気が鋭く肌を刺した。


先兵の視線は、二つに分かれる。


ガルドと、虚無の使徒幹部。


その視線に触れた瞬間、戦場の温度がさらに下がった。


白い羽が舞う。


それはただの羽ではない。

 

空気を裂くたびに「音の遅れ」が生まれ


遅れて金属音のような風切りが響く。


ガルドの正面。


白い剣が、雪煙を引き裂きながら迫る。


剣が通るたびに、雪が一瞬だけ“線”になる。


その線が消えると同時に、遅れて鋭い破裂音が響いた。


ガルドは灰色の霧を剣に纏わせる。


霧は重く、湿った鉛のように空気を沈める。


その一閃で、白い剣が空中で砕け、氷の粉のように散った。


だが次の瞬間、右側から別の剣。


視界の外から来るのではない。


“雪の白さに溶けていた”剣が、突然輪郭を持つ。


ガルドはそれを受ける。


金属音ではない。


霧と刃がぶつかる、鈍い圧縮音。


その瞬間、空気が一段階重く沈んだ。


幹部が動く。


黒い霧が地面から立ち上がる。


それは煙ではない。


“熱を奪う影”のように、周囲の光を吸い込む。


幹部は先兵ではなく、ガルドの背後を狙う。


黒い刃が振り下ろされる瞬間、空気が裂ける音が一拍遅れて響いた。


ガルドは動かない。


むしろ、わずかに“呼吸を合わせる”。


黒刃が背をかすめる瞬間、雪が一筋だけ真横に吹き飛ぶ。


ガルドは振り返らないまま剣を返す。


灰色の一閃。


霧が爆ぜるように広がり、幹部の黒霧を押し返す。


幹部の身体が、雪を削りながら後方へ滑った。


空気が一度、完全に静止する。


その静寂の中で、白い羽が“増える音”がした。


実際の音ではない。


視界の端が、わずかに白く増殖していく感覚。


次の瞬間、羽が一斉に降下する。


それは雨ではない。


“落ちる刃”だった。


羽が空気を切るたび、遅れて空間が震える。


その後方。


アイラは動かない。


雪の上に立つ足元だけが、風に削られて円形に乾いている。


彼女の周囲だけ、風の流れが“読まれている”。


弓が引かれる。


その瞬間、空気が細く鳴った。



乾いた、氷が割れる前の音。


風が止まる。


止まったのではなく、“一度ほどけて再構築される”。


雪原の風が、細い線に分解される。


それが矢になる。


無数の風の矢。


放たれた瞬間、空間が一斉に“軽くなる”。


白い羽と風矢が衝突する。


音はない。


ただ、空中で白が崩れ、雪の粒のように散る。


遅れて、空が一度だけ震えた。


金属音が短く、乾いている。


レオンの大剣が受けるたび


雪が“跳ねる”のではなく“押し潰される”。


同時に、小剣が空気を裂く。


小剣は短い。だがその分、音が鋭い。


キンッ、と一瞬だけ空気が尖る。


その一瞬で、側面の攻撃が逸れる。


リシアはその“逸れた空間”に入る。


二本の剣が交差する瞬間、風が一度だけ逆流する。


敵の身体が後退するのではない。


“立っていられなくなる”。


レオンが受ける。


その瞬間、リシアの足音が消える。


雪を踏んでいない。


ではなく、“雪が音を返さない位置”に移動している。


レオンの小剣が再び動く。


金属音が一拍遅れて響く。


その遅れの中で、敵の軌道がずれる。


リシアの剣がそこへ入る。


音が一度だけ重なる。


そして敵が崩れる。


後方。


ボルグの大楯が受けるたび、雪が“壁のように跳ねる”。


衝撃が地面に落ちるのではなく、横へ逃げる。


エインはその“逃げた瞬間”だけを見ている。


矢は放たれるのではない。


“崩れた空間に落ちる”。


ヒュッ、と短い音。


その後に、静寂。




雪原では、複数の戦闘が完全に分離しながらも


同じ空気の中で同時に進行していた。


白と黒と灰。


それぞれの色が、音と温度を変えながら















戦場そのものを削っていく。

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