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バル  作者: 隣の猫
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ベスが。


雪道の向こうへ進んでいく。


リシアは。


その背中を見送っていた。


やがて。


隣にいる白狐へ。


顔を向ける。


「……どうして。」


白狐は。


何も答えない。


「どうして、ベスだけなんですか?」


白狐は。


静かにリシアを見る。


そして。


ゆっくりと。


顔を寄せてきた。


リシアは。


そっと手を伸ばす。


白い毛に触れる。


その瞬間。


頭の中に。


一つの記憶が流れ込んだ。


雪原。


黒い外套の男。


二本の黒刀。


カゲロウ。


「フェンリルの継承者は。」


「俺が殺す。」


「お前は他の仲間を抑えるだけでいい。」


「それか。」


「俺たちが全て排除してもいい。」


白狐の中に残っていた言葉。


それは。


命令ではなく。


選択だった。


そして。


白狐の意思が重なる。


(この子は、間違えない)


(信じてる。ちゃんと分かってる)


(だから大丈夫)


(ベスなら、きっと乗り越える)


(私たちも、もう追いつける)


リシアは。


ゆっくりと目を開けた。


不安は。


もうそこにはない。


ただ。


確かなものだけが残る。


リシアは。


白狐を見て。


静かに頷いた。


「……分かりました。」


そして。


仲間たちへ振り返る。


「行きましょう。」


「みんなでベスを追います。」


白狐は。


静かにその背を見送った。

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