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白い雪原に。
血が落ちた。
一滴。
二滴。
その中心に立つ虚無の使徒幹部は、肩の傷へ指を当てる。
指先に触れた血が、黒い霧へと溶けた。
霧は瞬く間に広がり、戦場全体へと薄く覆いかぶさる。
「来るぞ!」
ガルドの声が響く。
同時に、霧が形を持った。
四方へ散る黒い刃。
戦場の中心から、全方向へ放たれる。
レオンが正面で踏み込み、大剣で一閃。
ガンッ!!
黒い刃を弾く。
だが刃は消えず、空中で形を変える。
槍。
レオンは即座に横へ跳び、胸元をかすめさせる。
次の瞬間、槍はさらに変質し短剣となって懐へ滑り込む。
レオンは腰の小剣を抜き、即応。
キィンッ!!
短剣を弾き返す。
「そう来るか!」
そのまま大剣を振り抜き、幹部を後退させる。
「レオン!」
アイラが位置をずらしながら射線を確保。
ヒュッ!!
矢が幹部へ飛ぶ。
幹部は霧を盾に変えて受ける。
その直後、アイラは即座に次射。
「今!」
レオンが踏み込み、再び圧をかける。
幹部は霧を鎌へ変形。
ガァン!!
レオンの大剣と鎌が正面衝突。
その瞬間、アイラの矢が隙間を抜ける。
幹部はわずかに首を逸らし回避。
矢は外套を掠めた。
ボルグがレオンの側面へ入り、大楯を構える。
「下がれ!」
鎌の一撃を受け止める。
ドンッ!!
衝撃で一歩下がるが、体勢は崩さない。
そのまま盾を押し返し、間合いを作る。
エインはその瞬間を逃さず射撃。
放たれた矢は、変形途中の霧の核を狙う。
幹部は即座に霧を散らし回避。
その“霧の流れ”の中心へ、ガルドが踏み込む。
灰色の剣が一直線に幹部へ届く。
キィンッ!!
正面衝突。
火花が散る。
ガルドは一歩踏み込み、圧をかける。
幹部も一歩押し返す。
互角の押し合い。
そこへリシアが側面から介入。
「ガルド!」
二本の剣が同時に走る。
幹部は霧を二本の短剣へ変え迎撃。
キィンッ! キィンッ!
三者の間で刃が交錯する。
一瞬の後退。
再び均衡。
その隙間を、アイラの矢が抜ける。
幹部は最小動作で回避。
エインが即座に追撃矢を放つ。
幹部は霧を広げ、逆に黒い矢を生成して反撃。
一本、二本、四本。
「散れ!」
ガルドの指示で全員が分散回避。
雪原に黒い衝撃が連続して炸裂する。
ドドドドッ!!
アイラはレオンの背後へ回り、射線を共有。
レオンは前面を維持。
アイラはその肩越しに射撃。
ヒュッ!!
一瞬、幹部の動きが止まる。
その瞬間を逃さず、ガルドとリシアが同時に左右から踏み込む。
幹部は霧を鎌へ変形し迎撃。
キィンッ!!
ガルドが受け、リシアが弾く。
三者が再び拮抗。
その直後。
――ザッ。
雪を踏む音。
戦場外周から。
ガルドの視線が動く。
――ザッ。
別方向。
エインが弓を構えたまま周囲を確認。
「……増えたな。」
アイラも気配を追う。
視界には何もない。
だが“気配だけ”が増えていく。
一人。
二人。
三人。
「囲まれてる。」
リシアが呟く。
雪原の外縁に黒い影が現れる。
黒い外套。
蛇が尾を噛む紋章。
一人、また一人と無音で増えていく。
ガルドが剣を握り直す。
「……身喰らう蛇。」
先頭の男がゆっくりと顔を上げる。
視線はまず灰鷹へ。
次に虚無の使徒幹部へ。
「……虚無の使徒もいるか。」
幹部の霧がわずかに揺れる。
灰鷹。
虚無の使徒幹部。
身喰らう蛇。
三者が完全に同一戦場で対峙する。
誰も味方ではない。
誰も退かない。
雪原に殺気が重なり、圧が増していく。
その上空。
雲の裂け目から。
白い羽が一枚、静かに舞い落ちた。




